16.初恋の人
シリウスとの生活も1ヶ月が経とうとしていた。
最初は色んなことがあったけれど、だんだんと生活のリズムも掴めてきたし
彼と過ごす時間にも慣れてきた。
最近…ちょっとだけ変化もあった。
シリウスの愛妻家ぶりが凄いのだ。
そこまで演技しなくても!!っていうくらいに良い旦那様をやってくれている。
ありがたや~。シリウスは本当にいい子ね!
「ただいまミリー」
「お帰りなさい!シリウス」
私は仕事から戻ったシリウスを出迎えた。
するときゅっと抱きしめられて頬に軽くキスされた。
あらら~。何だかラブラブな新婚さんっぽい!!
これは私も気合を入れて演技で答えなくては!
「これ…ミリーに買ってきたんだ」
「わぁ!綺麗なお花」
「気に入って貰えるといいんだが…」
「とっても嬉しい!ありがとう。シリウス」
そう言って私もシリウスに抱き着いた。
18歳の女の子ならこれくらい喜びそうよね?大丈夫よね?
ちょっとドキドキしながらシリウスの反応をうかがう。
すると、氷で固まってるみたいに微動だにせず立ち尽くしていた。
「シリウス…大丈夫?」
「あ…ああ大丈夫だ。ミリーから抱き着かれるとは思ってなくて…」
「だって、シリウスが頑張って演技してくれてるんですもの!私も頑張らないと」
「演技…そうだな。俺は感情が分かりにくいと言われているから…」
遠慮がちに笑いながらシリウスが微笑んでくれる。
良かった~。セーフだったみたいね!
「最近のシリウスは分かりやすいわ」
「そうか?」
「ええ。妻を愛する夫って感じがします。表情も豊かになったし」
「そうか…なら頑張った甲斐があったな」
「はい!これなら誰に見られても疑われることないと思います」
「そのうち演技ではなくなるかもしれんな」
「えっ?」
いたずらっぽくシリウスが言った。
こんな表情のシリウスは初めて見た。笑顔なのにどこか挑戦的で瞳がギラギラしてる。
「ふふふ。それは大変ですね…」
「そうだろう?」
私は貰った花を眺めながらシリウスに告げた。
「シリウスに好かれる人は幸せでしょうね!」
「‥‥」
「シリウス?」
私を見つめながら黙ってこちらを見るシリウス。
何か言いたげだけど黙っているだけで何も言わない。どうしたのかしら?
『ブハハハ!フラれてしまったな!シリウス』
『ペンドラゴン様!』
『うるさいな…ペンドラゴン…』
『そう拗ねるでない。シリウス…お前の魅力が足らんのだ』
『ぐ…』
シリウスをからかい、笑いながらペンドラゴン様が出てきた。
またシリウスをいじりに来たのね~。本当にいたずらが好きなんだから…。
このままだとなんだかシリウスが可哀想だからフォローしよう!
『ペンドラゴン様…シリウスは魅力的な男性ですよ』
『ほおぉ?それは性的な意味でか?』
『いいえ。私にとっては人間として魅力的ですよ~ふふふ。』
『ブハハハ!!そうか!シリウスは異性としては魅力がないのだな』
『いいえ!決してそんな事は…』
『もういい二人とも…これ以上聞いてたらめげそうだ』
シリウスはしょんぼりしながら歩いていった。
あら~。フォローしたつもりがへこませてしまったみたい…。
だってね~。私は元が96歳だからさ~。
50歳以下は恋愛対象外なのよね~残念な事に…。
シリウスなんて孫みたいに思っているし…。人としては好きだけどね♪
『あっ!そういえば…シリウス』
『なんだ?』
『来週、私の祖父が誕生日なんですが…お家にご招待してもいいですか?』
ダイニングにつきテーブルに座りながらシリウスに確認した。
花はマーサに渡して部屋に飾ってもらう事にする。
『ああ。構わない…確か結婚式ではいらっしゃらなくて、挨拶できていなかったな…』
『そうなんです。お爺様は各地を転々としてますから…』
もとグロブナー家当主の私の祖父は放浪癖のある御年75歳!
放浪できるくらい元気で今でも若々しい敬愛している祖父だ。
『ならちょうどいいな。挨拶したいと思っていた』
『ありがとうございます』
『うむ…。ミリーはその祖父が好きなのだな?』
『えっ?』
『まぁ!ペンドラゴン様…どうしてわかったんですか?』
『そなたの顔を見ればわかるぞ』
得意げに腕を組んで話すペンドラゴン様。
そんなに顔に出てたかしら?
シリウスはびっくりしたのか、目を点にしている。
まぁ…そりゃあ驚くわよね~。お爺様が好きだなんて…。
『流石ですわ。実は私の初恋の人なんです~♪』
『ブハハハ!!やはりそのたは面白いのう!よし今日の酒の肴はそれだ!』
『ふふふ。でも今は好きというよりかは…とても尊敬しております』
ああ…。懐かしいな~。
初めてお爺様を見た時のときめきと衝撃…。
こう…胸が高鳴って顔が熱くなって…久しぶりに私の中の女子が目覚めたって感じ。
私の祖父は背も高く、シルバーグレイの髪の毛に整った顔立ち。
いわゆるイケオジと呼ばれているような人だった。
なにより私のタイプの顔と性格…何もかもが物凄くどストライクな人なのだ!
『シリウス…どうしたんですか?』
『放っておけ。どうせ下らんことを考えておるのだ』
『そうですか?何だか顔が真っ青ですけど…』
『それよりもミリーよ、その祖父とやらのどこが好きなのだ?』
『そうですね~。まずお顔が渋くてタイプです!後はとっても紳士的で包容力があって、優しくて…何より家族を大切にしている所が大好きです』
『なるほど…そうかそうか…。そやつに会えるのが楽しみだのう!ブハハハ!!』
そう言ってペンドラゴン様はお酒をガバガバ飲んでいた。
お爺様の誕生日プレゼント何にしようかしら…。
まだまだ先だからと思っていたけどあと1週間と迫っている。
いい加減何をあげるか決めないとな~。
『シリウス。気にしちゃ駄目よ!ミリーが変わってるだけなんだから』
『ありがとう…シリ…』
あら珍しい…シリがシリウスのフォローをするなんて…。
それにしても私が変わってるは言い過ぎじゃないかしら?
『でもシリウスは十分カッコいいですから♪』
『ありがとう…ミリー』
『お爺様の誕生日プレゼントなんですけど、シリウスがお休みの日に買いに行こうと思ってて』
『分かった。俺も渡したいから一緒に買いに行こう』
『ありがとうございます』
ふふふ。良かった~。
お爺様の誕生日プレゼントって毎年悩むのよね~。
何を渡しても喜んではくれるんだけど…やっぱり男性の意見も聞きたかった。
毎年リゲルお兄様と買いに行くけど、妹離れが必要だし…。
今年はシリウスと一緒に見てもらおうっと♪
『そう言えば…シリウスの初恋の人ってどんな人でしたか?』
『えっ?俺か?』
『はい!どんな人だったのか気になって』
『俺は…』
ふと気になって何気なく尋ねてみたが、シリウスは言葉に詰まって黙ってしまった。
あら?聞いてはいけない事だったのかしら?
もしかして悲恋?相手が死んでしまってるとか?
聞きたい!!でも…辛い過去なら無理やり聞くのは悪いし…。
私は好奇心と葛藤しながらグッと押し黙って彼の返事を待った。
『俺は…まだ…本気で好きになったことがない…』
『まぁ…そうだったんですか』
『元々女性が苦手だったし…話す機会も少なかったからな』
『そうでしたの。シリウスはモテモテな気がしましたけど…』
『いや…そんな事はない…』
何だか辛そうな表情で俯いてしまった。
この話題は禁句ね。これ以上は聞くのはやめよう。
きっと悲しい恋をしたんだわ!!
分かるわ~。片想いとか好きなってはいけない相手とか辛いわよね~。
『きっとシリウスはこれからですわね!』
『え?』
『今まで恋をしなかった分は、きっとこれから出会う人とできますわ♪』
『そう…だろうか』
『はい!シリウスならきっと大丈夫ですよ』
そう言って私は料理を食べ進めた。シリウスは優しくていい子だもの~。
私と別れてもきっといい人が見つかるわ!むしろいい人が出来たら離婚しないと!よね。
今は辛くても次に好きな人が出来たら忘れちゃうものだし。
『こやつに恋などできるのかのう~?』
『できますよ~。シリウスはとっても素敵ですもの』
『シリウスは難しい男だぞ?我が女でも恋人になりたいとは思わんな』
『俺だってお前と付き合うのなんてごめんだ』
『ふふふ。お二人が女性なら物凄く綺麗な女性になるでしょうね~♡』
性別逆転も面白い設定ね…。
これも小説のネタには最適!後で忘れないようにメモしておこうっと♪
ああ。やっぱりこうして沢山話をしていると、刺激があっていいわ~。
どんどん色んなアイディアが生まれてくる。
前世ではあんなにどんな話にするのか考えるのに苦労したのに…。
『ミリーが男ならとっても女性に人気が出そうだな』
『あら?ほんとですか。シリウス』
『ブハハハ!!そうだな!ミリーは天然人たらしだからのう~』
『え?ペンドラゴン様…なんですかその軽そうな感じは…』
『確かに…。ミリーは意図せずに色んな人を夢中にさせて大変な事になりそうだな』
『そんな事しませんよ!私は誠実な人間です』
もう!どんなイメージなのかしら二人の中の私は!!
まったくぅ失礼しちゃうわ~。
でも、男勝りな女の子が男性になってモテモテになるって話を書いても面白そう…。
コメディな感じでアップテンポで話を進めていったら楽しそうだわ。
これも後でメモね!
ああ!早く小説をたくさん書きたい!
思う存分…心行くまで書くことに専念したい!!
もうちょっとの辛抱よ…。あと二か月。夫婦円満な演技をしたら…。
私の願望が叶うわ。それまで…もう少し…。
私はそのときの事を想像しながら、食事を楽しんだのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)
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