アセルクレール(2)
辺りが暗くなっていた。いつもならとっくにロゼおばさまのいる宿に帰っている時間だ。
「見つからなかったけど、まあ気にするほどでもないかな。わかることの方が少ないし!」
自虐めいた独り言をつぶやきながら町に帰った。
「こんにちはおじさま。頼まれていたものをお持ちしました」
「あぁ、サラ。ありがとうなぁ、そこに置いておいておくれ。
今日はちょっと遅かったな、魔獣に襲われたりしなかったかい?」
「いいえ、大丈夫よ。みんな怖がっているけれど1度も見たことないわ。
…あっでもその代わり見たことのない子がいたの。すごい綺麗な髪の毛と真っ赤な人をしている子だったわ。でもいつの間にかいなくなっててあまり話しができなかったの。」
「…そうか、そうか…もしかしたら幻術を使う魔獣が近くにいたのかもしれないよ。油断はせずに気をつけなさい。」
「はい、おじさま気を付けます。それじゃあ今日はもう遅いし帰りますね。また何かあったら声をかけてください!」
「あぁ、また頼むよサラ。」
「さようならサラ。君にフレイヤ様のご加護がありますように」
「ただいまおばさま」
「お帰りサラ、今日は遅かったね。薬屋のおじさんにこき使われたのかい?」
「いいえ、頼まれごとは簡単だったのだけど…」
今日会ったことをおじさまと同じように話す。一日の出来事をおばさまに話すのは私の日課だ。
「…そう、この町の子じゃないのね。そんな男の子見たことないけど、どこから来たのかねえ。この辺には村もないけど。」
「もしかしたらどこかの国の貴族様なのかも。あそこの森は魔獣がでるんでしょう?一人でいたから魔法が使える子なのかもしれないわ。どこかの国に行く途中にちょっと休憩していたとか。」
「そうだねぇ、きれいな子だったならそうかもね。ほら、今日はもう遅いよ、疲れただろ?早く寝なさい。」
「はい、お言葉に甘えて今日はもう休みます、なんだか急に眠くなってしまって…おやすみなさい、おばさま。」
「おやすみ、サラ。」
部屋に戻りベッドに飛び込んだ。
「は~疲れた!」
いつもはこんなに疲れない。いつもと違うと言えば森で男の子に会った位なのに、なんだがこう、身体が疲れているというより精神が疲れているというか…あの子本当に魔獣の幻術だったのかも。
あぁ、本当に眠い、瞼を開けることさえ煩わしい。
「あと少し、あと少し――――。あぁ、やっと。」
あれ?いつもの夢と少し違う。
いつも何かに手を伸ばしている夢。
いつもは届かないのに。
私から離れていく。ずっと一緒にいたのに。
でも、それが一番良いのかもしれない。
そう、思った。