08.守るために…
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「いや~。団長の奥さんってマジ綺麗ですね!!」
「俺も見かけました!薔薇姫とか呼ばれている公爵令嬢ですよね」
「どうやって知り合ったんすか?」
ミリーがお昼の差しれを持ってきてくれるようになって数日がたった。
毎日こんな感じの質問攻めに合う。
昔の自分なら飽き飽きうんざりしていたところだが、悪い気はしていない。
むしろ…ミリーの事を自慢したくてうずうずしている自分がいる。
前任者がよく奥さんの自慢をしていたが、こんな気持ちだったのだろうか…。
いずれにしてもミリーの作戦はうまく言っていた。
俺達の夫婦仲の良さは城の中ではもっぱらの噂になり、国王にまでいじられる始末だった。
ちょうど定時報告をしていたらその話題になった。
「あの冷血漢のシリウスがな~。いや~人は変わるものだな!」
「はい…彼女に出会って人生観が大きく変わりました」
「ほう…。そなたが三文字以上話すなどいつぶりだろうな…ハハハ」
「もっと話していたと思いますが…」
「いいや!余は聞いておらんぞ。だが…グロブナー公爵家の令嬢なら家柄もよく間違いあるまい」
「はい。彼女は俺には勿体ないくらい素晴らしい女性です」
「ほう…。そなたがそこまで言うのか…ぜひ一度会ってみたいものだな」
しまった…!!
ミリーが褒められてつい調子の載ってしゃべり過ぎてしまった。
こうなっては国王は一歩も譲らない。近いうちにミリーに会わせないと大変な事になる…。
ルビアント王国の国王、オルキス・ジルバッテン・ウィンターは俺と年齢がそんなに変わらない。
1年前に王座に就いたばかりの若き王だった。
彼は精霊使いで、地属性の中精霊と契約している。能力こそそんなに強くないが
頭の回転の速さ、知略、用心深さは右に出る物はいない。
前王の子供で三人いる王位継承権を制して今の玉座についた切れ者だった。
そして…無類の女好きでも有名な人でもあった。
「今度、妻と一緒に遊びに来るがいい。ぜひ夫としてのお前の話を聞きたいと伝えてくれ」
「…かしこまりました」
…失敗した。出来る事ならオルキス国王には会わせたくなかった。
彼は自分が気に入った女性には遠慮がなく、相手がいようがいまいが関係なく事を進める。
もう彼の側室は10人もいて、正妃も合わせれば11人の女性を囲っている。
俺は部屋を後にしたあと、苦々しい思いで家路についた。
夕食の時にそのことをミリーに相談したら彼女は快く受けてくれた。
俺としては断ってほしかったのだが…。
「まぁ!国王様に会えるのですか」
「ああ。君と一度話をしてみたいそうだ」
「楽しみです。27歳で玉座に付き知略と戦略でこの国をまとめていらっしゃる方…。きっと素敵な人なんでしょうね」
「いや…そんなことはない」
「シリウス?」
思わずムッとして声がこわばってしまった。
彼女があまりにもオルキス国王を褒めるから…つい。
今の発言は他の人に聞かれていたら不敬罪になるな…。気をつけないと。
「ミリーだから正直に言おう」
「どうしたんです?あらたまって…」
「オルキス国王は…その…無類の女性好きなんだ」
「まぁ!」
「だから…会う時はくれぐれも気をつけてほしい。決して二人きりにならないでくれ」
「心得ましたわ。いざと慣ればシリの魔法もありますし!」
「そうじゃない。俺の傍を離れないでくれ」
「…わかりました」
たとえ国王であっても彼女には触れてほしくない。
誰かに取られるくらなら…いっそ…。
「シリウス…大丈夫ですか?」
「あ…ああ。すまない」
「何か悩み事ですか?」
「そういう訳では…」
「何かあったら遠慮なく話してくださいね!私達はパートナーなんですから」
「ああ」
そういいながら、俺はまた食事を再開した。
今日に限ってペンドラゴンもシリも静かだった。
彼女に余計な気遣いをさせてしまった…。ミリーのほうが俺よりも年下なのに。
その後の食事は殆ど味がしなかった。不安と苛立ちが交互に襲ってくる。
国王は俺にとっては恩人だ。
彼が即位した時、俺を騎士団団長に任命してくれた…。
平民出身の俺が出世できたのも彼のおかげだといってもいい。
勿論、実績も積み上げてきたものがあるからだが。
王命とあれば従わざる得ない。
彼女を守っていくためにも今の地位は必要不可欠だ。
国王と引き合わせる時はうまく立ち回らなくては…。
でないとミリーに不快な思いをさせてしまう…。
様々な事を考えながら俺は夕食を手早く食べて一人先に部屋に戻った。
「シリウス…」
ノックと同時にミリーが部屋に入ってきた。
とても心配そうな表情をしていた。
「食後のお茶でもどうかなと思って…」
「ああ。もらうよ…」
彼女を部屋に招き入れてソファーに腰かけた。
ミリーはゆったりとした動作で紅茶を入れてくれた。
俺はそれを受け取って、黙って口にした。
「うまいな…」
「ふふふ。そうでしょう?」
「何というお茶なんだ?」
「カモミールティーです。リラックス効果があるお茶なんですよ」
「そうか…」
初めて飲むが甘酸っぱいリンゴのような香りがするな…。
それに甘くないから飲みやすい。
「国王陛下にお会いするのは二人の初ミッションですわね!」
「初…ミッション?」
「ええ。契約結婚して…夫婦になって初めての公式の場ですもの…初めての任務みたいなものでしょう?」
「任務か…そう言われればそうだな」
「国王陛下に私達の仲がいい事をアピールして認めてもらえれば…もう怖いものなしですわね!」
ニコニコしながら、話をするミリー。
そうか…。彼女はそんな風にとらえているのか。
俺は、国王に彼女を見せたくない事で必死だったが逆に認めてもらえれば強いものはない。
あっさりした性格の人だ。一度諦めてくれればもう手を出す気も起きないだろう。
それに彼女のいう通り国王が認めたとなれば誰も俺達の関係に口を出す者もいなくなる。
今後の事を考えるなら今乗り越えておいた方が良いかもしれなかった。
「ミリー…」
「はい。なんですか?」
「君は…本当に凄い女性だな…」
「ふふふ。そうですか?」
「ああ。おかげで少し楽になった。感謝する」
「私は何もしてませんよ…あ!このお菓子私が作ったんです。良かったら一緒にどうですか?」
「いただくよ」
精霊たちにせがまれて昼間に作ったのだというマフィンを貰った。
しっとりとした触感であまり甘くなくて美味しい。
甘いのが苦手な俺でも美味しく食べることが出来た。
彼女の気遣いに救われた。
ミリーのおかげで俺はうまく気持ちを切り替えることが出来た。
会う事が決まっている以上…俺も切り替えて対策を練るとしよう。
目の前で楽しそうに話すミリーを見ながら俺は穏やかな気持ちで耳を傾けた。
次の日、団長室で仕事をしていたらリゲルが尋ねてきた。
何やら物凄く不機嫌そうな顔をしていた。
「リゲル…なんのようだ?」
「何の用だはご挨拶だな。義理の兄に向って…」
「今は仕事中だ。君が兄かどうかは関係ない」
「関係あるね!大ありだよ」
「何なんだ…朝から…」
彼は騎士団養成学校時代からの友人だが、彼が大体絡んでくる理由は
ミリーがらみのことが多い。
彼は物凄い過保護で、ミリーの事を溺愛している。
騎士団養成学校時代には様々なミリーの話を聞かされたものだった…。
「君は毎日僕の愛しのミリーの手作り弁当を食べているそうだね!!」
「それがどうしたんだ」
「あんまりじゃないか!!俺は一度も貰ったことがないのに」
「お前な…わざわざそんな事を言う為に…」
「そんな事とはなんだ。僕にとっては死活問題だ!」
妹思いもここまで来たら重症だな…。
こんな時のリゲルは何を言っても無駄だった。
悪いやつではないが…ミリーの事になるとしつこいし暑苦しい。
しかも何を言っても、ミリーの話になるから会話が進まない。
これで副団長なんだから…世も末だな。
俺はしばらく黙って彼の気持ちが収まるまで話を聞いていた。
「シリウス…君が羨ましいよ」
「そうか」
「毎日毎日ミリーに会えて…一緒に過ごして…」
「そうか」
「ああ。仕事さえなければ毎日でも会いに行くのに…」
「それは迷惑だ。やめてくれ」
本当に…リゲルは頭はいいのになぜこんなに馬鹿なのか。
相変わらずぶれない妹への思い。
さすがに家に来られるのは面倒だ…。リゲルには地方の仕事を多めに振ろう。
俺はそう心に決めた。
「今度…国王陛下とミリーを会わせることになった…」
「なんだって…」
リゲルの声が急にトーンが低くなった。
目も据わっていてい鋭くなっている。
「俺の変わりように興味を持たれてしまった…近いうちに会わせろと言ってきたよ」
「あの…変態野郎め。ミリーに手を出したらただじゃおかない」
「そうならないよう…協力してくれ」
「勿論だ。グロブナー公爵家の全てを懸けてミリーを守る」
「それは心強いな」
「グロブナー公爵家を敵に回したらどうなるか…思い知らせてやる」
「まだ何か起こった訳じゃないだろ」
「いいや!起こるね。ミリーの可愛さに虜にならない奴なんていない」
まぁ…それは一理あるが…。
グロブナー公爵家。ルビアント王国の四代公爵家のうちの一つ。
初代国王の時代から仕えている由緒ある家だ。
歴史を重んじる風潮のあるルビアント王国での彼らの影響力は絶大。
多くの貴族のつながりをもち国政をも左右する力を持っている。
国王が俺を結婚させたがったのもこの公爵家とのつながりを持ちたいからだった。
「いつ、どこで国王と会うんだ?」
「まだ決まっていないが…」
「だったら早めに手を打つに越したことはないな」
「そうだが…何かいい手はあるのか?」
「ああ。僕に任せておいてよ」
ああ…。こんなふうな表情になったときのリゲルは怖い。
戦闘の時でもそうだ。一歩も二歩も先を呼んで相手を陥れる。
彼が中精霊と契約しているにもかかわらず騎士団副団長の座につけたのは
この頭脳のおかげでもある。まぁ…なんにしても彼を味方にできたのは大きい。
これなら国王と面会しても問題ないだろう。
ミリーを守れるならなんだってやるさ…。
こうして俺は着々と国王とミリーの面会の準備を進めるのだった。
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