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幕間 パトロール

 シンジーク中央広場。

 アミとコトリンはいつものようにパトロールをしていた。


「コトリン、今のところ異常は無さそう?」


 アミの問いかけに、コトリンはこくりと頷く。


「ええ。特に不審なプレイヤーはいないわね」


 その時、女の子のプレイヤー二人が目の前を横切った。


「待ってよエリー!」

「ごめんごめん。カミーリアのペースに合わせるの難しいんだよね」


 すたすたと歩く女の子を、もう一人が息を切らしながら必死に追いかけている。

 先を行くのがエリーで、追いかけるのがカミーリアという名前のようだ。


「それにしてもさ。カミーリアって呼ばれてる子、かなり足遅くない?」

「そうね。足は遅いわね」


 アミの言葉に、コトリンはあっさりとした返事を返す。

 ただ、足の遅さを疑問に感じたアミは、しばらく様子を眺めることにした。


「はぁ、はぁ……。もう、置いてかないでよ〜。私だけじゃクエストなんて無理だもん」

「悪かったって。何ならおぶって行こっか? それじゃあ何時間かかるか分からないし」

「いいの!? やった〜!」


 カミーリアは両手を上げて喜び、エリーの背中に跳びつく。


「やっぱり、さすがにあの子足遅すぎだよ。コトリン、私ちょっと職質かけてくるね」

「…………」


 アミがレーザーガンを手にしながらエリーとカミーリアの元へ向かう。

 コトリンは何も言わず黙って見つめている。


「すみません、警備課です。ちょっといいかな?」

「新人さんだ。はい、いいですよ!」


 アミが声を掛けると、カミーリアはエリーの背中から降りて元気良く答えた。

 なぜ新人と気付いたのだろうか?

 ますますカミーリアを怪しく思うアミ。


「過去のログを調べさせてもらうね?」


 アミがレーザーガンをカミーリアに向ける。


『当該アカウントの、ログの検索を開始します』


「いやぁ、やっぱり私おかしいかなぁ?」

「おかしいに決まってるでしょ? いい加減ステ振り考え直したら?」


 レーザーガンを向けられている間も、カミーリアはエリーと平然と会話を続けている。

 それも笑顔で。

 アミはどことない恐怖を覚える。


 しばらくして、レーザーガンから自動音声が流れる。


『検索の結果、不正行為は確認されませんでした。措置の必要性を感じる場合、手動コマンドでモード切り替えを行ってください。なお、そのログはサーバーに送信されます』


「あれ? 何もしてないの?」


 驚くアミに、カミーリアは頬をぽりぽりと掻きながら口を開く。


「いつも疑われちゃうんですけど、何もしてないんですよね〜」

「じゃあ何でそんなに足が遅いの?」


 アミが首を傾げると、隣のエリーが答えた。


「カミーリアは怖がりで、ステータスを防御に極振りしてるんですよ」

「そんな極端な……」


 目をパチクリさせるアミ。


「敏捷にも振らないとなぁ、とは思ってるんですけどね〜」


 カミーリアは「えへへ〜」と照れ笑いを浮かべる。


「まあ、そういうことなんで。すみませんね、お時間取らせちゃって」


 エリーに謝られ、アミは慌ててかぶりを振る。


「ううん、こっちこそ邪魔してごめんね。引き続きクエスト頑張って」

「ありがとうございます!」


 満面の笑みを見せるカミーリア。

 普通に良い子たちだったではないか。


「アミ、どうだったの?」


 コトリンが広場の端から問いかけてくる。

 アミはコトリンに駆け寄り、今の出来事を報告する。


「何でもなかった。ステータスの振り方がおかしかっただけで、不正はゼロ」


 するとコトリンは、くすくすと笑いだした。


「えっ、何? 何で笑うの?」


 戸惑うアミ。

 コトリンは「ごめんなさい」と言いながらも笑いが止まらない。

 十秒ほどして、ようやく落ち着いたコトリンはこう言った。


「カミーリアはこのゲームの中では有名人なのよ。もはやラスボスとまで言われるくらいにはね」

「あっ、そうだったんだ。でも、まだ中学生とか高校生くらいだよね?」

「多分そうね。でも、防御が硬い上に特殊スキルが強力すぎて、誰も倒せないのよ。倒せるとするならレーザーガンのアカウントデリートくらいかしら」

「それ反則でしょ」


 コトリンの言葉に、アミはツッコミを入れる。


「ふふ。とにかく、アミにはもっと不正を見極める訓練が必要ね」

「そうだね。私、コトリンに認めてもらえるようにもっと頑張るよ」

「別に認めてない訳じゃないのだけど。まあ、刑事として頑張りなさい」


 気を引き締めるアミの肩を、コトリンはぽんと叩いた。

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