08. 褐色少女はパンツ履いてない
「いやあ!やめてっ!やめてよ!!やめてってば!」
古代都市アーナの孤児院で悲鳴が響き渡った。
「いいじゃん!おら!」
男の子は女の子の髪を引っ張り回して乱暴していた。
その男の子の名前はピケ。孤児院で最も生意気で口の悪い典型的ないじめっ子、他の子より少し背が小さいが、すぐに手を出すような粗暴な孤児だった。先生達のいない時間を狙い、横暴に振る舞っていた。
「やめて!引っ張らないで!」
「おいお前も来いよ。こいつおもしれぇぞ。」
「いーやーだー!やめてっ!」
ピケは女の子の足を思いっきり踏ん付けた。
「痛いっ!いや…やめて…ホントにもう…やめよぉ。」
ピケは嫌がる女の子を面白がって何度も何度も踏み付けた。話し合いが通じる相手ではないのは明白だった。女の子はその理不尽さと痛みから、ついに泣き出してしまった。
「うわああああん!!」
「へっ、だっせー!泣いてやんの。あのなぁ、いつもムカつく態度してっからこうなるんだよ!」
そう言うとピケは女の子の頭を拳で殴った。
「いっ……うわああん!うわんうわん!」
力任せに暴力されると、力の弱い女の子は泣くことでしか抵抗出来ない。それはいつの時代にも変わらない光景だった。
同じ目に遭いたくないとの思いで、周りの誰もがそれを止められず傍観していた。こんな時は、物分かりが良く周りの空気が読める子ほど何の行動もしない。結局は自分が一番大事なのだ。
そして、変わり者はこんな時でも"変わり者"だった。
——ドタドタドタドタドタ。
「ぶるああああああああ!!!」
ピケは突然乱入して来た人物の飛び蹴りを食らい吹っ飛ばされた。相当助走を付けたらしく、ピケは頭を激しく地面に打ち付けられた。
「がねっとちゃんに何するし!お前、ユルサナイ!」
「るびーちゃん…。」
ルビーは友達のガネットが虐められてるのを我慢出来ず、止めに入るというより、怒り任せな攻撃だった。
「ユルサナイ…!」
ルビーはピケに馬乗りになって、顔をタコ殴りにした。
腕っ節に自信のあったピケだが、それ以上にルビーの力は強かった。
「や、やめろ!やめろよ!誰かっ!誰か助けろよ!」
助ける者はいなかった。
「ぶるあ!ぶるああ!ぶるあ!!うらうらうら!!」
ルビーは構わず殴り続けたが、たまらずピケは両手でめいっぱい押してルビーを引き剥がし、ルビーは尻餅をついた。
「はぁ…はぁ…何だよテメーは。はぁ…はぁ…え?」
ピケはルビーの姿を見て目がテンになった。
ルビーの格好は少し汚れた膝上ほどのワンピースで、両手を地面について、両足を曲げた体制だったが、パンツは履いてなかった。
「お、お前何で…。」
(意味分かんねー何でパンツ履いてないんだ?ま、まま、ま、丸見えじゃないか…。)
——トゥクン。
ルビーは立ち上がって言った。
「お前こそ何だし!謝れ!ガネットちゃんに謝れ!」
ルビーを見上げる倒れたままのピケは、スカートからチラチラ覗く、ルビー股間が気になってそれどころじゃなかった。
「はっうるせーし!」
チラッ
「何なんだよオメーは!」
チラッ
「つか、もういいし。」
チラッ
「がねっとちゃんに!!謝れ!!ああああやあああまあああれええええ!!」
ルビーはその場で地団駄を踏んだ。
ピケはスカートの中を気にしながら答えた。
「分かったよ。もういいよ。」
チラッ
「謝りゃいいんだろ!くそっ!」
チラッ
「がねっとちゃんこっち来て!」
ルビーはガネットを呼び寄せて並んだ。
二人の女の子が自分のことを見下ろし、1人はパンツを履いていない。このシチュエーションは、ピケに淡い興奮を覚えさせた。
「じゃー謝れし!!」
「あ、あぁ…。」
チラッ
「早く!」
「あ、あぁ…。」
チラッ
そうは言うものの、ピケはチラチラが気になってなかなか立ち上がれずにいた。
「いつまで倒れてるし!早く立て!」
「分かったよ。」
ピケはムクッと立ち上がるとガネットに向かって謝った。
「さ、さっきは、ご…ごめん。」
「う、うん。謝ってくれればいいの。」
「お前何だし!ズボンの前が膨らんでるし!お前もしかして、ちんちんがおっきくなってるノカ?」
ピケは顔を赤らめた。
「なっ…は?」
「それにさっきからスカートの中をチラチラ見てばっかで何だし!お前ってもしかしてアレなのか?スケベってやつナノカ?」
クスクスという声があちこちから聞こえてきた。
「う、うるせーよ!ちっちげーし!」
「るびーちゃんがパンツ履かないから興奮しちゃったんだよ…。」
「ちげーって言ってんだろ!お前ら付いてねー癖によ。」
「じゃあ見せてみろし!お前あたしのチラチラ見てたし!男なら見せろし!!」
「はっ、ふざけんなよ!」
バシッ!!
「いたっ!」
ルビーはピケの顔面に一発殴り付けると、そのままズボンとパンツをずり下ろした。
「や、や、やめろっ。」
ピケの理性は未知の敵と遭遇した。
嫌だという気持ち、女の子が自分のちんちんを激しく求めてくるという興奮、それを衆目に晒すという羞恥、もう一度チラチラを見てみたいという好奇心、殴られた顔の痛み、それらがぐちゃぐちゃにキメラされた、モンスターのような感情だった。
そいつと対峙するには、ピケの理性はまだまだレベル不足だった。
「や、やめ、やめて…。」
「おらおらぁ!脱げええ!!」
「やだ、やめてよ…。」
「ちんちんどこじゃああ!!おらああ!!」
「やめてよぉ!もういやぁ…いや…。」
——ピョコンッ!
「あっ…。」
「エ?これがちんちんナノ?思ってたのと違う!!何で上向いてるノ?」
「だ、だ、だ……だめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ピケはこの件以降、すっかりしおらしくなった。
※
ガネットはルビーの手を握りながら言った。
「るびーちゃん、ありがとう。」
「うん!」
「るびーちゃんがいなかったら…。」
「うん!」
「わたしルビーちゃんのこと…見直したよ!本当にありがとう!」
「うん!」
「るびーちゃんは、その、勇気があるね。すごいよ…。」
「うん!」
(違うの、るびーちゃん。普段はちょっとおかしなところもあるけど、私のことを心から大事に想ってくれてる人が誰なのか、わたし分かったの。大好きだよ…るびーちゃん。)
ガネットはルビーの手を握ったまま、キラキラした眼差しを送っていたが、ルビーにはその意味が理解出来なかった。
「???」




