マオ
「 『 調べる 』って、どうやって調べる気だよ? 」
セロフィート
「 ワタシは “ 吟遊大詩人 ” です。
簡単に分かります。
──マオ、指を包んだ布を貸してください 」
マオ
「 どうするんだ? 」
セロフィート
「 指を返します。
マオが桶を引っ掛けたのは、此の子の氷の様です 」
そう言ったセロは、1つの氷を地面に移動させた。
多分、魔法を使ったんだろう。
氷漬けになっているのは、10歳にも満たない子供だ。
金色の糸で立派な刺繍が入っている白い装束を着ている。
何か特別な儀式の為に着る様な装束だ。
身なりも確りしているのを見ると、何処かの裕福な子供なのかな??
オレが1人でそんな事を考えていると、子供が入っていた筈の氷が溶けていた。
セロはシートの上に子供を仰向けで寝かせている。
マオ
「 ──セロ、其の子は息をしてるのか?? 」
セロフィート
「 亡くなってます。
乱暴で荒い氷魔法で氷漬けにされたのでしょう。
心臓は停止してます。
息を吹き返す事もないです 」
マオ
「 …………そんな…。
未だ小さいのに……。
乱暴で荒い氷魔法で氷漬けにされたならさ、何で辛そうな顔をしてないんだ?
怖がってもないし。
まるで眠ってるみたいだよ 」
セロフィート
「 睡眠魔法で眠らされている間に氷漬けにされたのでしょう。
眠らせてしまえば、怖がられる事も騒がれる事もなく、楽に作業を進める事が出来ます。
睡眠魔法を掛ける前に予め睡眠薬を混入させた飲食物を与えられていると、睡眠魔法も掛かり易くなります。
深い眠りに落ちる為、子供ならば簡単には目覚めません。
生き埋めにしようと、火葬にしようと目覚めません 」
マオ
「 そんなに?!
……眠らせて、氷漬けにした沢山の子供達をどうして地底湖の中に沈めたりしたんだろう…??
森を抜けて、山を越えた、洞窟の奥にある地底湖だよ!
こんな酷い事を平気でするなんて異常過ぎるよ!! 」
セロフィート
「 地位,権力,財力,名声に取り憑かれてしまった彼等は十分異常です 」
マオ
「 …………こんな酷い事をする人間が≪ ジェジロエンダ大陸 ≫にも居るんだな… 」
セロフィート
「 何処の大陸にも居ます。
…………成る程。
氷漬けにされた子供達は全員孤児の様です 」
マオ
「 孤児??
どうして孤児がこんな目に…… 」
セロフィート
「 〈 大陸りく仰こう神しん神しんジェジロエンダ 〉の祝しゅく福ふくを与あたえられた子こ供どもとして集あつめられた様ようです 」
マオ
「 素そ質しつ持もちって事ことか? 」
セロフィート
「 いいえ。
全ぜん員いん〈 ノマ 〉です 」
マオ
「 〈 ノマ 〉なのか?!
〈 ノマ 〉なのに……祝しゅく福ふくを与あたえられた子こ供ども達たちだって嘘うそを吐ついて集あつめられたってのか??
何なんの為ために…… 」
セロフィート
「 聖せい水すいを作つくり、高たか値ねで販はん売ばいし、巨きょ万まんの富とみを得える為ために彼かれ等らは子こ供ども達たちを利り用ようしました 」
マオ
「 …………聖せい水すいの為ために……。
私し利り私し欲よくの為ために…此これだけの子こ供ども達たちを犠ぎ牲せいにするなんて…… 」
セロフィート
「 此この地ち底てい湖こは、氷こおりが溶とけた雫しずくが溜たまって出で来きたのでしょう。
何なん十じゅう年ねんも氷こおりが溶とけないのは、魔ま法ほうマジックで定てい期き的てきに凍こおらせて来きたからでしょう 」
マオ
「 …………定てい期き的てきに?? 」
セロフィート
「 そうです。
此この洞どう窟くつには隠かくし通つう路ろがあります 」
マオ
「 隠かくし通つう路ろ??
何なんで洞どう窟くつに隠かくし通つう路ろがあるんだよ? 」