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CHAPTER 2-14

「ワールドさん達の仲間に僕をですか?」

「そうだ、是非とも君をヴィジランズに迎えたい!」


 自分の仲間になってほしい、ワールドから唐突にそんな事を聞かされた千景は面食らったように驚いてオウム返しで尋ねた。どうも演技過剰なノリだから冗談かと思ったがどうも彼は本気な様子であり、下手な返答はマズいので顎に手を置きながら深く考えていく。

 ワールドの仲間になるということは世間一般にテロリストと呼ばれてる連中の中に入ることを意味し、一方で情報収集に長けているからか今まで以上に特殊ガレリアの謎へ迫れる事が出来た。しかし何故その相手が自分なのだろう、誘うならイーサンの方が実力があって気質も似ていると千景には思える。


「でもどうして僕なんですか? イーサンの方があなた達に近いと思いますけど」

「あの奇天烈飛行バカを仲間にしろと? ハハハッ、千景君はなかなか手厳しいな。いや済まない、君の友人を悪く言うつもりはないのだが、イーサン・バートレットはイレギュラー要素の塊のような男だ。制御なぞ誰にも出来ない、なら自由に動かして思う存分場をかき回してもらいたいのさ。第一、彼が私の誘いに乗ると思うかい?」

「ないですね。仮に自由に飛んでいいって言っても、『それはオレが決めることだ!』って言って突っぱねそうですし」

「だろう、全く面倒くさいったらありゃしない。その点千景君は外部より来た者だからこそ中立的視点に立っていて、何より人の話をしっかり聞いてくれる。だからこそ仲間になってほしいんだ」


 あんなのは勘弁してほしいとワールドは肩をすくめて千景も考えてみればイーサンはただ好きに空を飛んでいただけで、命令は聞かないしプライベーティアとして依頼を受ける時に多少なんとか融通を利かす程度だから仲間にするメリットはないと断定できた。

 何かワールドが欲しい人材は戦闘力でなく中立的視点から大局を見れる人物で地球からやってきた千景はまさに適任といえよう。それを感じ取ってしばしの黙考の後に答えを出した。


「誘ってくれるのは嬉しいですけど、僕にはデアデビルの仲間がいます。そのみんなで一緒に進んでいきたいんです」

「……そうか。なら、この話は忘れてくれ。また共闘する機会はいくらでもあるだろうし、敵対することも有り得るがそれも一興だろう」


 千景の答えを聞いたワールドをどこか満足げに頷いて背を向けるとまた進み始める。そこからは一切勧誘の話は出さずにそれでいてヴィジランズ活動について滔々と語り続け、ああ言ってもまだ未練が有るんじゃないかと感じつつ2人はスターファイターが座礁しているポイントまで戻ってきた。






「うっ…………、ハツ!? アズライトさんは!?」


 視界がグラグラと揺れる中で頭を抑えながらニコルはなんとか顔を上げた。レーヴァテインと結晶花の強烈なエネルギーのぶつかり合いは周囲を丸ごと破壊するほどの余波を生み出して、結晶で輝いていた空間は見る影もなかった。

 それほどの破壊的事象の中心にいたレーヴァティンとアズライトが無事なのか爆心地に目を向けると、そこには結晶花の残骸と思わしき結晶の山が残っているがレーヴァテインの姿は見えない。どこにいるのかと駆動系が悲鳴を上げてるカレットヴルフを進ませて近づいてくと、結晶の山が崩れ始めてその中心から赤いストライダーが出てきた。


「ふぅー、なんとか助かったわ。ニコル、そっちも無事でなによりよ」

「もう心臓に悪かったですよ本当に……。でもコアを破壊するなら早くしたほうが」

「ゲッ、あれだけぶっ壊されてもまだ再生できるのコイツらは!」


 お互いの無事を確認してアズライトは安堵するが周囲に散らばる結晶の欠片は磁石のようにくっついて黒ずんだタールも這うように一箇所へ集まっており、ぶつかりあった結晶花の残骸は流石に動いてはいないが早くも別の花弁が咲こうとしていることにアズライトは思わず毒づく。

 先へ進む道を邪魔するものはいないのでここに長居する必要はないと、ストライダーを直立(スタンド)モードから飛行(フライト)モードへ変形させて奥の方へ一気に飛び込んだ。コアへと通じる通路はこれまでと違って広めな六角形をしているからスピードを出していくことが苦でなく、すぐさま広い空間へ入っていく。


「あれがコア……。不気味だ」

「はやく壊しちゃいましょう。私は上を攻撃するから、下の方よろしくね」


 ストライダーが余裕で一周回れるほど広い球体状の空間に天井と床から伸びる無数の蔦に支えられた赤黒い球体が中心に鎮座していた。まさにコアと言える存在感を放つがその大きさはストライダーをゆうに上回る直径は20メートルを超えており、規則的に発光を繰り返してるのが心臓の鼓動にも似ていて余計に不気味である。

 しかしコアへの被害を恐れてか迎撃装置の類はなく血管のような蔦やコアそのもの防御力で守っているのだと判断したアズライトは上部への集中攻撃を狙い、ニコルも従って下方へ照準を合わせた。


「了解。全火器を目標に、照準よし!」

「こちらも完了っと。それじゃあ一斉に、ファイヤー!」


 アズライトの号令とともに2機のストライダーから正面に備え付けられた火砲が一斉に唸りを上げて光弾を撃ち始め、展開したウェポンベイからも大量のミサイルが吐き出されていく。その全てがガレリアプラットフォームのコアユニットへ向かっていき、オルゴンの淡い燐光が無数に炸裂して爆音が轟いた。

 爆発の規模の割に破壊できたのは絡んでいる蔦の一部だけでコア本体は傷一つ付いておらず、ミサイル攻撃は通用しないと判断した2人は即座にエネルギーのチャージを開始する。機体の許容限界ギリギリまでオルゴンエネルギーを圧縮されてストライダーの前方より光の渦が一気に放たれ、一直線に伸びる光芒はコアとぶつかり合った。

 しばし拮抗していたコアであったが途切れることなく照射され続けるチャージレーザーに次第に押されていき、ついに耐えきれなくなってか表面にヒビが入っていく。チャージされたオルゴンの残量は照射を継続させていくにはまだ十分でヒビが広がるスピードも次第に速くなり、ダメ押しとばかりに全てのエネルギーを一気に放出させてコアは真ん中から2つに分かれるとそのまま粉々になっていった。


「やったわ! これでプラットフォームはバラバラになるはずよ」

「だといいですけど、まずは脱出ですね。ここにいると巻き込まれてしまいます」

「そうね、なら長居は無用!」


 コアの破壊と同時に内装にもヒビが入って崩壊が始まっていき、何よりコアより漏れ出すエネルギー量は少なくともこの場所から結晶花がいたエリアまでを吹き飛ばすには十分すぎるほどの破壊力を有している。巻き込まれない為とプラットフォーム崩壊時は外側に近い方が脱出しやすいということで踵を返すようにUターンするともと来た道を引き返していった。

 後方より迫るエネルギー波を感じながら六角形の通路をほぼ全速で突っ切って小さな結晶花がいくつも花弁を咲かせた鏡張りのエリアも俄然無視して飛び去る。狭く曲がりくねった道を飛んでいるところでようやく後方からのエネルギー反応が消失しており、代わりに通路がひび割れを繰り返して広がりながらバラバラになっていくのが目に見えていた。


「ふぅー、なんとか逃げ切れたわね。これでプラットフォームも分解していけば他の皆も脱出できるわねきっと」

「色々無茶しましたけどね……。もうこんなのは勘弁してほしいですよアズライトさん」






「ハハハッ! どうしたどうしたガレリアさんよぉ、まだ追いつけねえのか!」

『あいつ、まだ追いかけっこを楽しんでいやがるぜ……』


 プラットフォームの表面にて湧き出る空戦型ガレリアとイーサンは追いかけっこを続けており、ネクサスの後方にいるガレリアの数は一個大隊に上っているがその全ては追いつくどころか一発も当てられずにいる。もはやスタンピードに追われてるという状態なのに響き渡る高笑いに、数がぐっと減ったガレリアと戦うランナー達の誰かもが呆れ果てていた。

 そんな事はお構いなしに3つ目の射出口に対艦ミサイルをタッチダウンさせて盛大に爆炎を上げさせていき、そのたびに増えるアローヘッドやスカヴェンジャーの大群をあざ笑うかのごとく引き離しながら狭いトレンチの中へ突っ込む。前方から味方への誤射を気にしない―そもそもガレリア同士の攻撃はダメージを受けないらしい―対空砲火が飛んでくるのだが、今回は濃密な弾幕が降ることなく代わりに1機がギリギリ通れそうな溝の隙間が次第に開かれていくのだった。


「なんだなんだ、プラットフォームがぶっ壊れていく?」

『コアが破壊されたんだ! どうやら中の奴らがやってくれたらしい。よしっ一気に掃討するぞ、お前も遊んでないで突っ込んでけ!』

「了解っと。オレを暴れさせて後悔すんじゃねえぞ!」


 本拠であるガレリアプラットフォームが機能停止して大気中のクラウド濃度が下がったことで空戦型の動きは見違えるほど鈍くなり、空中で超信地旋回の如く180度ターンするネクサスが突っ込んできても反応できずにいる。そんな漂うだけの的を見逃すことなどイーサンにはあり得ず、すれ違いざまにレーザー機銃やマイクロミサイルを的確に当てていき文字通り鎧袖一触に次々と撃ち落としていった。

 大隊規模の編隊をものの1分ほどで全てを破壊し尽くしておまけとして機首を展開させてチャージレーザーをプラットフォームに向けてぶっ放し、崩壊が始まっていた表面はたやすく撃ち抜くとそのまま貫通して下方の空へと消えていく。


『おい、気を付けろ。あそこには味方がいるんだから誤射したら大事だぞ』

「大丈夫っすよ、オレには見えますから。ほら、みんな出てきた」

『まったくバカなのか抜け目ないのかわからんな……』

「誰だオレはバカって言った奴は! そこは超天才イーサン・バートレット様と呼ぶとこだろッ!!」


 イーサンが撃ち抜いた風穴は崩壊とともに広がって大きくなり、そこから出てくる光点が確認できた。チャージレーザーの一閃は手っ取り早く脱出路を作るのと高エネルギーを中にいる味方が探知して誘導する目的もあった。それをパッと思いつく機転の速さには舌を巻くが、どうにも言動がいい加減呆けていて判断に困る。

 これまで覆っていたガレリアの分厚い靄も取り払われて外部より指揮を行っていた巡航艦が近づきながら部隊へ指示を出していき、揚陸艦ゼノンが出てきた突入部隊を迎えてストライダーはプラットフォームの警戒と突入部隊回収の二手に分かれてイーサンは警戒組に組み込まれた。


「さてとこれで一段落かー。もっと飛んでいたかったぜ、根性ないぜガレリア共!」

『アレだけやってまだ足りないのか、このバカは……。―異常反応だと!?』

「なんじゃありゃ、ガレリアの残骸か!」


 分解を繰り返すプラットフォームとそこから抜け出すストライダーをなんとかなし眺めながらイーサンはどこか消化不良な心持ちで、それをたまたまエレメントを組んだランナーが咎める。その時センサーに異常を知らせるアラームが鳴り響き、同時にプラットフォームの崩れた隙間から黒い靄が漏れ出していくのが見えた。

 内部に残っていたガレリアの残滓と思われるがその数はなかなかの数であり、外に出てきたが逃げるわけでなく一箇所に集まって圧縮されるように小さく濃密な球体へとなっていく。弱点であるオルゴンに満ちた空域から離れず戦おうとするガレリアなど誰もが予想していなかったが、イーサンだけはその気概だけを認めて最大戦速で突っ込んだ。


「その気概よしッ! 真正面からぶっ飛ばしてやるぜ!!

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