07.ほのぼの新婚生活を満喫してます
シリウスと結婚して1週間がたった。とても快適な生活を送っている。
シリウスは優しくていい子だし、ペンドラゴン様の話はとても興味深い。
シリとは時々言い合いをしているけど仲がいい証拠だし順調に生活できて満足していた。
「じゃあ…行ってくる」
「はい。行ってらっしゃいませ」
シリウスは軽く頬にキスをして仕事に向かった。
今日から休みが終わって職場に復帰することになっていた。
シリウスは真っ黒な騎士団の制服を着ていた。
黒は団長しか着ることが許されておらず、それ以外の騎士団はランクによって
赤や緑といった色分けされているそうだ。
ああ…。黒色の軍服とっても似合ってるわ~。やっぱり黒はいいわよね。
イケメンだから何色を着ても似合うと思うけど、制服って着ると雰囲気変わって素敵よね。
私は玄関まで彼を見送ってテラスに向かった。
小説の構想を練る為だった。ここ最近とてもいい刺激を受けている。
沢山書きたいことがたまっていた。
『ああ‥どれから書いていこうかしら~♪』
『楽しそうね。ミリー』
『とっても楽しいわ。毎日賑やかで、シリウスもペンドラゴン様もいい方だし』
『シリウスは良いとして、ペンドラゴンは別よ』
『ふふふ。シリってば…。そんなに嫌いなの?』
『嫌いよ!あんな武骨で俺様な奴』
『あたながそこまで嫌うのも珍しいわね…』
『昔ね…。ちょっと色々あったのよ』
『色々ってなに?恋愛事?それともライバル同士だったとか?』
『ううう…。それはおいおい話すわ…』
苦笑いしてシリはどこかに消えてしまった。ちぇっ…。
面白いネタになりそうだと思ったのにな~。
まぁシリが言いたくないなら仕方がないか。私は気を取り直してメモに走り書きをした。
今日のお昼にはシリウスにお弁当を届けることになっている。
早く終わらせて準備をしないといけなかった。
「まぁ…こんなものかしら」
一区切りついたところで私は厨房へ向かった。
事前に料理人には伝えているため、厨房には食材が手配されていた。
「準備してくれてありがとう!ルイス」
「奥様の為ならどうってことないですよ~」
ニコニコしながら、手際よく準備してくれたのは新しく採用した料理人のルイス。
癖のある茶色の髪の毛に水色の瞳。背がとても高くて細身の男性だ。
彼は元々近くのレストランでシェフをしていたけど店長と折り合いが悪くクビになったところだった。
そこにたまたま居合わせたメイドのマーサが声を掛けてくれてうちの専属になったという経緯の子だった。
「ペンドラゴン様が、ルイスの料理をとても褒めていたわ」
「まじっすか!いや~。嬉しいな」
そう何を隠そう彼は敬語が苦手なのだ。
誰に対しても平等に接してしまう為、反発を買いやすいようだった。
私は気にしないので彼とは仲良くやっている。
「さて!早速作りますか」
「奥様が自ら作るなんて珍しいっすね~」
「そうかしら?」
「そうっすよ!貴族のお嬢様方は自分では料理しませんね」
「ふーん…。でも手作りの方が良いと思うけどな~」
「そうっすね。旦那も大喜びっすよ!」
「ふふふ。ありがとう」
ルイスって本当に気さくで話しやすわ~。
小さい頃から料理人の両親に育てられているから料理の腕もぴか一だし。
因みにルイスは火の小精霊と契約して料理をしている。
絶妙な火加減は精霊との信頼関係を築いているからこそできるものだった。
かれの精霊とも私は仲良し。時々おしゃべりをしては料理について教えて貰ったりしている。
私は手早くサンドウィッチ用にスライスされたパンにからしマヨネーズをつけて
キュウリやトマトゆで卵などを挟んでいった。
基本的のここの異世界の食文化は生前と大きな差がなくて嬉しい。
お米がないことがちょっと不満だけど…。
味付けに差がないのは親しみやすくて良かった。
あ…。ペンドラゴン様も欲しいっていうかもしれないわね…。
一応、沢山作っていこうっと。
余ったら精霊たちに分けたらいいしね!
基本的にマナを糧とする精霊や魔獣は食事をする必要はない。
マナとは人間の体の中に循環しているエネルギーみたいなもので
日本的に言うと気とか呼ばれているものに近い。
ただシリ曰く食べても問題ないから美味しいものは食べたいのだそうだ。
確かに食べる楽しみってなにものにも得難いものはあるわよね~。
そうこうしているうちに、大量のサンドウィッチを作ってしまった。
シリウスに渡す分は、この前買ってもらったバスケットいれて残りは空間魔法に入れた。
出かける準備が整った私は、シリウスのいる王国騎士団へ向かった。
私の家からは歩いてすぐの為、馬車は使用せず歩いて行くことにした。
ルビアント王国のお城は日本のお城に少し似ている。
お城自体は形こそ西洋のものだが、お城の周りをお堀がぐるりと囲み
侵入を防ぐようにする作りは日本のお城そのものだった。
大きな門の前で門番の人に差し入れに来たことを伝えた。
するとシリウスから話を聞いていたらしくすぐに中に入れてくれた。
入ってすぐに大きな噴水と庭園があり底を突っ切ると、騎士団の人達がいる建物が見えてくる。
シリウスはどこかしら…?
「ミリー!!」
大きな声で名前を呼ばれたため振り返ると嬉しそうに走ってくるシリウスがいた。
どうやら私を見つけて駆けつけてくれているらしい。
おおお!!私に会いたくて仕方なかったって感じの演技!すごーい…。
演技派だわ!シリウスは!!
わたしもそれに合わせて少し小走りで彼に駆け寄る。
「シリウス。お仕事お疲れ様です」
「ああ。道に迷ったりしなかったか?」
「はい。大丈夫でした」
「そうか…じゃあ…あちらに休める場所がある。そこへ行こう」
「ええ」
そう言って私の手を引いて案内してくれるシリウス。
周りを見ると騎士団の人達が好機の目でこちらを見ていた。
やっぱり目立つのね~。
するとシリウスの部下たちが話しかけてきた。
「シリウス団長!!そちらの方は奥様ですか?」
「…ああ」
「はじめまして。妻のミリアーティと申します」
「うおー!!本当に噂通り美しいですね」
「噂?」
「はい!グロブナー公爵家の次女は薔薇姫とか、窓際の麗人と呼ばれております」
「まぁ…そんな噂が。恥ずかしいですわ」
たまーに耳にしていたけどいざ目の前で言われると照れるわね。
でも…褒められて悪い気はしなくってよ。ホホホ。
前世では美人ではなかったから見た目についてはあまり褒められることはなかった。
まぁ職業柄、気にした事もなかったけどね。
「お前達…まだ仕事中だろ?さっさと持ち場に戻れ」
「はい!!団長!失礼いたしました」
シリウスが低い声で注意をするとビシッと姿勢を正して、走り去ってしまった。
仕事中のシリウスは家と違って、凛々しくてカッコよかった。
「すまない…ミリー。部下が失礼なことを言った」
「いいえ。気にしてませんよ。ふふふ」
「そうか…ならいいんだが」
シリウスと一緒に歩いて木陰のあるベンチまで来た。
大体お昼はここで食べるか団長室で食べるのだそうだ。
「はい。さっき作ったばかりのサンドウィッチです!」
「ありがとう…いただくよ」
そう言って大きな口を開けてサンドウィッチを頬張るシリウス。
無言で黙々と平らげていく。
するとシリウスの影からペンドラゴン様が出てきた。
『ミリーよ我の分もあるのか?』
『はい!もちろんです。こちらをどうぞ』
『さすが気が利くな!褒めて遣わすぞ』
『ありがとうございます。ペンドラゴン様!』
私はニコニコしながら、二人が頬張るのを見守っていた。
ああ…。やっぱりイケメンが目の前で食べるのを見るって…至福だわ。
二人ともとても美味しそうに食べてくれた。
沢山用意したサンドウィッチもほとんどなくなってしまった。
『はい。お茶をどうぞ…シリウス』
『ありがとう。サンドウィッチ…とても美味しかったよ』
『良かったです~気に入って貰えて』
『ミリーが作る料理はマナがこもっておるな。とても心地よかったぞ』
『そうですか…。それは良かったです!精霊たちにも私のお菓子は人気なんですよ』
『なに!菓子も作れるのか…そなたは』
『はい。小さい頃からよく実家で作ってましたから』
『うむ。ではこの次は菓子も持ってこい!ぜひ食したい』
『ふふふ。わかりました』
『ペンドラゴン…。あまりミリーをこき使うな』
ムスッとした表情でペンドラゴンを窘めるシリウス。
私は全然気にしないのだけれど…。
『そなたの嫁なら、我の嫁も当然であろう?』
『ふざけるな!ミリーは俺の嫁だ!』
珍しくシリウスが怒って、ペンドラゴンに怒鳴っていた。
まぁまぁ…。二人の事だからいつもみたいにじゃれてるんだろうけど…。
シリウスでも大声出すことってあるのね~。
『シリウス。私は別に気にしてないわ。お菓子くらいすぐに作れるもの』
『いや…こいつは甘やかすと調子に乗るから…』
『ふん!誰のおかげで今の力を手に入れたと思っておる。シリウスは我をもっと敬え』
『それはお前の態度次第だ』
『ふふふ。お二人とも本当に仲良しさんですね~』
見てて微笑ましいわ。
イケメン二人がじゃれ合う絵柄なんて、日本ではお目にかかれなかったもの。
私は早速スケッチブックを取り出してペンを執った。
喧嘩するほど仲がいいっていうしね…。
それにペンドラゴラン様は本気で言い合いをしているようには見えなかった。
むしろシリウスとの掛け合いを楽しんでいるようにさえ見える。
私はそんな二人を眺めながらお昼をまったり過ごし家に戻っていった。
二人はどんないきさつで出会って契約することになったのかしら…。
シリウスはあまり自分の事を話したがらない。
だから私も敢えて突っ込んだ話はしていない。この辺の距離感って難しいわよね~。
契約結婚だから、本当の夫婦ではない。
でも一緒に生きていく上では大切なパートナーでもある。
全部知る必要もないだろうし‥‥。
私も前世の記憶があるって言ってないしね。
「まぁ…そこら辺はおいおいでいいか…」
『ミリー!』
『あら、ふうちゃんにすいちゃん…どうしたの?』
『俺達もミリーの作ったご飯が食べたいよ~』
『そうだよ!ずるいよ。あのトカゲにばっかりさ~』
トカゲって…ペンドラゴン様のこと?
お城から戻ってすぐに、風の大精霊ふうちゃんと、水の大精霊すいちゃんに話しかけられた。
どうやら、私が作ったサンドウィッチをペンドラゴン様が全部食べてしまったのが
気に入らなかったらしい。ふふふ。焼きもち焼いちゃってかわいい~。
『ちょっと!あんたたち。ミリーにわがまま言わないの』
火の大精霊フレイも一緒に出てきた。
彼女は熱血で真面目な性格の女の子。ツインテールの真っ赤な髪が可愛らしい。
見た目は10歳から13歳くらい。
どうしても孫みたいに思ってしまうけど、彼女も相当な年上である。
『だってだって…。ミリーってば結婚してから全然かまってくれないじゃないか~』
甘えん坊さんの水の大精霊すいちゃん。
水色の綺麗なボブへアに、童顔の彼はとっても可愛い系。
ふうちゃんとは仲良しでよく二人で一緒にいることが多い。
『まぁまぁ…。皆落ち着いて。夕食まで時間があるから、何か作るわ』
『ほんと?』
『やった~♪ミリー大好き♡』
『ミリー…無理してない?大丈夫?』
『ありがとう。フレイ♪私は元気よ』
フレイの頭をなでなでしたら、とっても喜んで抱き着いてきた。
ああ…。可愛いな~もう~。
『あっ!ずるいぞフレイだけ~。俺も撫でて~ミリー』
『はいはい。すいちゃんは甘えん坊だね』
『ほーんといい歳なのにさ~。すいはミリーにべったりだよな~』
『いいだろ!俺はミリーが大好きなんだ』
『私も皆が大好きだよ』
『わーい♪』
ふうちゃんはどちらかというと面倒みが良くてしっかり者でお兄さん的ポジション。
フレイとすいちゃんの喧嘩の仲裁をよくしたりしてくれている。
皆、精霊だからといって人間と大差ない。
むしろ人間よりも純粋で素直だと感じることさえあるくらいだった。
さて…。この子達におやつでも作ってあげるか。
私はもう一度厨房へ行ってどんな材料があるか確認した。
ルイスはいつも精霊様に沢山の材料を仕入れてくれている。
彼らは気まぐれだからいつ大量のお菓子を欲しがるか分からないためだった。
「これならマフィンが作れそうね!」
「まーた何かつくるんすか?奥様」
「そーなの。精霊たちがほしがっちゃって…」
「沢山契約するのも楽じゃないっすね~」
「ふふふ。私は楽しいわ」
私はルイスと世間話をしながら精霊たちにマフィンを作った。
好きな時に好きなことが出来る生活って最高!!
最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)
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