表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/225

帝の侍衛(入学試験)

踊りが終わった後、私は皇帝陛下にお別れの挨拶をして、謁見の間を出た。父親は私と皇帝陛下が何を話したのか聞かなかったが、彼はすべてを知っているようだった。「イオナッツ」という侍衛は実は侍衛長で、カピサ侯爵でもあった。とても驚いた。イオナッツは皇帝陛下の侍衛と親衛隊を管理している。明日は学院の特別試験を受けるので、初めての当直はその翌日に予定された。


イオナッツによると、皇帝陛下の侍衛は三交代で、夜明けの鐘から正午の鐘までの早番、正午の鐘から夜はじめの鐘までの遅番、夜はじめの鐘から翌朝の夜明けの鐘までの夜番に分かれている。侍衛は専任侍衛と、まだ学院に通っている貴族子弟の学生侍衛に分かれている。学生侍衛は学院を卒業すると侍衛の地位を失う。専任侍衛が別のルートで選抜されるらしい。学生侍衛は三日に一回当番が回ってくるが、専任侍衛は三日に二回か三回当番がある。イオナッツは特に、「明日の特別試験に落ちたら、来年の9月の入学までお前は専任侍衛になる。合格すれば学生侍衛になる。」と説明してくれた。


「陛下の侍衛は精鋭揃いだ。陛下に絶対の忠誠を誓い、非常時には命を懸けて皇帝を守る覚悟が必要だ。正直なところ、俺はお前が適任だとは思わん。でも陛下はお前を侍衛にしたがっている。だから、しっかりやろう。俺は陛下の判断を信じる。侍衛の給料は当番ごとに支払われる。1回の当番で銀リネ十枚。待機室には屋台から食事が運ばれる。また服装、剣と鎧は自前で用意しろ。」とイオナッツは言った。陛下から信頼されているのは驚きだ。リネについては、帝国の通貨だということしか知らないが、これまであまり使ったことがない。前世の記憶のおかげで、商売に関しては完全に無知ではないのが救いだ。商業については後でソティリオスに聞いてみよう。


「わかりました、イオナッツ様。午前中に皇太子殿下の侍衛が礼服を着ているのを見ました。陛下の侍衛だけが鎧を着る必要があるのですか?」と私は尋ねた。


「城内では専任侍衛だけが鎧を着用できる。でも城外の勤務では全ての侍衛が鎧を着用する必要がある。だから、良い鎧を用意しろ。陛下が直面する危険は、辺境の伯爵領とは比べ物にならない。」とイオナッツは言った。私は頷いた。イオナッツの鎧は全身のラメラーアーマーで、ハルトたちの鎧と同じだった。しかし、私にとっては重すぎて全く着こなせない。


「しっかりやれよ。ダミアノスがお前の鎧を準備する金がないわけがない。もし自分で貯金して買いたいなら、俺の鎧は金リネ一枚だ。」とイオナッツは言った。金リネは銀リネよりも高価な通貨だろう。とりあえず覚えておこう。


待機室で父親の謁見が終わるのを本を読みながら待っていた。待機室の窓からは、皇城の南の空で優雅に飛ぶペーガソスやグリフォンが見えた。グリフォン軍団のペーガソスライダーやグリフォン騎士たちが訓練しているのだろう。パナティスたちは再び現れず、私は静かな午前の読書時間を過ごした。久しぶりに激しい踊りのせいで、脚が少し痛くなった。やはりリハビリをちゃんとしなければならない。


フィドーラ殿下とは翌日の午前の鐘に学院の特別試験を受ける約束をした。彼女は私より背が高い。ヒールを履いていなくても私より高い。少し自信を失った。


父親は午前の鐘に謁見を終え、私を家に連れ帰った。皆が私が皇帝の侍衛になったことを祝ってくれたが、誰も私が単独で謁見した時に皇帝と何を話したかを聞いてこなかった。アデリナだけが洗濯をしている時に靴下が汚れていると文句を言った。アデリナ、ごめんなさい。あの時は舞踏靴がなかったんだ。


翌朝早く、アデリナとハルトが私を学院に連れて行った。学院は15歳になった年に入学でき、卒業には最低でも5年かかる。学院は教会によって運営されているが、予算は皇帝や地元の領主が負担している。これも神々への奉納の一環と見られる。そのため、領地貴族の子供たちは地元の学院に試験なしで入学できる。平民や名誉貴族の出身者は、試験に合格しなければ入学できない。


アドリア伯爵領にも地元の教会が運営する学院があり、帝都の学院は教会本部によって運営されている。学生侍衛は試験なしで帝都の学院に入学でき、皇帝から奨学金が支給される。ここには全国から最良の神学と文学の教師が集まっており、多くの高級文官や軍官が講義に来ることもある。ここを卒業した者は、政府、軍隊、商会と教会に簡単に就職できるので、入試も非常に厳しい。通常、学生は秋分の日に入学し、20歳以上の者は受験できない。しかし、もし特別入試に合格すれば、誰でも学院に入学できる。


教会を信仰する地域では、学院の制度はほぼ同じで、かつてのリノス王国も例外ではない。前世の記憶の影響で、私はリノス王国では天才とされていた。正直なところ、私は父上と母上に勉強で心配をかけたことはない。いつも馬に乗るのが好きで、武芸の訓練ばかりしていたバシレイオス兄さんとは違うんだ。


学院に入る前、貴族や裕福な平民の子供たちは学校に通ったり、家庭教師を雇ったりする。リノス王国では、私の先生は教会の聖職者や文官たちだった。当時、彼らは私を教えることを誇りにしていた。アドリア領に行ってからは、ミハイルが私の教育を担当した。彼は剣術と軍事学を教え、領地の主教が神学を教えた。私は領地の軍隊と共に馬術、弓術と槍術の訓練を受けた。文学については、ミハイルによれば、私は学院入試の水準に達しており、あとは読み書きを練習するだけだという。父親はしばしば帝都から学者を領地に招いて学校の教師を務めさせ、私の個人教師にもした。年上だが、ハルトとアデリナは私と一緒に授業を受ける。ほかの従者もそうなのか分からないが、私の従者は本当に多才だ。


帝都の学院は皇城の門の隣の教会本部にある。教会本部は複数の街区にまたがっており、建物はすべて白い大理石で建てられている。リノス王国の都であるヤスモス城を思い出した。この区域には多くの礼拝堂と鐘楼がある。遷都後、歴代皇帝は教会のために礼拝堂や塔を建て、自分自身の神々への奉納とした。現在もいくつかの建物が工事中で、木製の足場が組まれている。その他には庭園、墓地、聖職者の居住街がある。ここでは庭園の椅子さえも信徒の寄付によるものだという。一歩足を踏み入れると、神々への畏敬の念を感じる。


帝都について、一番詳しい場所は教会本部だ。年末年始の行事がここで行われるからだ。アドリア領に行ってから私は毎年参加している。貴族は教会本部に自由に出入りできるが、平民は年に四回の祭りの時だけ礼拝堂に入ることができる。私は従者たちと共に門番の指示に従って学院に到着した。学院は教会の内部にあり、主な建物は環状の建物だ。ここは学生が授業を受ける場所で、フィドーラ殿下との待ち合わせ場所はこの建物の中央の庭園だ。


今日はフィドーラ殿下に会う日だが、軍事学の試験で体を動かす可能性がある。そこで私は少しフォーマルな青い普段着を着て、剣を身に着けた。少し待つと、フィドーラ殿下が外からやって来た。今日は深緑色の髪を後ろで束ねていて、青い綿の長袍を着ていた。普通の学院生のように見えて、まったく帝国の公女殿下には見えなかった。彼女の後ろには一人の若者がいた。鎧を着ていなかったが、剣を持ち、侍衛の服装をしていた。ハルトより背が低かったが、アデリナよりは高かった。


「もうこんなに早く来ましたの?約束の時間までまだ半刻もあるのに。」とフィドーラ殿下は私を見ると言った。


「フィドーラ殿下、おはようございます。私が女性を待たせてはいけないと父上に教わっています。」と私は言った。


「思ったより礼儀正しいですわね。さあ、参りましょう。」とフィドーラ殿下は振り返り、一階の部屋に向かった。私も後ろについて行った。


「ここは生徒会の活動室ですって、今日は午前中に生徒会の活動はありませんわ。特別入試はわたくしだけが君を連れて行くことになるので、侍衛のみんなはここで待っていてくだされますの。ユードロス、ここで彼らと一緒にいてくださいね。」とフィドーラ殿下は言った。この部屋は会議室のように装飾されていて、中央に大きな長テーブルがあり、周りにはたくさんの木箱が散らばっていた。


「承知しました、フィドーラ殿下。ルチャノ、もしお前がフィドーラ殿下に無礼なことをしたら、たとえパイコ領まで追いかけても許さんぞ。」とユードロスという侍衛が私に厳しく言った。


「ご安心ください、ユードロスさん。私は陛下の信頼を裏切るつもりはありません。」と私は言った。この侍衛、本当に怖い!


「特別入試を受けたことがないだろうから、説明してあげますわ。座りなさい。」とフィドーラ殿下は長テーブルの一方に座り、私にももう一方に座るように示したので、私も座った。


「特別入試は才能を持つ人のために行われますの。学院は神々のために人材を育成する使命を負ってから、才能ある者が埋もれるのはいかないですもの。だからこそ特別入試の制度が創設して、通常入試では入学できない人々が教育を受けられます。しかし、誰もが特別入試を受けられるわけではありませんわ。まず大人物の推薦状が必要で、その後学院長の同意も必要ですわ。君の推薦人が誰だか知っているのですか?」フィドーラ殿下が尋ねた。


「レオンティオ様ですか?」と私は尋ねた。


「違う。父上ですわ。まったく、父上は君の何を気に入ったの?君が特別入試に合格するなんてあり得ないではないですか。父上の貴重な時間を無駄にしないてくださらない?」とフィドーラ殿下は言った。


「今、フィドーラ殿下の貴重な時間を無駄にしてしまいました。」とユードロスが言った。


「陛下のお心遣いに感謝いたします。正直なところ、私は昨日、もし合格しなければ、まず一年間皇帝の専任侍衛を務めようと教えました。」と私は言った。


「陛下の専任侍衛を務めることは光栄なことだ。試験に落ちたときの逃げ道のように言うな。」とユードロスは怒りながら言った。私は丁寧に座り直し、ユードロスに頭を下げて謝った。本当に申し訳ありません。


「ユードロス、まだ話は終わってないですわ。学院の科目は文学、神学、軍事学の三つで、それぞれの科目で別々に合格者が選ばれますの。通常の入試では科目ごとに順位をつけて合格者を選ぶが、特別入試では、試験官に神々に愛された才能があると認められなければなりません。だから今日は文学、神学と軍事学の試験を受ける必要がありますの。どれか一つでも合格すれば、特別入試に合格となりますわ。理解していますか?」フィドーラ殿下が尋ねた。


「理解しました。ご説明いただき、ありがとうございます。殿下」と私は言った。今朝出発前にミハイルも私に「緊張しないで」と言っていた。彼は特別入試がアドリア領地で受けた授業の難易度を超えることはないと言っていた。


「でも、忠告してあげますわ。毎年多くの人が特別入試の推薦状をいろいろな手段で手に入れたのが、学院長が試験の実施を認めても、合格する人は殆どなかったですわ。去年は特別入試に合格者がいなかったし、一昨年もいなかったと聞いていますの。学院の教師たちはほとんどがオーソドックス貴族出身で、君の父親を嫌っている者が多いですわ。それに君のことも。だからあまり期待しないほうがいいと思いますの。」とフィドーラ殿下は腕を組んで言った。


「ぜひ努力します。」と私は言った。


「それなら、幸運を祈りますわ。そろそろ時間です。参りましょう。」とフィドーラ殿下は立ち上がり、扉の方へ向かった。私も急いで立ち上がった。


「若様、健闘を祈ります。」とハルトが言った。


「若様、さっさと試験を終わらせて、早く帰ってきて。」とアデリナも言った。


「ありがとう」と私は彼らに手を振り、フィドーラ殿下について部屋を出た。

最初の試験は文学だ。文学とは、いわゆる文字を媒介にして、他者と思いを交わる学問だ。サヴォニア大陸では、正式な文書はほとんど古典語で書かれているので、古典語学とも言える。前世の言葉で言うと、文学、歴史、演劇、芸術などに相当するだろう。学院の通常の入試では、古典語の文献が読めれば十分だが、特別入試ではどうだろうか。


フィドーラ殿下は私を近くの小さな教室に連れて行った。しばらくすると、文官のような姿をした教師がノートを抱えて入ってきた。彼女が今日の試験官だろう。彼女は私を頭から足までじろじろと見て、古典語で「若者よ、なぜここに来たのか?」と聞いた。


「知恵の神に祈りを捧げ、神々に奉仕する十分な知識を得るためです」と私は古典語で頭を下げて答えた。


「いや、それは普通の生徒に要求されることだ。この試験会場に立っているのなら、私たちと同じ知識を既に得ていなければならない。それが合格の条件だ。試験問題はこれだ。」と試験官は古典語で続け、座ってノートに羽ペンで何かを書き始めた。そして、紙を引き裂いて私に渡した後、砂時計を取り出した。


「書かれている指示に従って詩を作り、砂時計が落ち切る前に朗読せよ」と試験官は古典語で言いながら砂時計をひっくり返した。私は急いで問題を読み始めた。フィドーラ殿下も近づいてきた。


「豊作の季節にあたり、農耕の神を称えるテルツァ・リーマの詩を作ること。」と私は声に出して読んだ。え、古典語でその場で詩を作るの?ソネットならまだしも、テルツァ・リーマの詩なんて今まで一度も作ったことがないよ!今でもこんな詩を作る人がいるのだろうか?私はテルツァ・リーマの本で読んだことがあるだけで、面白いとは思ったが、自分で作ってみたことはなかった。以前暗記した詩を少し改変して使えるだろうか。いや、これはダメかも。


「よし、時間切れだ。不合格。」と試験官は私の手から問題の書かれた紙を引き取り、通用語で言った。私は初めて砂時計が既に底まで来ていることに気づいた。え、こんなに早いの?


「先生、試験の時間はこんなに短くて?」とフィドーラ殿下が尋ねた。


「これは特別入試だ。詩歌会ではない。君はもう不合格だ、行きなさい」と試験官は試験問題の書かれた紙をノートに挟んで去って行った。


「砂時計の砂が半分以上も減っていましたわ!学院の教師たちが君の父親を嫌っているという話は聞いていたが、まさか特別入試の試験中にこんなにひどいことをするとは。」とフィドーラ殿下は私を教室から連れ出しながら憤然とした声で言った。


「ありがとうございます、フィドーラ殿下。私は詩が得意ではなく、もう少し時間をいただいても、試験官が満足する詩を作れるかどうかは分かりません。」と私は言った。


「文学試験の結果は試験官に左右されやすいですわ。特別入試には統一の採点基準がなく、すべては試験官の判断次第ですもの。軍事学と神学は少し客観だと思いますの。次は軍事学ですわ。さあ、行こう!」とフィドーラ殿下は私を学院の近くの訓練場へ連れて行った。フィドーラ殿下が私に同情してくれるなんて思わなかった。学院の試験官たちは本当にやりすぎたのだろう。


軍事学とは、戦い方を研究する学問で、主に個人の武芸と軍隊の指揮能力を含む。ミハイルは私の軍事学の先生だった。アドリア領地では、彼は私に様々な武術を教え、さらに軍隊の訓練、後方支援の手配、行軍や戦闘に関する知識を教えてくれた。しかし、私は演習で領地の軍隊を指揮したことはあるが、実戦経験はパイコ領への遠征のみだ。ラザールの協力があったとしても、結果的には私はあそこで死にかけた。


「まずは弓術だ。十本の矢を射て、八本が的に当たれば合格だ。どうだ、簡単だろう。」と試験官は言った。近衛軍の制服を着てから、現役の軍官だろう。


まずい、父親は勲章の話をするだけでいいと言っていたのに、なぜ弓術の試験があるのだろう!空には多くのペーガソスライダーが訓練しているが、ここで弓を使うのは危険ではないだろうか!


「自分の弓を使用してもよろしいでしょうか?私は自分の弓に慣れています。」と私は尋ねた。私は力が弱く、軍用標準弓を引けないので、普段は特製の弱い弓と軽い矢を使っている。試験に自分の弓と矢を持ち込めるのだろうか?


「ダメだ。戦場ではいつも自分の弓が使えると思うか?軍用標準弓を使うのが武人の基本だ。君は大将軍家で育ったんだろう?こんなことも分からないのか。やはり隠し子にはその程度の理解しかできない。」と試験官は冷たく言った。ああ、確かに反論の余地のない正論だが、最後の一言は本当に失礼すぎます。


「先生、無礼なことを言うなんて、それは学院の教授に相応しくないと思わないのかしら。」フィドーラ殿下が私より先に怒り、試験官に向かって叫んだ。


「フィドーラ殿下。たとえ公女殿下でも、学院を干渉することはできません。」と試験官はフィドーラ殿下に向き直って言った。フィドーラ殿下は怒りを露わにして、顔をそむけて何も言わなかった。

私は弓を手に取り、試してみたが、やはり軍用標準弓だった。次に矢をつがえて弓を引いた。全身の力を使って弓をなんとか引き絞り、矢を的に向けて放った。案の定、弓が完全に引き絞れなかったので、矢は途中で地面に落ちてしまった。ああ、やっぱりこの結果だ。


「申し訳ありません。この弓は私には強すぎます。」と私は言った。


「それは困ったな。不合格だ。」と試験官は冷たく言った。


「軍用標準弓も引けないなんて。君は本当にダミアノスの息子なの?夫がこんな人って、本当に失望しましたわ。」とフィドーラ殿下は次の試験場に向かう途中で私に不満を漏らした。


「フィドーラ殿下。ご期待に添えず申し訳ありません。殿下の理想の伴侶とはどのような人物でしょうか、そこへ努力いたします。」と私は言った。申し訳ありません、フィドーラ殿下。私は本当に父親の息子ではないのです。


「少なくとも私より背が高くて、私を守り、勝利をもたらしてくださる人ですわ。君は背が低くて筋肉もないですもの。もっと食べて体を大きくしてくださらない?」とフィドーラ殿下は言った。私は頭を垂れた。陛下、フィドーラ殿下と良好な関係を築く任務は過酷すぎます。事前に失敗を宣言してもよろしいでしょうか。


「次は神学の試験ですわ。この科目は教会の神官のためのもので、神官以外で神学の特別入試に合格した者を私は見たことがないですもの。父上が推薦状を書いてくれたから、君はアドリア家の後継者で、少なくとも軍事学の試験には合格すると思っていたのに。どうやらわたくしの思い違いでしたわ。」とフィドーラ殿下は続けた。


「本当に申し訳ありません。」と私は頭を下げて謝った。婚約前であっても、フィドーラ殿下の前で失敗するのは非常に辛いことだ。文学と軍事学の試験官は私に対して露骨な敵意を示しており、神学の試験でも同様だろう。幼い頃から読書が好きだったが、試験に合格する自信はない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ