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後編

 会場は未だざわついていた。

 エイルは……良かった、泣いてはいるがまだ居てくれた。


「殿下!お加減はいかがでしょ……」


 俺は駆け寄ってくるモニカを無視しエイルに近づいていく。


「エイルよ……」


「で、殿下……」


「済まない。先ほどは言葉が足りなかった。許してくれ」


「言葉が足りなかったとは……?」


「先ほど、何故俺が君に婚約破棄を言い渡したか、だ。勘違いしないでもらいたい。それは俺の方が君に相応しくないと思ったからだ。君は素晴らしい女性だ。俺にはもったいないほどにな」


 この先に待つのは破滅だ。

 だが彼女の名誉は守れる。


「で、殿下?」


「君がモニカに嫌がらせをしていたというのは真っ赤な嘘だ。それは俺もわかっている。聞いてくれ、俺は……」


 不意には背後から突き刺すような強い気配を感じる。

 これは……まさか殺気?


 カンッ!

 金属の当たる音がして振り向くとモニカとチェシアが対峙していた。

 モニカは真っ黒な短刀を持っておりそれをチェシアが刀で防いでいた。


「チェシア!?」


「うぇっへへへ、正体を現したね!」


「何だ、お前、殿下の護衛か!?私の一撃を受け止めるとは……」


「あら不思議、摩訶不思議、残念だけどボクはね、そこらの奴らとは強さが違うよ?」


 何かを感じ取ったのかモニカが距離を取る。


「君が国家転覆を狙う組織の工作員って事はバレてるからね。本物のモニカちゃんと家族を亡き者にしてすり替わっている事も全部わかっているよ?」


 周囲がざわめく。

 え、こいつそもそもモニカじゃなかったの?

 ていうかテロリスト!? 

 俺そんな奴に弱み握られていたのかよ!?


「ぐっ……」


「団長――っ、こいつ斬ってもいいよね?」


「構わんぞ。そいつの仲間は既に確保してある。ああ、その短剣は猛毒が塗ってある代物だから気をつけろよ」


 2階から団長が返事をした。

 こいつの仲間?何が起こっている?


「チッ、こうなれば『アラーニェの短剣』でレオンだけでも!」


 瞬間、空中を手が舞った。

 短剣を握りしめたモニカのものである。


「なっ、あたしの……あたしの手が!!」


 チェシアが一気に距離を詰めモニカの首筋に刀を当てる


「どう?ボクって強いでしょ?」


「まだよ……まだ終われるかぁぁぁ!!!」


 叫び声をあげると同時にモニカの上半身が膨張し破裂。

 へそから上が蜘蛛の怪物へと変貌した。


「何じゃありゃぁ!?」


 思わず声が出た。

 流石は異世界。とんでもない奴がいるものだ。


 モニカは鋭い爪をチェシアに突き立てようとするが彼女は刀でそれを受け止め弾く。

 するとモニカの口から蜘蛛の巣が吐き出されチェシアを絡め取ってしまった。


「うぇ!?」


「逃れようとすれば逃れようとするほど絡まる蜘蛛の糸さ。あたしをコケにしたこと、後悔しな!!」


「あー、これ気持ち悪いなぁ…………はぁっ!!」


 チェシアが気合を入れると電流の様なものが奔って糸が焼き切れた。

 え、何あれ?


「シェイキング、ビィィィム!!!」


 チェシアが空いている方の手に光る球体を構成すると床に叩きつける。

 球体は床を抉りながら怪物と化したモニカに直撃


「何だって!?」


 驚き後ずさりをするモニカ。

 いや、俺も驚いている。

 今、『ビーム』って単語出たよな?


「魔人モニカ!レオン王子を脅迫しエイル様との婚約を壊そうとした所業、許せん!覚悟!!」


 チェシアが刀身を撫でると光を放ち始める。

 え、何あれ?異世界人ってあんな事出来たっけ?


「ぶっちぎるよ!!」


 チェシアはモニカの懐に飛び込んでいくと爪を叩き斬り顔面に刀を突き刺す。


「がぁぁぁぁぁ、バカな!醜い姿になりまでしたのにこんなぁぁぁぁ!?」


 絶叫を上げながらモニカが膝から崩れ落ち黒い靄となり消滅していった。

 どうやら戦いは終わったようだ。


「レオン様……」


 唖然としている俺にエイルが声をかける。


「エイル………その、俺は……」


「レオン様は私を守る為に……あの女から私を離そうと私に婚約破棄を言い渡したのですね」


「え?」


 エイルの目は潤んでいた。

 周囲からは「そうだったのか」「流石は第2王子」など賞賛と尊敬のまなざしが向けられている。


「殿下、賊は倒しました。もう演技をする必要は無いですよ」


 ニカッとチェシアが白い歯を見せて笑った。


「えっと……」


 これは、つまりそういう事なんだよな。


「エイル、先ほどは済まなかった……一度は婚約破棄を言い渡してしまったが、改めて俺と婚約をしてくれないか?」


「はい。喜んで!!」


 会場が歓声で沸き上がった。

 こうしてアラドヴァ・レオンに転生した俺は何とか自分が「ざまぁ」になる運命を回避することが出来たのだった。



国境を超える馬車の中、ドードーが率いるルイス猟団の面々がくつろいでいた。

その中にはチェシアの姿もあった。


「レオン殿下も無事婚約をやり直せたし、『あの連中』も討ち取れたことが出来た。上手くいったな」


「そうだね、でも今回討ち取ったのは連中の一部でしかないから油断は出来ないよ」


「やれやれだぜ。ウチは普通の護衛猟団だってのに……お前が入ってから変な事ばかりに巻き込まれる。やっぱ返却してやるかなぁ」


「えー、『今回』は何も壊さなかったよ?」


「木の扉とホールの床を壊しただろ!というか壊さないのが普通なんだよ!全く、お前の親父さんにはデカい借りがあるからなぁ……あんま強く言えないんだよなぁ」


「あはは、ウチに関わった段階で諦めないとね。さぁさぁ、祝杯上げようよ」

 

「畜生がぁぁ!ていうかお親父さんから絶対の飲ますなって言われてんだよ!てめぇ酒癖超悪いだろ!!」


「うえぇぇぇ、酷いよぉ。お母さんや姉さん達に団長がいじめるって言いつけてやるぅ」


「そっちはそっちで洒落にならんからやめろぉぉ!!」


 チェシアとは猟団内でのコードネーム。

 その本名はレム・アリソン。アリスと呼ばれている。

 異世界出身のチート男を父に持つこれまたチートのソードマスターであった。

 


えーと、最終的にバトルになるとビーム撃ちますね私の作品。

まあ、最後に示していますがこの子、破界の聖拳シリーズのアリスですからね……

想定的にはシリーズ2作目「異世界ハーフ家出」の更に後の時代になります。


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