♥ 宿屋街 2 / 宿屋 2 / 食堂 2
セロから教わっている気配殺しをしながら、椅子から腰を浮かせて立ち上がったオレは、そっとテーブルから離れた。
既に食堂を出ているセロは、受け付けカウンターで今晩の夕食代を宿主へ支払っている最中だ。
本当ならセロの傍へ行きたい所なんだけど……、いかせん今は気配殺しを発動中の身な訳で──。
セロの傍へ行きたい気持ちをグッグッと堪えて、オレは食堂と受け付けカウンターを繋ぐ廊下にある1階と2階を繋ぐ階段を上がる事にした。
食堂を出る為には、何が原因なのか分からないけど、揉めている宿泊客の隣を横切らないといけない。
セロみたいに自身の存在を完璧に消して、難関を突破しないといけないんだ。
オレに出来るだろうか。
気配読みと殺気読みなら、セロから合格点を貰える程には出来る様はなったんだけど……。
気配殺しは、簡単そうに思えて此がなかなか難しい。
殺気殺しなんて、ほぼ使う事なんてない。
殺気を放つ程の事自体がオレの身に起きないからだ。
起きないからと言って、覚えなくてもいい訳じゃないんだけど……。
兎に角だ、全集中して階段を上がって、宿泊室に入らないと!!
オレは緊張しながら、階段を目指して1歩を踏み出した。