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CHAPTER 2-9

「おはようメイズ、今日もよろしくね」

『おはようございます千景さん。でも今日は調査活動があるので座学はお休みですよ?』

「うん、大雑把なところはクラリッサさんから聞いてるけど、細かい部分を待機時間のうちに知っておこうと思ってね」

『そうでしたか! ならこの不肖メイズ、バッチリ教えちゃいます!』


 席につくと同時にメイズが立体映像として姿を見せ、千景が予習したいという心掛けに応えて立体映像をたくさん繰り出していく。発端は昨日の夜に着た通信より『ガレリア占拠構造体への強行偵察兼実態調査』へ参加してほしいとクラリッサから要請されたからで、アズライトが主に動いて千景とイーサンはそのバックアップになるが全体像を把握して起きたかったからだ。

 かつて空中大陸の周囲に多くの空中プラットフォームがいくつも浮かんでいて土地不足の解決策として大いに利用されていたが、10年前の大侵攻“”によってその殆どがガレリアに飲み込まれて膨大な人命と共に喪失してしまったのである。そして一部のプラットフォームはガレリアと同化して今でも空中を彷徨っており、そこへンナーを投入して内部を調べるというのが強行偵察と実態調査の趣旨だ。

 ガレリアの素の状態である霧状のクラウドとプラットフォームが合致して安定した状態に保たれているのか外部から攻撃されても失われた部分を再生する以上の事はしないのだが、侵攻拠点に使われている可能性もあるのでガレリアの学術調査も行いつつ危険性を調べて破壊するか静観または監視に留めるのか決めていった。


『まー大抵の場合はある程度の調査を行ったら破壊する事が殆どですね。ほぼ休止している状態といえどガレリアですから』

「そうなんだ。でも中に入るのは危なそうだし、外からの攻撃で壊せないの?」

『ええ、外部から破壊しようとなると艦隊規模の火力を集中させるか、大量破壊兵器となるディストラクターが必要になりますね』

「ディストラクター?」


 不穏な単語と聞き慣れない言葉に千景はオウム返しのように聞き返す。ディストラクターとは限界まで収束したオルゴンを一気に解放する事によって効果範囲内の一切を破壊する膨大なエネルギーを発生させる大量破壊兵器であり、オルゴンが原動力ということで特にガレリアへの効果は絶大だが大きすぎる破壊力と起動のために周囲のオルゴンを根こそぎ吸い取ってしまう欠点があった。なのでオルゴン領域内では何重にも及ぶ使用制限がかけられ、領域外での仕様は制限なしだが動力源として大量のオルゴン結晶を必要としている。

 大量破壊兵器はおいそれと使うことなど出来るはずもなぃ、破壊のために艦隊規模の出撃を毎回繰り返すわけにもいかず、内部からの破壊が効率的とは言えないが穏便に済む方法だった。なぜならここまで巨大になったガレリアは内部にコアと呼ばれる部位を持っていて、それを破壊されると巨体を維持できなくなってバラバラに分解していく特性があった。


『コアを破壊したところで完全に倒せませんが、細かくなるのでオルゴンでの相殺が可能になるのでストライダーや戦艦で各個撃破していくのです!』

「コアの破壊か。今までストライダーと同じくらいの大きさのガレリアとしか戦ったことないから、大型ガレリアには弱点が出てくるんだね」

『巨大ゆえの弊害というものですね。ただアモルファスとかいう特殊ガレリアは弱点もないし霧状になって動けるとかなんなんですかー! あんなのチートですよチート!』

「わ、わかったから落ち着いてよ……」


 小型中型ガレリアはこれといった弱点は持たない代わりにオルゴン兵装により外部から倒すことが可能で、大型ガレリアは生半可なオルゴン兵装では太刀打ちできないがコアという明確な弱点が存在している。なのでストライダーやランナー達で対応は可能であるが、アモルファスなどの特殊ガレリアに関しては霧状の状態でこちらの攻撃を受け流しつつ一方的に攻撃してくるのだから反則のようなものだ。

 声を荒げたメイズであるが咳払い一つしながら気を取り直していき、どこまでも人間臭いAIだなと千景には思える。ちょうどタイマーが鳴って出撃が迫っている事を示し、待機時間を利用した座学はここでお開きとなった。


「今日はありがとう、メイズ。それじゃあいってくるよ」

『ええ、千景さんもご武運を!』






「アカデミーからもランナーが出てるのね。学生と正規軍とプライベーティアがごちゃ混ぜで歩調は合わせられるのかしら?」


 ロッカールームにてアズライトは着ていた服を無造作に脱ぎ捨てながらケースに入っている戦闘服へ着替えているのだが、まず下着まで全部脱ぐ必要があるので一旦裸にならなければいけないのだが幸いロッカールームには誰もいないので、気にすることなくスリットが入って色々見え過ぎなレオタードを着込む。グローブとブーツを手足に嵌めてからメカニカルなチョーカを首に巻いて、そこに埋め込まれた青いクリスタル状のヴィムを押すとスリットなどの肌が露出してる部分を白のインナースーツが包み込んで装着完了だ。

 現在アカデミーを離れてガレリアと化した空中プラットフォームへの強行偵察任務として向かう途上で、この作戦のために正規軍から艦艇型コンバット・リグの2隻が参加していてアズライトを始めとした突入チームはそのうちの強襲揚陸艦に乗り込んでいる。先を進む巡航艦には対空護衛を行う直掩機としてストライダーがついており、こちらも正規軍やアカデミーにプライベーティアのランナーが集まっていてイーサンと千景もそこにいるはずだ。

 ここまでの大所帯で異なる組織が集まっているとなると指揮系統のが纏められているか心配になるが、今回はそういった大規模作戦の予行練習という側面があるという。実戦前に実際に動かして問題点を浮き彫りにさせておく必要があって、危険性の低いガレリアプラットフォームは格好の標的だ。


「ま、難しい話は上の人らに任せて、下っ端は任務遂行に集中しますか。作戦内容はっと――なんだか視線を感じるわ……」


 戦闘服へ着替え終えたアズライトはロッカールームを出てレーヴァテインを駐機してある格納庫へ向かいながら、作戦の内容をヴィムで確認していく。と言っても巡航艦とそれに付随する無人機と有翼型ストライダーが対空警戒を行い、揚陸艦が接岸したら可変型ストライダーがスタンドモードで直接揚陸してコアを目指すのだ。ただストライダーでは進入できない部分もあるかもしれないので万が一生身でも戦える準備も進められ、アズライトはそういった状況に対応する即応班に振り分けられている。

 ホロディスプレイを見ながらも作戦の為に多くの人員が集まっているからか混雑気味な通路にてぶつからなよう進んでいくのだが、道すがらすれ違う人達は一様にアズライトを目で追っている事に気付いた。どこか場違いのような姿をしてるのだろうかと自身を軽く見回しても何も変哲のないと思っているのだが、実際のところアズライトはアカデミーの学生でも上位9人である“ヴァルキュリア”の称号を持つ凄腕として名が知られて容姿やスタイルもいいのだから注目されている。

 その事を理解していないのは当の本人だけで、少し疑問を浮かべながらもアズライトはヴィムの画面を仕舞うと格納庫に置かれた愛機のもとへ急ぐのだった。






『こちら巡航艦『ザンザス』、もうすぐ作戦領域に入る。チームデアデビル問題ないか?』

「こちらデアデビル1問題なし。飛行も至って順調さ」

「こちらデアデビル2同じく問題ありません。いつでもいけます」


 スターファイターとネクサスが並んで蒼穹を飛んでいき、その周囲には十数機のストライダーが編隊を組んでいて後方には楕円形の船体に下部からエンジンブロックを伸ばした巡航艦が続いている。プラットフォームへ乗り込む前に制空権の確保ということでザンザスを旗艦とした航空部隊が後続の揚陸部隊への露払いを行うべく戦列を並べて、千景達デアデビルは先鋒の右翼を担っていた。

 ザンザスの航空管制官より先鋒を担うストライダー部隊へ作戦空域に入る事を伝え、肉眼でも目標を捉えられる。まるで翼を広げた鳥のように横に広がった形状はゲネシスの空中プラットフォームとしては標準的なものであり、ガレリアの色合いである漆黒からまるで巨大なカラスに見えた。


「どうやら着陸の前に一仕事だ! お友達がやって来たぞ!」

『作戦空域内にガレリアを確認! 相手は小型タイプだけだ、全機油断せずかかれ!』

「ちょっと、イーサン待って!? デアデビル、エンゲージします!」


 オルゴン領域内といえどガレリアの前線基地としての役目を担っているからか周辺にはヴァルチャーやアローヘッドが飛んではいるが、その数は10機ほどで艦艇規模の大型タイプもいないことからそこまでの重要拠点ではないようである。こちらへ向かってくる姿を確認してイーサンは編隊を離れて突撃していき、千景は慌てて戦闘開始を告げながらその後ろについていった。

 正面から突っ込んできたアローヘッドをネクサスがすれ違いざまに撃ち落としてガレリアの編隊からレーザーの雨が飛んでくる中を掻い潜んでいき、前衛のストライダーも編隊を崩して散開して2機同士の分隊エレメントへ組み直しながらガレリアを駆逐していく。


「すごい、これがプロか……」

「何言ってんだ、オレ達だってプロだぜ? なんてたって経験値も負けないぞ!」

「それはイーサンが規格外すぎるだけだよ……」


 正規軍やプライベーティアとして腕を鳴らすランナー達にとってこの数は敵ではなく、ガレリアの編隊は瞬く間に落とされて制空権を取ることが出来た。その中でアカデミーのストライダーは後方で巡航艦の周囲に付いていたのでデアデビルが唯一の戦闘参加で、イーサンが単独で2機を落として協同で千景も1機落としている。

 学生ながら飛行時間や戦闘経験など正規軍や一流プライベーティアのランナーに劣らないというイーサンの方がおかしいものだと称賛と呆れが混じった感想を千景は漏らし、イーサンはそんな事はお構いなくいつの間にか最前線を突き進んでいた。


『各機迅速の対応に感謝する。だがデアデビル1、腕前は認めるがスタンドプレイに走るな、今回はチーム戦だわかったな? それでは揚陸の為に砲撃を開始する、射線上に入らないよう留意しろ』

「へいへい了解ですよー。さて船の方が主砲ぶっ放すみてえだから、当たらないようにしていこうぜ」

「ちゃんと忠告は聞いておきなよ……。それで砲撃って外部からの攻撃って通用しないんじゃなかった?」

「そうだぜ。だけど揚陸艦が突っ込む隙間を作ってやるのさ。あのでかい図体だから火力だけはピカイチなんだ」


 巡航艦の楕円形な外周部に置かれた2連装砲塔が動き出して目前にあるプラットフォームへ向けて砲口を向けていく。砲撃の予想進路がストライダー各機のディスプレイへ投影されて巻き込まれない位置へと退避していき、8門の砲塔がエネルギーチャージをするように光を帯びているのを千景は遠巻きに眺めた。

 一斉に砲口から光の奔流が吹き出していき2本の太い閃光がプラットフォームへ着弾し、続けざまに砲塔より2つの光球が放たれて8門の砲塔で絶え間なくレーザーキャノンを当て続ける。着弾位置の外装周辺には大きな穴が形成されてガレリアもすぐさま修復しようと動いていくが、完全に塞ぎきる前に後方にて待機していた強襲揚陸艦が突っ込んでいった。

 船首部分を覆っているエネルギーシールドが徐々に収束して一本の槍へと姿を変えていき、まるで古来の衝角戦の如くプラットフォームの穴に飛び込む。再生しようとするガレリアをオルゴンエネルギーのラムで阻害していき、その間にスタンドモードのストライダーが次々と内部へ進入していくのだった。


「よしっ、揚陸は成功だな。あとはここで突入チームの成功を眺めてくわけさ」

「なんというか、船ごと突っ込むなんて豪快だね……。あ、レーヴァテインも無事に突入したみたい」

「アズライトなら1人で全部蹴散らせてしまいそうだな。とりあえず帰りの船が無事であるようにこっちも頑張りますか」


 揚陸艦より内部へ突入していくストライダーの中に白と緑のラインがが入った機体を千景は目視で確認してシグナルでもレーヴァテインをキャッチする。内部へ入っていたアズライトを見守るよう銀と黒の2機は静かに旋回していった。

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