♥ クエスト 1‐1 / 森を抜け、山を越え、地底湖から “ 聖なる雫 ”を汲んで来い!
──*──*──*── 洞窟の中
──*──*──*── 地底湖の前
──うん、一瞬で着いちゃったな。
目的地の現場── 洞窟の中にある地底湖の前 ──にだ。
怪物がウヨウヨ出るらしい森を抜けた訳でもなく、命懸けで断崖絶壁の山道を歩いて山を越えする苦労した訳でもない。
宿泊室から便利な転移魔法で一瞬だよ。
セロとオレの前には水面がキラキラと光って綺麗な地底湖が何処迄も広がっている。
マオ
「 綺麗だなぁ……。
見てると心が洗われるみたいだよ! 」
セロフィート
「 そうです? 」
マオ
「 そうだよ!
洞窟の中って暗いから、地底湖のキラキラが反射して綺麗に見えるんじゃないのかな?
──セロ、入れ物は? 」
セロフィート
「 有ります。
頑張って汲み入れてください 」
そう言ったセロは、オレの前にドラム缶より大きな樽を1樽出した。
マオ
「 ……オレ1人で “ 聖なる雫 ” を汲むのか? 」
セロフィート
「 勿論です。
力仕事はマオの役目でしょう? 」
マオ
「 勝手にオレの役目にするなよ〜〜 」
セロフィート
「 さぁ、マオ。
此を使って汲んでください 」
セロから手渡されたのは、縄が結ばれたバケツサイズの桶だ。
地底湖の中へ投げ入れたら、自力で桶を汲み上げて、大樽の中に入れろ──って事かよ。
オレへの扱いが酷いっ!!
ま…まぁ、何時もの事だよ、こんなのはな!
セロが絶対に力仕事なんてしてくれないのは、分かりきっていた事じゃないか!
オレは手渡された桶を地底湖へ投げ入れて、大樽の中へ “ 聖なる雫 ” を汲む作業を粛々と続けた。
勿論、1人でだ・ぞ★
──*──*──*── 1時間後
──ふぅっ……。
大樽の中に入れた “ 聖なる雫 ” は半分以上は入ったかな?
オレが1人で一生懸命せっせっと “ 聖なる雫 ” を汲んでる中、オレの愛しいセロはと言えば趣味の読書に耽っている。
応援すらもしてくれないのかよっ!!
──桶を結んでいる縄を掴んで引き上げる。
其の途中で、ガッツン──と言う桶が何かにぶつかった様な嫌な音がした。
マオ
「 何だろう??
──あれ?!
桶が引っ掛かってる??
動かない!? 」
縄を力一杯引っ張るんだけど、桶は上がって来ない。
此のまま縄を引っ張り続けると縄が切れてしまいそうだ。
オレの力じゃ桶を引き上げられない。
こんな時は、セロに頼むしかない!
困った時のセロ頼みだ!!
マオ
「 ──セロ!
助けてよ!
桶が上がって来ないんだ。
何かに引っ掛かってるみたいで── 」
セロフィート
「 はいはい。
マオ、少し離れてください 」
マオ
「 うん。
頼むよ 」
読書を中断したセロは、オレから縄を受け取ると甚も簡単に桶を引っ張り上げてしまった。
マオ
「 めっちゃ力あるじゃんか 」
セロフィート
「 マオ、桶の中に何か入ってます 」
マオ
「 魚でも入ってるのか? 」
セロフィート
「 此の地底湖に生物は居ません。
見てみます? 」
マオ
「 うん。
魚じゃないなら何が入ってるんだ? 」
オレはセロから “ 聖なる雫 ” の入った桶を受けとると、中を見てみた。
マオ
「 ──う゛わぁ゛っ!! 」
オレは桶の中に入ってるのを見て、素で驚いてしまった!!
桶を投げてしまったから、大事な “ 聖なる雫 ” が地面に溢れてしまった。
溢れて台無しになってしまった “ 聖なる雫 ” の上と言うか──、地面の上には桶の中に入っていた “ 物 ” が落ちた。
“ 物 ” って言うのは、人の指だ。
白い指……。
誰の──って言うより、何で……どうして、地底湖の中に人の指が?!
マオ
「 ……セ、セロ…何で指が入ってたんだ??
地底湖って全部…… “ 聖なる雫 ” なんだよな??
若しかして…… 」
セロフィート
「 此処へ訪れた誰かが、誤って地底湖へ落ちてしまった──と言う線もあります 」