序章、心の葛藤
苦しい、いつになったら、私はこの苦しみから解放されるのだろう。
気づいた時には既に始まっていた。悲しみ、苦しみ、自分に対しての失望、やり切れない思い、恐怖、そして絶望。年々、酷くなる。まるで、濁流に呑みこまれて、溺れている様だ。私ももう、今年で十五となる。もう、あと三年しかないというのに。期限までのこの三年は、闇が益々強くなるというのに。私にしか出来ない、私に課せられた重要な役目を果たさなければならないのに。それなのに、いつまでたっても、心の闇を克服することができない。それどころか、益々、酷くなる。もう、いつ呑みこまれてもおかしくない。私の心は、もう限界に達しようとしている。
私の魔力は余りにも強大で、人の範疇を超えている。私の体は強大な魔力に耐えうるものだ。私の体は、不可侵なのだ。私は生まれながらに、運命の子としての役目を果たすために、何者にも傷つけられない、殺せない体を与えられた。しかし、私の心は皮肉にも、余りにも弱い。私の心は、余りにも脆弱でその魔力を御しきれない。それどころか、今にも飲み込まれそうな程なのだ。そして、誰も、私を、私の魔力を抑えることはできない。私は死ぬことさえ許されない。私は自分でさえも自分を殺すことは不可能なのだ。私の自我が失われた瞬間に、私の魔力は暴走して、世界を呑みこみ、この世界は無くなるのだから。
私は何故、このような弱い心を持ってしまったのか?何故、私でなければならなかったのか?
誰にも、私の苦しみ、葛藤は、理解できない。私はいつも孤独だった。大勢の人に、囲まれていても、愛情や敬意を注がれていても、いつも、私の心は孤独だった。できることなら、誰かに助けを求めたい。この苦しみから逃れたい。誰かに代わってほしい。でも、私の望みが叶う事など有り得ないのだから。
私に与えられた選択肢は二つだけ。
自分の心の闇を克服して、闇と魔物を打ち砕きこの世界を守り抜くか、闇に呑みこまれてこの世界を無に帰すか、
そのふたつだけ。
私が選ぶべき道は分かっている。でも、それが私に出来るのか、と問われれば、私は否、と答えるしかない。このままでは、この世界は私と共に破滅へと向かう。
そして、私は一人。たった一人。まるで、この世界には私しかいないかのように。