♥ 宿屋 3 / 食堂 2
マオ
「 チョウザメじゃないの?
じゃあ、何の卵なの?? 」
ウェイトレス
「 ホワイトキャビアはエスカルゴの卵ですよ 」
マオ
「 エスカルゴ??
エスカルゴって何?? 」
ウェイトレス
「 主にミングマイマイが食用として広く利用されてますね。
高級食材ですよ 」
マオ
「 ミングマイマイ?? 」
セロフィート
「 カタツムリですよ、マオ 」
マオ
「 へっ??
カタツムリ??
カタツムリって…卵を産むの?? 」
セロフィート
「 産むみたいですね。
ははぁ…。
エスカルゴの卵が使われてましたか 」
ウェイトレス
「 あっ…済みません!
普段は真珠の様な輝きを放つ貴重な高級食材のホワイトキャビアを使うんですけど、今回のソースには幻のホワイトキャビアが使用されてるんです 」
セロフィート
「 幻のホワイトキャビア…です? 」
ウェイトレス
「 そうなんです。
生息場所が断崖絶壁の岩場なので、入手困難な食材なんです 」
セロフィート
「 ははぁ…。
断崖絶壁の岩場ですか 」
ウェイトレス
「 キャビアや黄金イクラよりも高級品で、中々市場で流通しないので “ 幻 ” と呼ばれてるんです 」
マオ
「 そんなに珍しい卵が使われてたんだ? 」
セロフィート
「 幻のホワイトキャビアは料理長が購入されました? 」
ウェイトレス
「 いえ、デメリギョッチの卵と交換してもらったそうです。
何でもナメゼンの裏にビッシリと極上の霜蛞蝓の卵が付いていて── 」
マオ
「 は??
ナメゼン??
霜蛞蝓?? 」
……何か、聞き覚えのある名前が飛び交ってるんだけど!?
ウェイトレス
「 マオ君はナメゼンと霜蛞蝓を知らないのね?
料理人にしか認識されてないから仕方無いかも。
霜蛞蝓は断崖絶壁の岩場に生息している蛞蝓なの。
霜蛞蝓の巣穴から生えている薇は、霜蛞蝓の養分を栄養にして生えてるから蛞蝓薇って呼ばれているの。
ナメゼンは通称名よ。
ナメゼンの裏には霜蛞蝓の雄が卵を産み付けるの。
霜蛞蝓の子供が孵化するのは、雌の産んだ卵だから、雄の霜蛞蝓の卵からは蛞蝓は生まれないの。
ナメゼンの裏に産み付けられた無精卵は、とぉ〜〜〜〜っても美味なの♪ 」
セロフィート
「 ははぁ…。
ナメゼンは食材には使われません? 」
ウェイトレス
「 勿論使われました。
マオ君が注文した香草と山菜のテリームに使用されましたね。
後は塩蒸しされたクジェンの中に詰めた具にも使われてました。
山菜と呼ばれてますけど、薬剤の方でも使われるそうです 」
セロフィート
「 マオ、聞けて良かったですね 」
マオ
「 良くないわ!
話に出て来たナメゼンって、オレが苦労して素手で採取したヤツじゃないかよ!!
最悪だ〜〜〜っ!!!!
オレが採取したナメゼンが調理されて、オレの口に入ったなんてぇ゛〜〜〜、悪夢じゃないかよ!!!!
何の嫌がらせだよ!!
あんまり過ぎるよ!
何が幻のホワイトキャビアだよっ!!
何が真珠みたいな貴重な高級食材だよっ!!
蛞蝓の卵なんて食べたくなかったわっ!! 」
セロフィート
「 何杯もお代わりしといて言いますか 」
マオ
「 知らなかったんだから仕方無いだろ!
蛞蝓の卵が使われてるって事が分かってたら、口にも入れなかったんだからなっ!! 」
セロフィート
「 そうです? 」
マオ
「 そうだよ!
そう言えば……、セロは料理長のオススメソースに燻製肉を付けて食べてなかった…よな? 」
セロフィート
「 はて…?
そうでした? 」
マオ
「 態とらしい惚け方すんな!!
初めから知ってたんだろ!
オススメソースの中に入ってる粒々が蛞蝓の卵だった事を! 」
セロフィート
「 まさか。
知る訳ないです 」
マオ
「 嘘吐くなよ!! 」
セロフィート
「 嘘なんて吐いてません。
ウェイトレスさんに教えてもらう迄、ワタシも知りませんでした 」
マオ
「 本当かよ…… 」
セロフィート
「 高級食材ですし、身体に害がある訳ではないです。
貴重な体験を出来たと思ってはどうです? 」
マオ
「 他人事だと思ってぇ〜〜〜!! 」
◎ 高級食材が手に入る宿屋って凄いですよね。
料理長は何者なのでしょうか??




