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13.青いヒヤシンス

「久しぶりだな!ミリアーティ」


「お久ぶりです。国王陛下」


私はシリウスと一緒に国王陛下を出迎えた。

今日はいよいよ二度目の対面の日だった。

天気もいいし、準備はばっちり!!完璧なコンディションだった。


「ではこちらへ…。今日は天気もいいのでテラスへご案内します」


「ああ。それにしてもよい家だな」


「ありがとうございます」


「こじんまりとしているが気品と趣がある。さすがグロブナー公爵家の家だな」


「恐れ入ります」


相変わらずの完璧な笑顔に完璧なトーク。

今回は前回あったときと違って国王陛下の装いはラフな感じだった。

それでも国王陛下から出てくるオーラは消せない。

おまけにラフな格好だからこそイケメン具合が引き出されている…。

これは…側室が10人いるのもうなずけるわね~。


「さて…今日来た目的だが私はミリアーティに謝罪したくてな」


「謝罪…ですか」


おおう。いきなり直球で来たわね…。

テラスへ来て早々国王陛下から話を切り出された。


「先日の君に対する態度を詫びたい。申し訳なかった」


「陛下そんな…頭を上げてください!」


「今日は国王としてきたのではない…一人の男としてきたのだ。すまなかったミリアーティ」


「…分かりました。謝罪を受け入れます。オルキス様」


「そうか!受け入れてくれるか!」


国王陛下からそんな風に言われたら…受け入れるしかない。

オルキス様は立ち上がってわたしの手を握って話をつづけた。


「それでは…許してくれるのだな」


「はい…そもそも何も怒ってませんし…」


「ハハハ!ミリアーティは心が広いな!」


「オルキス陛下…そろそろ手を離していただけますか」


私の横でメラメラと闘志を燃やしながら話しかけるシリウス。

あらー!怒ってる演技も素敵!!

シリウスっては中々の演技派ね‥‥。


「ああ。すまない…嬉しくてついな」


にっこりと微笑みを絶やすことなく話を続けるオルキス様。

この人は動じないのね~。さすがというべきか…。


「今日はミリアーティが好きそうな手土産を持ってきたぞ」


「まぁ!ありがとうございます」


私は手渡された箱を開けた。

すると中には青いヒヤシンスをモチーフにしたブローチが入っていた。


「どうだ?気に入ったか?」


「こんな…高価な物頂けません」


「受け取ってくれ。お詫びのしるしだ」


「ミリー…受け取っても問題ない」


「はい」


シリウスに促されて私は渋々受け取った…。

こんなものもらっちゃって…何か要求されたらどうしよう。


「他意はない。ミリアーティならこの青いブローチが似合うと思ったのだ」


「ありがとうございます。オルキス様」


「これで仲直りだな!」


「はい」


だから…元々なにもないんだけどな~。

シリウスは黙ったままお茶を飲んでいる。


「私はミリアーティに興味を持ったと言っただろう?」


「はい」


「それは、君がペンドラゴン様に気に入られているからだ」


「はい…それで私とも仲良くなりたいという事でしょうか?」


「さすがだな…察しがいい。正直に話そう…君にはペンドラゴン様との橋渡しをして欲しいのだ」


「橋渡し…ですか」


「ああ。五大魔獣の殆どは気位が高く気まぐれで滅多な事では人と契約しない」


「そうですね…シリウスは特例だとか」


「そうだ。類まれな才能だと私は思っている。だが…いくら契約していると言ってもペンドラゴン様の意に反することはできない」


「そうなんですか?」


私はシリウスをちらりと見た。

シリウスも私の視線に気が付いたみたいで頷いた。


「ペンドラゴンは気まぐれだ。いくら俺が頼んでも力を貸してもらえない時もある」


「まぁ…でも仕方ないですわね」


「ハハハ。そうなのだ。だが君は気に入られている。だからもしもの時は交渉をしてもらえたらっと思ってね」


「交渉ですか…」


「ああ。ペンドラゴン様の力はこの国を守るために必要な力だ。他の国にも牽制になる」


「伝説の魔獣ですものね…なるほど」


「もしシリウスの話を聞かなくても…君のお願いなら聞くかもしれないだろ?」


「ああ…なるほど」


そうなのかしら?ペンドラゴン様の気まぐれな態度を私がどうこうできると思わないけど。

そもそも人の心を如何にかしようという考え自体好きではない。

心はいつだって自由であるべきだ。

誰に何を言われる権利もないし、誰も侵すことのできない神聖なものだ。

勿論それは精霊であっても魔獣であっても変わらないと私は思っている。


「オルキス様の仰りたいことは分かりました。でも…私の最優先事項は小説を書くことなのです」


「ほう?君の意見を聞こう」


「ありがとうございます。小説を書く事が私の生きがいであり、人生です。その心は誰にも制限できません」


「うむ…もっともだな」


「オルキス様が国を守るためにペンドラゴン様の力を借りたいという気持ちはよく分かります。でもペンドラゴン様にも心があります…私と同じように譲れない何かがあるはずです」


「ああ」


「だから…オルキス様。私とお友達になりませんか?」


「なんだと?」


私はにっこり微笑んで思っていることを伝えた。

緊張しているけど…動揺を出してはいけない。

交渉をするなら有利に運ばないと…でないと私の自由を奪われかねない…。


「私の愛する人はシリウスです。そこには誰も入れません。でも友人は沢山いても問題ないと思うんです」


「なるほど…君の友人の一人に私も入れてくれるという事だな?」


「はい!私は友を大切にし尊重します。もし友人から何かお願いをされたら…叶えてあげたいとも思うでしょう」


「ハハハ…。やっぱりミリアーティは面白い!」


「ありがとうございます」


「では私と友人になってくれるのだな!」


「はい。オルキス様」


とても愉快そうに満足そうにオルキス様は右手を差し出してきた。

これも…対等な立場と思っていいのかしら?

私も右手を差し出して握手した。


「よし!これで私と君は友人だ。そのブローチに懸けて誓おう」


「分かりました…。これが友情の証という事ですね」


「そうだ!君がそれを身に着けている限り、誰も君を脅かすことはない。私の友人だからね」


「光栄です。大切に致しますね!」


うんうん。なんだか思ってた以上に上手く言ったじゃない!!

お友達大作戦。成功ね~。


「オルキス様…そろそろミリーの手を離してください」


「シリウスは本当に嫉妬深いな」


「当り前です。妻が他の男と手を繋いで気持ちいいはずがないです」


「わかった。わかった…これでいいか?」


そう言ってオルキス様は両手を挙げて万歳のポーズをした。

ふふふ。シリウスったら…可愛い。

焼きもちを焼く演技も身に着けているなんて…。

これはますます、私も頑張らないとね!


「シリウス…君は誤解しているようだから言っておく」


「何がです?」


「私が愛しているのは妻のアイリーンただ一人だ」


「えっ?でも…側室の方が何人もいらっしゃいますよね?」


私もそれを聞いてびっくりした。どういうこと?

何だか面白そうな展開になってきたわ~。ワクワク♪


「ここだけの話、私が囲っていると言われている女性たちは妻が見つけてきて連れてくるのだ」


「はっ?一体…何のために…」


「彼女たちは生まれつきマナがなく…精霊使いにも魔獣使いにもなれなかった者達だ」


「マナを持たない…!そんな人がいるんですか」


「ああ…実に不運な事だ。だから食べることも働くことも難しい。だから妻はそんな彼女たちに少しでも生きていけるようにと私の妻として迎え入れるように頼んでくるのだ…」


「まぁ…。素晴らしい奥様ですね」


「そうだな…。だから私が側室を多く持つ理由はそのためだ」


なるほど…。じゃあ女好きっていう話は本当にただの噂だったのか…。

ふむふむ。参考になるわ~。

オルキス様とお友達になれて良かったかも。


「私の側室として囲い…知識や教養を身に着けさせて自力で生きていけるように妻が指導しているのだ」


「そうだったんですか…」


「だからシリウス…安心しろ。私は君の妻を取ったりしないよ」


「えっ‥‥!!!」


「私がミリアーティにちょっかいを出すと思ってイライラしていたのだろう?」


「それは…」


シリウスの顔がみるみる真っ赤になってゆでだこみたいになっている。

可愛いわ。ああ…スマホが欲しいわ!!!


「ではオルキス様は初めから私をどうこうする気はなかったのですね」


「勿論だ。まぁシリウスとペンドラゴン様がどんな反応をするのか見たくて、わざと怒らせるようなことはしたがな」


「まぁ…人が悪いですわオルキス様は…シリウスは真面目な方なので、そう言った冗談は通じませんよ」


「ミリー…」


「ハハハ!!だから面白いんだ♪」


「オルキス様…本当にからかうのはやめてください…」


「すまんな…。シリウスの反応が可愛くてついな…」


「あ!分かります。シリウスのリアクションって可愛らしいですよね」


「そうなんだ!初々しくてすぐに顔に出るからついつい…」


「いじめたくなる!」


「そう!それだ。分かってるなミリアーティ」


「これでも妻ですから」


「二人とも…勘弁してくれ」


エッヘン!何気に毎日顔を合わせてませんわよ。ホホホ。

やっぱりシリウスってどこにいっても弄られキャラなのね…。

オルキス様に弄られて恥じらうシリウス…。いい図ね。

ある特定の地域の女性に人気がでそうだわ…ふふふ。


「ああ…とても愉快だ…。今日ここへきて本当に良かった…。ありがとうミリアーティ」


「こちらこそ…ありがとうございます。オルキス様」


その後は三人で和やかに過去のシリウスの話を聞いて盛り上がった。

私とオルキス様だけ。

オルキス様は本当に奥様思いの良い方だった。

よくよく話を聞くとアイリーン様の方が年上で頭が上がらないらしい。

そんな意外な一面も知れてとても有意義な一日を過ごすことが出来た。


何はともあれ丸く収まって良かったわ。

しかも…国王陛下の友人という凄いポジションまで手に入れてしまった。

これはうまく活用すれば私のスローライフを守ることが出来るかもしれない。

バンザーイ!!

それから私を気に入ってくれたオルキス様はぜひ妻に会ってほしいと言ってきた。

また日程を改めてアイリーン様に会う機会を貰えるそうだ。

陛下の奥様とも仲良くすることが出来れば、社交界での発言力も違ってくる。

シリウスが困ったときに何か手助けできることがあるかもしれない…。

願ったりかなったりの提案だった。


ふふふ。最初はどうなる事かと思ったけど終わり良ければ総て良し!

こうして私の自由気ままなスローライフは着実に盤石なものになっていくのだった。


最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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