最悪の再会
たまたま聞こえたサイレンに顔を上げれば、救急車が近くの家で止まったらしく、その担架には……信じられないことに、兄貴が乗っていた。
俺が兄貴を見間違えようはずもない。操作していた三毛猫のUFOキャッチャーの行方もほったらかしにして、おれは出口に駆けた。
救急車が停まっていたのは閑静な住宅街の角の家。兄貴を追って、誰かが付き添いで救急車に駆け込もうとしていて──その顔に頭が沸騰した。
白崎幸葵。
おれの天敵だ。兄貴の天敵でもあるはずなのだけれど、兄貴が広すぎる度量でそいつを受け入れてしまっているのがいけない。
今回兄貴が倒れたのもこいつのせいか、とおれの脳は勝手に決めつけ、おれは一足跳びにそちらへ向かった。
白崎の野郎は突然現れたおれに驚いたように固まった。おれはその横っ面を殴り飛ばした。
「な、何をやってるんですか!」
近くにいた救急隊員がおれと白崎の間に割って入る。おれは、吐き出すように「退け」とだけ言った。どうせ全部こいつが悪いに決まっている。
そう決めつけていた。
そんなおれをわかっているかのように白崎は諦めた顔をし、救急隊員の肩に手を置き、「俺が悪いんです」と小さく呟いた。
訳もわからず救急隊員が退けられたところで、 おれは白崎に飛びかかろうとした。
が、前に進めない。
「かなくん、やめな」
後ろから春さんがおれを羽交い締めにしていた。女だが、見た目に違わず体力があるのだろう。どう足掻いても、春さんの羽交い締めからは逃れられなかった。
それでも尚暴れようとするおれに、春さんは囁いた。
「白崎を憎むも恨むもいつでもできる。でも相楽を助けるのは今しかできない」
その言葉に、力が抜けた。
止まったおれは白崎が付き添った救急車を呆然と見送った。




