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侍女と王女(領地の危機)

「あなたも一緒の部屋に泊まっていい。このベッドだ。自分で整えて。」ダナエは木製のビールジョッキを持ちながら、城の宿舎にある一室へ私を案内し、空いているベッドを指差して言った。


「本当にありがとうございます、ダナエ姉貴。大部屋で寝る覚悟をしてたんですけど、まさか姉貴の部屋に泊まるなんで。」私は感謝しながら言い、床に藁とシーツを敷いた。それらは先ほどメイド長様から受け取ったものだ。


「ハハハ。私が姉貴なら、あなたを世話するのも当然だよ。ヒメラ伯爵領は貧しいし、城の部屋も多くないの。すまないな、少し我慢してくれ。ヘクトル商会がうちの領地のために色々尽くしてくれたのに、あなたを城で働かせることになってしまった。あの連中も本当に面倒なやつばかりだよ。コスティンと共に来た貴族の兵士もそうだし、全く。」ダナエはジョッキを飲み干しながら愚痴をこぼした。


「とんでもないです。食べものがあれば十分ですし、触られるくらいで減るもんでもないですから。領地に入るときはほぼ飢え死にしかけてましたよ。でも、リスの巣にあったヘーゼルナッツを見つけて助かりました。」私はベッドを整えながら毛布を敷いて、そして言った。毛布もメイド長から受け取ったものだ。今夜の夕食はチーズを加えた黒パンと牛乳。封鎖された領地にしては上出来の食事だった。


「ハハハ、それは大変だったな。ごめん。さあ、もう寝よう。明日は早起きして働かないと。」ダナエはビールを飲み干して軽く口をすすぐと、服を脱いでタオルで体を拭き始めた。私は慌てて近寄り、手伝いを提案した。今日は本当に疲れた。カハとジゼルを寝かしつけた後、ダナエと一緒に宴会場で手伝い、酔っ払いの相手をするのに苦労した。もちろんお尻も何回触れた。気づけばもう夜中の鐘が鳴っている頃だろう。この数日疲労が溜まりすぎて、ただただ横になりたい。


「そんなに気を遣わなくていい。同じ侍女の仲間ではないか。それに今日も随分助けてくれたしな。最初は男に手も足も出なかったのに、後からは冷静に振り払えるようになった。やるな。」ダナエは背を向けながら言った。私はまた顔を赤くした。ルチャノになりきって、相手の貴族兵たちはセクハラ相手を間違えた間抜けだと自分に言い聞かせれば、意外といける!


「やっぱり姉貴ですね。これからもよろしくお願いします。」私は言った。ダナエの体型はフィドーラ殿下と同じくらい完璧だ。宝石みたいだ。肌も綺麗で、私みたいに傷だらけではない。まるで皇城の使用人が銀の皿を拭くように丁寧に、私は彼女を拭いた。


「これ以上何をお願いすることがあるっていうのさ。ヒメラ伯爵領なんて明日にでも消えてしまうかもしれないんだ。この時期にヒメラ領地に来たのは、本当にタイミング悪いんだ。キャラニにいた方がよかったさ。もし城が陥落したら大変だよ。そしたらどうするんだ?私とカハは生き延びられないだろうけど、あなたとジゼルは絶対に生き延びなきゃダメだ。」ダナエはため息をつきながら言った。


うっ、私は不意に再び悪役令嬢としての罪悪感に襲われた。さっきまでは自分が正義の味方だと思っていたのに。マカリオとその家族を赦免する件で保証人になると約束しただけで、ヒメラ伯爵領の子供たちを守ると明確に約束したわけではない。つまり城が陥落する際、もしカハが殺されるなら、それは私の契約違反ではない。このままもっと積極的に行動するべきだろうか?必要ないか?


「そんなことありませんよ。ヒメラ伯爵家は千年続く貴族ですから、消えるなんてありえません。それに、アウレル殿下の努力は失敗しましたが、帝国内にはまだ多くの人があの方とコスティン様を支持しています。今の困難は一時的なものだと思います。そして領地は現在食糧不足でもない。貴族たちが呼応してくれるまで待つだけですよ。」私はダナエを励ますようにわざと良いことだけを言った。


「この部屋中だけの話さ。ヒメラ伯爵領には皇帝陛下に逆らう力なんてない。最初から近衛軍団の主力を引きつけるための反乱だった。アウレル殿下の行動を援護するためのものだ。アルカイオス様だって、最初から今のように戦うつもりなんてなかったし、皇帝直轄領を襲撃したのも本気ではない。だからアウレル殿下の失敗を聞いた後、アルカイオス様は降伏するつもりだったんだ。でもコスティン様が帝都の反乱軍の残党を率いて、ヒメラ領地に入ってきた。ゴンサロ様も反乱のグリフォン軍団を連れて来た。それに、皇帝がアウレルの死の怒りをヒメラ伯爵領にぶつけるってさ。最初に反乱した領地だからだ。最近でも皇帝本人を襲撃するようなこともやっている。だから今アルカイオス様も降伏できないんだ。コスティン様は前線にで、領地内の軍隊の主力を支配してしまった。ヒメラ伯爵領がこんな事態に巻き込まれたのは全部パナティスのせいだ。アウレルの従者になり、コンラッドとも親密だったからな。もしそうでなければ、ヒメラ家がミラッツォ陣営に属していたとしても、アルカイオス様がコスティンを親しいでも、領地ごと反乱に巻き込んだはずはないんだよ。まったく。」ダナエは後ろ髪をほどき、梳子を取って自分の髪を梳きながら言った。


「お詳しいんですね、姉貴。」私は背中を拭き終わると、前面に移った。


「いちよう、私も学院の卒業生だからな。今もアルカイオス様の秘書をしている。領地の重要な会議は私が議事録を取るわよ。それに父はヒメラ伯爵に仕える男爵で、今は男爵領の軍隊を率いてクラシス河の前線にいる。前線の軍隊は交代制だから、定期的に城に戻ってきてこういう話をしてくれるんだ。実際、本当に反乱を起こしたがっていたのはコスティン様くらいだわ。爵位を剥奪されたからな。アウレル殿下を煽ったのも彼だ。他の貴族家は家族の若者を派遣するか物資を提供するくらいしかしていない。今ではその支援も途絶えた。それに皇帝もキャラニ周辺の状況を再び安定させ、議会でヒメラ伯爵を非難する決議を通したって聞いた。だからヒメラ伯爵領の滅亡はもう目の前だよ。正直言って、あなたのことは気に入ってる。この時期に領地に来ただけじゃなく、侍女としても完璧だ。ここに来ていなければ、前途は明るかっただろうに。」ダナエは髪を梳き終わり、こちらを向いて言った。


「アルカイオス様の秘書で、あれほどの高貴なご身分なのに、どうして城の侍女なんてしているんですか?」私はダナエを見つめながら尋ねた。たしかに、普通なら、男爵は伯爵の最高位の家臣だ。


「多分、慣れたからだろうな。小さい頃からパナティスの世話をしてきたけど、今はジゼルやカハの番だ。彼らには母親がいないし、今は兄もいなくなった。伯爵様にもカハたちの家庭教師を任されているから、ただの侍女というわけではないんだ。」ダナエは言った。


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