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第1話 道化の王子。(1)
わたし、杏藤すももは、臆病な人間だ。
いや。もっと具体的に言えば、“恋愛”に臆病な人間だ。
だから、いつも。
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「付き合ってくれないかな」
それはつい1分前。
廊下でたまたますれ違った男子生徒に呼び止められ、突然告げられた愛の告白。
「え、と……その……」
あまりにも急な出来事にわたしはどうすることも出来ず、
慌てて下を向いてしまった。
握られた手が熱くて、恥ずかしくなる。
それでも。
「ご、ごめんなさい!」
思い切ってそう告げると、
手を振りほどいて走り去った。
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そう。
わたしは恋愛に臆病な人間。
つまり、恋愛が怖い。