♥ クエスト 10 - 2 / トミュルを食い荒らす野生のボアを退治しろ!
其って……窃盗って言わないか?
完全に犯罪だよ……。
まぁ…セロとオレは人間じゃないから、人間の決めたルールを律儀に守る必要はない訳だけど……。
犯罪は良くない!!
マオ
「 トミュルの収穫が出来ないのが今年だけなら、別にいいのかな…。
だけどさ、来年からはどうするつもりなんだ? 」
セロフィート
「 トミュルの収穫を無事に出来る様にきちんと考えてます 」
マオ
「 へぇ……、以外だな。
どんな風に? 」
セロフィート
「 収穫前に野生のボアやミノタウロスがトミュルを掘り起せない様に私有地一帯に結界を張ります。
結界を張れば、ボアもミノタウロスも私有地の中へは入れません 」
マオ
「 へぇ、其なら安心だな。
依頼主には結界を張る事は伝えるんだろ? 」
セロフィート
「 伝える訳ないでしょう。
今年は1つもトミュルの収穫が出来ないのを忘れました?
収穫の出来ない原因をボアとミノタウロス避けの結界を張った所為にされたら、どうなると思います? 」
マオ
「 どうなるんだ? 」
セロフィート
「 冒険者ギルドを通して、依頼主から報酬額よりも多い損害賠償を要求され兼ねません 」
マオ
「 マジかーーー。
其なら黙ってるのも仕方無い……よな?
言わなくても来年はトミュルでウハウハだもんな? 」
抑だ、セロが私有地の山の土中に埋まってるトミュルを全部回収さえしなければ、何の問題もないんだ…。
セロは少しだけ残す──何て事をする訳ない。
だって、セロだからだ!!
セロフィート
「 巣穴は埋めました。
次の巣穴へ行きましょう 」
マオ
「 セぇロぉ〜〜〜。
オレ、1人でミノタウロスの相手なんかしたくないよ 」
セロフィート
「 何故です? 」
マオ
「『 何故です? 』じゃ、ないよ!!
オレに襲い掛かって来たミノタウロスはな、両目を血走らせながらギラギラさせて、汚い涎を垂らしてたんだぞ!!
そんでもって、下半身は丸出しだし、野太くて長くて固そうな凶器をビンビンのギンギンにして、凶器の先からドロドロした謎の液体をビュッビュッビュッビュッ飛び散らせながら、野太くて長くて固そうな凶器をブルンブルン激しく揺らして襲い掛かって来るんだ!!
凄く怖いし、臭いんだぞ!! 」
セロフィート
「 野生のミノタウロスは衣服を着たりしませんし、鎧を付けたりもしません。
抑、知性や理性を兼ね備えた人間以外は丸裸なのが一般的です。
気にしてはいけません 」
マオ
「 他人事だと思ってぇっ!!
セロは良いよな!
巣穴の前に立ってるだけなんだから!!
オレを手伝えよ! 」
セロフィート
「 ワタシが巣穴の前に立っているのは、山中を我が物顔で散策しているボアやミノタウロスが巣穴へ近付かない様にする為と、ボアやミノタウロスが巣穴から出て行くのを防ぐ為です。
ワタシにしか出来ません 」
マオ
「 そんなの魔法でしろよぉっ!!
何でオレばっかり汚れ役なんだよ!! 」
セロフィート
「 ははぁ…。
マオはワタシがミノタウロスから求愛されても構わないと言いますか。
そうですか… 」
マオ
「 …………其処迄は言ってないだろ… 」
セロフィート
「 “ ミノタウロスの相手をする ” とは、そう言う事です 」
マオ
「 どゆことだよ? 」
セロフィート
「 ワタシがミノタウロスの前に姿を出せば、忽ちミノタウロス達は不衛生で不潔な涎を垂らしながら、鼻息を荒くさせてワタシを掴まえ様と向かってきます。
野太くて長くて固そうな凶器とやらをワタシにグイグイと押し当てながら、グリグリと擦り付けて来るでしょう。
忽ちワタシは “ 凶器 ” とやらから出る臭い謎の液体まみれになるでしょう 」
マオ
「 ………………うへぇ… 」
セロフィート
「 マオはミノタウロスからメタメタに求愛され、辱しめられ、ベタベタに穢されたワタシを何時もの様に抱きしめてくれます? 」
──で、出来るもんかってんだ!!
少しだけ想像してみたけど、そんな姿のセロを見たいなんて思えないよ……。
マオ
「 ──分かったよ!!
ミノタウロスはオレが全部、1人で倒すよ!!
だから、セロは巣穴の前に立ってればいいよ… 」
セロフィート
「 有り難う、マオ。
此処は素直にマオの厚意に甘えるとしましょう 」
マオ
「 セロ… 」
セロが魔法で埋めた巣穴を後にして、次の巣穴を目指して歩き出す。
セロならミノタウロスの野太くて頑丈な腕も簡単にへし折れると思う。




