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CHAPTER 2-4

「システムオールグリーン、ネクサスいつでも行けるぜ」

「スターファイター準備よし!」

「レーヴァテイン、所定の位置についたわ」

「こちらハートブレイカー、みんないるな。ではドッキング用意!」


 基地から発進したデアデビルのストライダー達が岩礁空域を抜けて広々とした蒼穹へと上がった。ここが集合地点で既にレドームやアンテナを伸ばした電子戦機が先に着いており、日向から号令に従ってその周囲に集まって綺麗な密集隊形をとる。ちょうど3機のストライダーが電子戦機の下部に並ぶとマグネットアンカーが伸びてきて、機体と機体を合わせてがっちりと固定された。

 ハートブレイカーの下方にストライダーが外部接続されると4機のエンジンが同調しながら火を吹いて加速していき、目的地へ進みながら全員がコックピットに収まった形で作戦のブリーフィングが始まる。目標は特殊ガレリアを生み出してると思われるストライダーであるが、まずはその足取りが確認された最後の場所であるサラスト空域の捜索を行ってガレリアとストライダーの双方に備えることとなった。


「まずは空域全体をこのレーダーでサーチするから捜索はそれからだな。ガレリアの擬態は前回の時に取れたデータがあるから見破れそうだ」

「あとは何が出てくるかだなぁ。空振りの可能性もあるし、逆に罠の可能性もあるな」

「なにが出来てもいいように、気を引き締めていくわよ」


 初動は出来ているが相手が底の知れない存在ということもあって、半ば行き当たりばったりな作戦である。それでも万全を期して対応できるようにハートブレイカーが常に空域の監視と戦術データリンクを行い、各個撃破されぬように3機1組となった密集隊形での行動が原則だ。

 エンジンが轟音を響かせながら進む中、アズライトはいつになく口数は少なく神経を鋭く尖らせるように意識を高めており、日向は作戦の手順を今しばらく確認して不測の事態に備えている。イーサン側の無線から持ち込んであるオーディオ機器よりいつも聞いている音楽が流れてくるのが聞こえ、千景は正面モニターの脇にあるソケットに収まるデルが機械の癖に怖じ気づいてしまっているのを宥めるのに手がかかり、自分も抱えている不安を感じずに済んでいた。







「……餌はばらまいておいた。これで気づかぬなら余程の阿呆になるな」


 コックピットの中でひとり声を漏らしながら、“狩人”は獲物を待っている。自身を追っている者なら必ず食い付くだろうわかりやすい足跡を残しており、呼び寄せられた狩人は自らが獲物だとは気付かずに呼び寄せられ、そう確信した時は既に手遅れだ。

 特殊ガレリアの起動試験の数々を思い返せば殆どの対象は為す術もなく倒されていき、“狩人”が直接手を下すことは指で数えるほどしかない。特に印象に残っていたのは前回の起動試験の際に現れた大手プライベーティアの精鋭部隊と呼ばれる者達で、彼らはガレリアによる網を突破して初めて肉薄したチームであった。だからこそ正面から死力を尽くして戦い、その飛び方をつぶさに読み取りそして落としていく。そんな強者との交わりが何にも変えられない至福の時間だった。


「どうやら網にかかったようだな、さて、お前たちはどうなんだ? ……ふっ、少々呼び過ぎたものだ」


 センサーが近づく何かを捉えて警告を発したので過去に耽っていた思考を現実へと戻し、狩場に入ってきた獲物の数を確認する。最も近くにある反応はストライダーの5機編成でまっすぐにこの空域を目指して飛んでおり、また別の方向からも1つ大きな反応でどうやら密集隊形を取っているようで数は3か4といったところだ。

 5機編成の部隊はこのままいけばガレリアとぶつかり合うが、その分密集隊形の部隊に対してはガラ空きとなる。ならば自ら出向くのも悪くないと思い、“狩人”はガレリアが詰まった増槽を切り離して解き放すと自身のストライダーへ火を入れた。







「さ、もうすぐで目標空域だ。さっそく周辺のサーチをするからしばらく待っててくれ」

「それじゃあ接続解除、私が前に出るからイーサンは右翼、千景は左翼をお願い」


 目標である空域が近づいてきたのでスピードを緩めて慎重に進んでいく。目で見える範囲ではなんの変哲も無いがガレリアが空間ごと潜んでいる可能性もあるので日向はハートブレイカーのセンサーをフル稼働させて周囲に探りを入れ、その間に機体の接続を解除してレーヴァテインを先頭に左右をネクサスとスターファイターで脇を固める三角形の隊形で前に出た。

 電子戦機の周囲に位置しつつ各々のストライダーでも警戒を行うが、やはりセンサーには何も反応がなくただただ蒼穹が広がっている。大型レドームでの空域スキャンも後少しで終わるのでこのまま何も出ないだろう、千景はそう思っていた。だが次の瞬間、イーサンから鋭い声が轟く。


「!? みんなブレイクしろ! ボギーだ!!」

「なにッ!? ――うわあああッ!!」

「日向さん!? な、何が――」


 イーサンの叫びと同時にハートブレイカーのレドームが吹き飛んで煙を出しながら高度を落としていき、編隊は崩れて皆がバラバラに散っていった。大気の動きから相手の位置を感知して電磁的光学的にステルス化しても相手を感知できる空間受動レーダーを装備していた電子戦機すら欺いてその目を破壊していき、その姿は捉えさせないで僅かに残った軌跡しか残さずにされど近くにいるというプレッシャーを与えている。

 降下しながらも自動消火装置など積まれている機材で修繕作業を続けてなんとか飛行できるよう維持しているハートブレイカーのすぐ隣に千景はつきながら、プレッシャーを放っている相手を警戒していた。イーサンとアズライトは既に上空に向けて飛び上がっており、残された軌跡から後を追っている。


「日向さん、大丈夫ですか!?」

「あぁ、なんとか! だが相手は見えなかった、千景君も気をつけるんだ!」

「はいッ!――あ、あれは――」

「千景君!?」


 警戒していたのが何かが飛んできたと察知した瞬間に機体が大きく揺さぶられて、両翼の付け根より火が吹いて錐揉み状態で落ちていた。攻撃されたと理解は出来たがいきなり爆発が起きて落下し続ける機体を立て直すのに精一杯で、追撃に備える余裕などなかった。

 エンジンの出力はかなり低下してエラーメッセージがいくつも吐き出されており、スターファイターの飛行能力は失われたに等しい。自己診断システムにより区画閉鎖などのダメージコントロールを行ってオルゴンの補充による自己修復を進めていくが、損傷が思った以上に大きく復帰には程遠かった。それまで黙っていたデルがソケットから抜け出すと勝手にハッチを開いて外に出ていこうとしていく。


「ちょっとデル、外は危ないよ! でも脱出できるならしたほうが…………。あッ!」


 これまでの道中でかなり怯えていたので逃げてしまうのも仕方ないと思っていたが、機上のカメラが捉えたのは破損箇所にアームを伸ばして動力伝達系統のバイパスを繋いでいた。デルの応急処置によりエンジンにパワーが戻ってきており、出力を全開にしながら機首を上げてどうにか安定を取り戻して飛行できるようになる。

 飛べるが戦闘をするのは無理な状態で後ろから追いかけてきていたハートブレイカーがアンカーを伸ばしてきて、そのまま引っ張られる形で戦線離脱となった。デルは損傷箇所から漏れる炎を消しながら応急修理を完了させ戻ってきて、煤まみれのボディを拭きながら千景は労う。


「デルありがとう! お陰で助かったよ!」

「千景君、大丈夫か!?」

「はい、デルのおかげでなんとか。あの敵は?」

「あぁ、今は2人が戦っている。この上でな」


 見上げれば3機のストライダーが生み出す軌跡がぼんやりとだが見えた。






「なんて加速力だ! 追いかけるのも一苦労だぜ……だけどよ、逃がさねえ!」


 残像しか視認させずにハートブレイカーとスターファイターの2機を瞬く間に戦闘不能にした相手を、イーサンは僅かに残った空間の揺らぎといった軌跡より追跡を行っている。空間受動レーダーが反応しなかったのは探知範囲外から一気にトップスピードによる奇襲をかけてきたからで、それほどの超加速は機体と操縦者の事を考えれば短時間しか発揮できないだろう。だがこれほどの戦闘機動を行えるのはストライダーとランナーの他におらず、相手が探し求めていたあのストライダーであるとの予感が強くなっていた。

 残像の残滓は高度を上げながら伸びていっており、その先には大きく発達した積乱雲が浮かんでいる。雲間に隠れながら襲撃の間合いを図っているのだろう、先をゆくをレーヴァテインが一旦足を止めてハイマニューバモードからクロスコンバットモードへ姿を変えると、2本のレーザーブレードを手にした。


「アズライト、なんか策でも?」

「ええ、やられたらやり返すってわけ。ステルスで潜んで隙を見せたら一気に斬り込むから、奴の誘導役頼める?」

「任せろ! 超加速で飛ぶ例のアイツが相手だろうと、ブッ飛ばしてやるぜ!」


 直線的なスピードよりも複雑な機動性を求められるドッグファイトに持ち込めば、超加速は使えないだろうと踏んでアズライトは挟撃作戦を提案する。レーヴァテインのシステムを殆ど落とした状態で雲海に潜ませて、攻撃ポイントへ誘導したとこへ一気に斬り込むというものだ。その為のデコイで誘導役としてドッグファイトを仕掛ける役目を仰せつかって、イーサンは二つ返事で肯定する。

 相手は間違いなくデルタ小隊を単独で撃破した凄腕のランナーだと思われるが、だからこそイーサンは闘志を奮い立たせていた。このまま野放しにして置けない責任感とデルタ小隊の仇討ちと今しがた仲間を撃ったことへの怒りと強大な相手と競い合えるという高揚感がごちゃまぜになりながら、意識を冷水の一滴と思えるほどに冷たく研ぎ澄ませてドッグファイトへ備える。

 内部に雷をはらむ雲の周囲を警戒しながら飛んでいき、残された残滓がやがて一本の筋となっていた先に羽を広げた影が伸びていた。見つけた、遠目ながら表面に刻まれた模様はあの時のスプリッター迷彩で間違いなく、あのストライダーと確信してイーサンは操縦桿を強く握り直す。


「見つけた……! さぁ、勝負だ!」


 先に仕掛けたのイーサンからで、十分に加速しながらレーザー砲を迷彩柄目掛けて発砲し、向こうがどう動く見ていた。しかし相手の方が一枚上手だったことを虚空に吸い込まれていくレーザーの軌跡と同時に鳴り響くロックオンアラートによって思い知らされて、思いっきり機首を下げた。すぐ後ろをレーザーの閃光が通り過ぎていくのを感じながら向かってくるミサイルを機銃で叩きおとしていき、雲海を這うように飛びながらも後方からのプレッシャーが収まらない。

 ネクサスのセンサーアイが白黒灰の3色迷彩が施されたストライダーの姿を捉えて、ある程度距離がありつつも攻撃に最も適した位置をとられていた。アラートは未だに鳴り響いているのでロックオンを外すように左右へのブレイクを繰り返していくが、まるで吸い付いているかのようにどピッタリとついいて、一方で攻撃を仕掛けてくる様子をまるで見せていない。


「なんだッ、どうして攻撃してこない!? 野郎、楽しんでるってわけか……、なら後悔させてやるぜッ!!」


 初手の一撃以降攻勢を見せないストライダーに対してこちらがどう飛ぶのかを見たいという欲求があることを見抜き、それが命取りになるとイーサンは息巻いて思いっきりピッチアップして機体を一回転させながら雲の中へ突っ込んだ。積乱雲なので雲の中は氷や水滴に満ちていて所々で雷鳴が轟いて飛びにはあまりに向いてないが、だからこそ追跡を振り切るにはもってこいである。

 HUDの情報は役に立たないので己の勘と技量が物を言うがイーサンは構わず雷雲の中を突っ切るように進んでいき、後方より迫るプレッシャーを感じて向こうが誘いに乗ったようだ。だが次の瞬間、雲に入ったことを思いっきり後悔する。なぜならあの爆発的な超加速で雲海の中へ突っ込んできたからだ。


「うおッ!? なんて無茶苦茶な野郎だ! だが、ビビると思ったかこれしきでよぉ!」


 イーサンもエンジンを全開にして飛び出して音を超えた2機のストライダーのデッドヒートによって巨大な積乱雲はショックウェーブでかき消されるように形を変えていき、風を抜き去るように飛んだ迷彩柄のストライダーは速度を緩めるもネクサスより前に出ている。絶好の攻撃チャンスを逃すことなく、イーサンはロックオンするとミサイルとレーザーを同時に撃ち出した。

 レーザーはまるで機体を多少揺らすような動作で回避さるも、まっすぐに飛んだミサイルが突き刺さって爆発する。しかし、直撃はしてないと直感したイーサンは反撃に転じてくるストライダーを警戒するが、センサーが近くにいることを示していくがどこにいるのか検討がつかないが、イーサンは己の直感に従った。


「こういう時、どうするかなんてわかりきってんだよぉ! オレだってよくするからな!」


 翼端の砲口より放たれたレーザーの雨霰は眼下に広がる雲海を次々と撃ち抜いていき、イーサンはその中で手応えを感じる。答えは当たって雲の中から飛び出してきたストライダーを追いかけてレーザーとミサイルを織り交ぜた猛攻をしかけるも、巧みな操縦で躱されてミサイルも全弾撃ち落とされて今度はネクサスが後ろをとられた。

 お互いに後ろを取り合うように絡み合った飛行機雲が蒼穹に描かれていき、文字通りのドッグファイトが繰り広げられて一瞬でも気を抜けば落とされるような機動戦が続いていく。しかし、イーサンには秘策が残されており、そのタイミングを測っていた。そしてこちらを真正面に捉えたその瞬間にイーサンは叫ぶ。


「アズライト、今だ! やっちまえ!!」

「言われなくても! くらえ―――」


 雲海から真紅の機体とエネルギーの奔流を放つブレードが飛び出してきた。既にキルゾーンへの誘い込みを成功しており、向こうの意識をこちらに全て向いたタイミングで隠れていたレーヴァテインが攻撃を仕掛ける。いくら凄腕といえど虚を突いた至近からの一撃を回避するなど不能と思えた。

 しかし次に吹き飛んだのはレーヴァテインの両腕で、黒煙を出しながら真紅の機体が落ちていく。攻撃を受けた瞬間にエンジンノズルを限界まで下に向けると同時にピッチアップするという急制動で、減速しながら機体をその場で一回転させて回避と同時反撃をしたのだ。一瞬でそんな操縦を見せたランナーの腕前に舌を巻き、必殺の一撃が不発ということにイーサンはモニターを強く叩いた。


「ちくしょう! なんて野郎だ、あんなイカれた動きしてて無事で済むのかよ!? ……あぁ、いいぜ。こっからはタイマンだぜ!!」


 お互い向き合うヘッドオンの状態でストライダーと落下していくレーヴァテインの間に割って入って向こうの気を引き、どうやら戦闘能力を失った相手には興味はないようで素直に乗ってくる。落ちていくレーヴァテインが気になるが、破損した腕部を排除しながら飛行モードに移っており、どうやら無事のようだ。

 もはや万策尽きたがまだネクサスは万全な状態で、何よりこれほどの凄腕と競い合えるということに武者震いをしてイーサンは叫びながら飛んでいく。







「なんて奴なのよ、あの一撃を避けるなんて…………」


 両腕が吹き飛んだ機体をどうにか立て直してようやくエラーメッセージが消えた中、アズライトは愕然としていた。必殺と思って放った一撃をたやすく避けられた挙げ句反撃を受けて腕と武器を失い、戦線離脱も同然でここにいる。

 見上げれば2機のストライダーが絡み合い命を取り合う軌跡が見えて、あの中でイーサンは戦っているのだろう。敵機は1機だけだから彼が戦っている間なら離脱する事は十分可能なほどの余裕があり、イーサンもそれを考えて単機で挑んだのだと思えた。そしてアズライトは強く拳を叩く。


「冗談じゃないわ! もう仲間を見せてるのは絶対お断りよ!」


 デルタ小隊の皆を助けられずイーサンまで見捨てるなどアズライトには出来なかった。だが実際問題、どう動こうにも武器がない状態では足手まといにしかならず、ユナイトしてアルビレオになろうにもその隙を向こうは与えてくれないだろう。

 そう頭を悩ませているとなぜか昔祖母と一緒に乗った時のことを思い出す。振り返ってみればおばあちゃんのようなランナーになりたいと思ったのがアズライトがランナーとして志した最初の事であり、アカデミーに向かうと決めた時に病床に伏していた彼女から背中を押されて、形見として合体剣を受け取った。亡くなったのはすぐ後のことだった。


「そうだね、おばあちゃん……。あの時と一緒に背中を押してくれるんだね。それとごめん、形見の品思いっきり壊しちゃうかもだけど!」


 愛しい家族の顔を思い出して今の家族みたいな存在を助けるべく、アズライトに天啓が降りてきてレーヴァテインと並ぶ形見である真紅の刀身を持つ合体剣を取り出す。ハイマニューバモードのレーヴァテインは武装こそないがトップスピードを出すくらいは造作もないくらいにエンジンは万全で、アズライトは全てのエネルギーをエンジンへ回した。

 ただ直進さえすればいいと細かい操縦は行わず、アズライトはコックピットのハッチを開けて外へ身を乗り出す。トップスピードに向かっているので向い風は凄まじく高度のあるので空気が薄いのだが、それをランナーとしての身体能力で無理にカバーしており、剣を構えつつも正直に言えば無茶苦茶な方法であるとアズライトは自嘲するが同時に祖母の言葉を思い出していた。


「さぁ、思いっきりいくわよ! 見ててねおばあちゃん、“やるなら思いっきりやる女でいくよ!”」


 力を込めて合体剣を機体と水平になるように構えて、緑色の結晶による刃が伸びてレーヴァテインもトップスピードに達する。体内から絞り出すオルゴンで前方に障壁を貼ってしっかりと踏ん張りながら、空戦が繰り広げられている上空へただひたすらに昇っていった。ここまで無茶なオルゴンの使い方をしたことはないが、奥歯を噛みしめる力が踏ん張る力が強くなればなるほど大きく伸びる結晶の刃がどうやら上手くいきそうだと告げている。

 2機のストライダーの姿を捉えてより踏ん張りが強くなっていき、ここまで高速で近づいてくる存在を見落とす事はないだろうと思い、事実こちらを確認した2機は一瞬動きが鈍った。一直線に向かってくるストライダーとその機上で剣をか構えているランナーがいるのを見れば意識が向くのは仕方ないだろうし、これを見たイーサンは驚くだろうか。いや、彼ならきっと笑うだろうとアズライトは大爆笑している顔を思い浮かべる。


「勝負よ! さっきのお返しを――」


 いくら生身で突撃してくるという頓痴気な状況であろうと向かってくる敵機には変わらないので砲口が向けてくるのは当然で、ただ直進しか出来ないストライダーで相手になるかは五分五分以下だ。姿勢を低くして備えるアズライトの目の前で何かが飛んできて閃光とともに炸裂すると、迷彩のストライダーの動きが鈍っていく。

 放たれたのは電子機器を一時的に麻痺させる磁気パルスミサイルであり、それが放たれた方向を見ればボロボロになった電子戦機がミサイルを次々に撃ち出してその下方にくっついた銀色のストライダーがエンジン全開で動きをサポートしていた。千景と日向も状況を打破するべく策を練って動いていたのである。

 2人が作った隙を逃すことなくイーサンは寸分の迷いもなく磁気パルスで電子機器がダウンしていくのも構わずに突っ込んでいき、機首を横開きに広げてストライダーを捕らえた。機銃の一部が可動してゼロ距離より撃たれていいようががっちりと咥えて離さず、そのままアズライトの方へ向かっていく。


「ハハハッ!! アズライト、最高だぜ! さぁ、思いっきりかましてやれ!!!」

「ハァァァァーーーーーーッl!!!!!」


 最高速度ですれ違い、一瞬の攻防が繰り広げられ、アズライトの合体剣はストライダーの翼端を切り落として刃先が吹き飛んだ。オルゴンの小爆発に巻き込まれて3機はそれぞれが落ちていくも、ネクサスがレーヴァテインをキャッチすると、ハートブレイカーが残った磁気パルスミサイルと煙幕弾の全てを撃ち出して、その隙に思いっきり高度を下げて探知範囲外へと逃れていく。

 雲海の下を通りながら4機は合流してなんとか無事であることを確かめあった。本来なら正面から叩き斬るつもりだったのに、ギリギリのところで抵抗されて翼の先端を切り落とすだけである。だが、それで追撃されずに済んだと皆がアズライトの行動を讃えた。


「とりあえず全員無事ってことで大勝利、そういうことにしておこう」

「そうね、今回はわたしたちの惨敗よ」


 敗北の味が口いっぱいに広がるのだが、相変わらず能天気に笑うイーサンに呆れながらも肯定する千景と何度も胸を撫で下ろして皆の生存を喜ぶ日向、皆の顔を見てアズライトは不思議と悪い気分はしなかった。

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