嵐の名残り(軍官の選抜)
ロインたちやフィドーラ殿下と別れた後、ラドと一緒に皇城内の親衛隊の軍営へ向かった。親衛隊の食堂で簡単に昼食を済ませた後、ケントゥリオたちと共に軍官の選抜行う予定だ。ハルトは私が親衛隊に渡す酒を皇城に届けた後、先に帰宅した。本当に彼が羨ましい。こんな大変なことをやらなくていいんだから。
親衛隊の軍営の会議室に入ると、皆がすでに揃っていた。このような会議は通常ラドが司会を務める。私はここ数日でそれに慣れてしまった。しかし、ラドはまず会場を見回してから私に言った。「ルチャノ様、親衛隊の軍官や兵士は勤務中に金属製の全身鎧を着用する必要があります。」
「ええ、本当にその通りですね。」私は周囲を見渡し、出席しているケントゥリオたちが全員ラメラーアーマーを着ているのを見た。兜だけはテーブルの上に置かれている。食堂でも、多くの人が鎧を着ていないのが見受けられた。イオナッツは私が帝都に来たときにそのことを教えてくれたのを思い出した。学生侍衛は外出時に鎧を着るだけでいいが、専任侍衛は勤務中に鎧を着用する必要がある。
「私の鎧は以前の戦闘で損傷してしまって、商会によると修理は春以降になるそうです。」私は言った。
「以前にも聞いていましたが、その鎧は本当にルチャノ様が設計したものなんですね。」フィルミンが突然言った。なぜきゅうに敬語になった?先ほどはそんな態度だからおかしいではないか。
「そうです。でも、現在その鎧を製造するハンマーが壊れていて、春以降にしか製造を再開できないという計画です。」私は言った。
「それは本当に不運ですね。またアウレルのようなことが起きたら、前回のように活躍することはできないでしょうね。」オタルが横で皮肉っぽく言った。
「ルチャノ様の武芸は元々素晴らしいものです。あの日もフィルミンを打ち負かしたではないですか?」ベリサリオが両手を広げて言った。
「それはフィルミンが負傷していたからだ。私が相手だったら結果は違っただろう。」オタルは少し怒り気味に言った。
「もういいよ。オタルの言う通りだ。私の武芸はここにいる皆さんには到底及ばない。力不足だと私も最初から知っている。反乱の日は本当にあの鎧のおかげだった。」私は正直に言った。
「その鎧はどこで注文したんですか?」オタルが言った。
「ニキタス商会で作りました。」
「そうだったんですね。親衛隊の鎧の一部もニキタス商会から注文したものです。そのような鎧は一式いくらぐらいするんですか?」ジョルジが尋ねた。
「それは私にはわかりません。私の鎧は試作品で、ニキタス商会が特許の許可を受けるためのお礼として贈ってくれたものです。この鎧を作るのには時間がかかり、ニキタス商会の鍛冶職人たちが集まって一か月近くかかったと聞いています。」私は言った。
「それならかなり高価でしょうね。」ジョルジは口を押さえて深く考え込んだ。
「なぜ新しい鎧を設計したんですか?ラメラーアーマーの防護力はすでに十分だと思いますが?」フィルミンが尋ねた。
「恥ずかしい話ですが、ラメラーアーマーは私には重すぎる。以前の鎧は胴体部分だけがラメラーアーマーで、四肢は鎖帷子だ。その結果、右足に矢が刺さり感染し、北方で死にかけたことがある。だから軽くて丈夫な鎧を設計したんだ。」私は言った。
「ルチャノ様、先ほど言いかけましたが、私たちのラメラーアーマーを着ていただくこともできます。しかし確かに、親衛隊の一員として、勤務中に鎧を着るという規則があります。」ラドも考え込んだ。
「それなら鎖帷子を着ます。規則では鎧を着用する必要があるとは言っていますが、どんな鎧かは指定されていません。春になれば私の鎧も修理が終わりますし、その時にはイオナッツ様の傷も治っているでしょう。そして私は親衛隊から退くことになる。」私は言った。本来、私が親衛隊に入隊したのは、イオナッツが負傷して職務を果たせなかったからで、彼が回復すれば私も退くのも当然のことだ。
「ルチャノ様だけがラメラーアーマーを着ないとなると、一部の兵士が見下ろすかもしれない。そして外部の人々にとっても不自然です。」ラドは眉をひそめて言った。うーん、反論するのが難しい。
「それなら以前の鎧を着ますか。私が負傷した原因となったものなので、着たくはないんですが。」私は言った。
「ルチャノ様、私たちが訓練してあげるよ。」フィルミンが突然何かを思いついたように大声で言った。彼は前回の剣術試合での敗北を訓練で晴らそうとしているのではないか。
「え?それは必要ないと思います。学院でも軍事学の授業は受けていませんし、家の執事がずっと訓練に参加するよう促しています。」だめだめ、親衛隊の訓練に参加すれば、一発で私の秘密をバレでしまう。
「それならまずは私たちの訓練を見学してください。」フィルミンが言った。
「私も賛成です。親衛隊の訓練を監督するのもルチャノ様の役割です。」ラドが言った。
「わかりました。それではラド、時間を予約してください。」私は言った。
「承知しました。他に問題がなければ、軍官昇進の面接を始めましょう。」ラドは目の前のノートを開きながら言った。私は頷き、水を一口飲んだ。
今日は軍官昇進の第一回選抜で、第二回選抜に進む候補者を選抜するためのものだ。手続きとしては、候補者がまず自己紹介を行い、次に私やケントゥリオたちの質問に答える。その後、候補者が退場し、彼らの所属するケントゥリオがそれぞれ候補者の昇進に対する意見を述べる。最後に私が第二回面接に進むかどうかを決定する。親衛隊内では皆が互いに顔見知りで、私はここにいること自体が浮いている感じがした。
今回はケントゥリオ3名以下、十数名の参謀、什長と副官の空席がある。候補者は30人以上だ。ラドによれば、親衛隊の皆は他の軍隊から選抜される。そして軍の階級が何であれ、親衛隊に入隊するとまず兵士から始める。そして什長副官、什長、ケントゥリオ副官へと昇進していく。各什長には一名の副官が付き、各ケントゥリオには二名の副官が付く。つまり親衛隊全体の約三分の一が軍官だ。私のように入隊した時点で副隊長になるのは、皇帝陛下が即位以来、唯一の例外である。だからもし皇帝陛下やイオナッツが私を支持してくれなければ、私はこの仕事を続けることができなかっただろう。うーん、それでも続けられなくてもいいかもしれない。実際、私はこの仕事をやりたくないんだ。
手続き上は私が第二回に進む人選を最終的に決定することになっているが、実際にはただ座っているだけのような感じだった。親衛隊に入隊できる兵士はみな多くの功績を立てている。そして武芸にも優れている。貴族優先のやり方のために昇進できなかっただけだ。親衛隊の最年少の兵士でさえ私より10歳年上で、戦闘や皇帝の護衛の経験も私には到底及ばない。ケントゥリオたちは候補者のことをよく知っているので、具体的な質問をすることはほとんどなく、議論だけを行った。私は彼らを評価する資格が全くないように感じながら、なぜ昇進したいのか、陛下についてどう思うかといった質問しかできなかった。そして結果に署名するだけだ。そして全ての合格者が決めった後、書類をイオナッツに持っていき、最終確認を行うことになる。ケントゥリオたちは候補者のことをよく知っているので、私がこの場にいなくても合格者を選ぶことができるだろう。やっぱりこの役職は番犬でもできるものだ。ワンワン。
「これで終わりです。お疲れ様でした、ルチャノ様。お送りしましょうか。」私が最後の書類に署名したのを見て、ラドが言った。
「ラド、まだ夕食をとっていないですよ。商会が試作品の酒を数本送ってくれました。せっかくの機会なので、皆で飲みましょう。」私は無力に椅子の背にもたれながら言った。やっと終わった。夜初の鐘がすでに二度も鳴っている。番犬だって食事が必要だ。皇帝陛下、この仕事は本当に動物虐待だ!
「おお、あなたがそんな気分だとは思いませんでした。」ベリサリオも驚いて言った。
「私の従者が皇城を出入りできないので、酒は東門の待合室に置いてあります。誰か手伝って持ってきてください。親衛隊の他の人たちにも半分残しておいてください。」本来は酒を親衛隊に渡してみんなで分けようと思っていたが、フィドーラ殿下が昼間に一緒に酒を飲んでみんなと仲良くなるがいいと教えてくれた。せっかくの機会だから試してみよう。それに皆の蒸留酒についての意見を直接聞ける。
「私が行く!」フィルミンが一番乗りで、まだ私の返事を待たずに部屋を飛び出していったのには驚いた。
「それではオタルとジョルジ、食堂から料理を持ってきてください。ジェナアロとベリサリオ、テーブルを片付けるのを手伝ってください。」ラドは立ち上がって言った。私も立ち上がり、片付けを手伝い、ジョルジにビールを二杯持ってきてもらうように頼んだ。蒸留酒は私には強すぎるので、ビールを飲むことにした。
すぐにみんな戻ってきた。さすが親衛隊、その速さには文句のつけようがない。フィルミンは喜々として酒瓶を開け、その香りを嗅ぐだけで陶酔した表情を浮かべていた。オタルとジョルジは籠からパン、ハムのスライス、そしてスープを並べた。私は皆に皿と酒杯を用意した。皆が座ったところで宴会が始まった。




