第一話 新学期!
俺は橘 秋名。この春高校2年生になる。部活は帰宅部だけど、高校生活は楽しいし、友達もたくさんいる。彼女はいないけど十分に青春を謳歌していると思う。趣味、特技は共に料理。結構凝ったものもよく作る。それなりに上出来だと思う。これには訳があって、俺には二つ下の妹がいる。夏希という。両親は共働きでその上、よく海外に行っていて正月くらいにしか帰ってこないのである。その為、家事は基本俺がやっているのだ。ちなみに夏希は家事が絶望的に苦手で、料理は焦がすし洗濯は汚れを増やすだけだ。もはや才能と言っても過言ではない。
そういえば家事が苦手な奴がもう一人いる。
「お~い!一緒に帰ろうって言ったじゃーん!待ってよー」
噂をすれば。こいつは隣の家に住む石崎 茜。いわゆる幼馴染ってやつだ。夏希ほどじゃないが家事が下手である。
「それ誰に説明してるの?てか、家事が下手ってそんなストレートに言わないでよ!私だって頑張って練習してるんだから!」
声に出ていたらしい。気を付けよう。
「ごめんな、茜。夏希が腹減ったってうるさいんだ」
そういって俺は携帯の画面を茜に見せた。某チャットアプリの夏希とのトーク画面には『お腹空いた』『このままじゃ私死んじゃう』『兄ちゃん早く帰ってきて』などなど、数十件に亘るメッセージが来ていた。
「なっちゃんはもう帰ってるんだ。ふふ、相変わらずお兄ちゃん子なのね」
茜は小さく笑うと俺の手を握って走り出した。
「じゃあ早く帰ろ!ほら、走った走った!」
「ちょっと待てって、家には食材がないんだ!スーパーに寄らしてくれ!」
半ば強制的に走らされた俺は落としそうになったスマホを握りしめ言った。
近所のスーパーに寄った俺と茜は両手に大きな袋を抱えながら帰路を歩いた。
「いやぁ~、安かったから買いすぎちゃったね」
今日は新学期応援特売でやけに商品が安かった。買いすぎてしまったから茜にも荷物を持ってもらっている。もちろん軽いものだが。
「まぁ、大いに越したことは無いし夏希はよく食うからすぐ無くなるだろう」
俺の食が細いのもあるが、夏希は俺以上に飯を食う。それも凄く美味しそうに。テレビとかで見るそこらの女子アナより美味しそうに食べるので作り甲斐もあるってものだ。
「ね、よかったら私もお昼一緒にいい?あっきーの料理美味しいし、勉強になるし」
「嫌だよ。作る量増えるし、まずその『あっきー』はやめろ。小学生じゃあるまいし」
茜は小学生の頃からずっと俺のことを『あっきー』夏希のことを『なっちゃん』と呼んでくる。高校生にもなって恥ずかしいやつだ。
「えぇ~、いいじゃん!あっきーの料理食べたいー!」
そういって茜は俺に体当たりをしてくる。当たっているのは体ではなくふくよかな胸だが。こいつも結構成長したな…。
「やめろ、駄々をこねるな。子供かお前は」
赤面を隠しながら嫌がる俺を見て茜は体当たり ~と言うより胸当たり~ をやめて言った。
「卵が2パック買えたのは誰のおかげかな~?この荷物1人で持てるのかな~?」
お1人様1パックまでの卵は茜がいたくれたおかげで2パック買えたし、筋力のない俺はこの大荷物を1人で持つのは厳しい。憎たらしい奴だ。
「くっ、わかったよ…。作ってやる。ただし、俺が調理している間は手を出すなよ!以前は茜が『私も手伝うよ~』って言って勝手に肉焼いて丸焦げにしたんだからな!」
「あ、あれは悪いと思ってますよ~。ごめんね、あっきー」
くだらないやり取りをしながら海へ続く大きな川沿いの桜満開な道を並んで帰って行った。
家に帰ると帰ってくるタイミングを完全に予測いていた妹の夏希が家の前まで出ていた。
「兄ちゃーん!早くご飯作ってー!」
十数メートル離れた俺に向かって大声をあげる。近所迷惑だ、やめてくれ。
「やっほー!なっちゃーん!一緒にご飯食べよー!」
茜が大声で返事をしながら小走りで夏希の元へ行った。ここにも近所迷惑な奴がいた、もう恥ずかしいよ俺は。
「あ、茜ちゃんも一緒なの!やったー!ご飯は人が多い方が美味しいよね!」
歩いていた俺がようやく家にたどり着いた。
「お前ら近所迷惑だろうが、大声出すな」
俺が叱ると2人はちょっとだけ舌を出して謝った。
「「ごめんなさーい」」
反省はしてないだろう、まぁいい。覚えてろ。
橘家は最初にも説明した通り、両親は共働きだから家にいない。一階にリビングダイニングとキッチンがあり、二階に俺と夏希の部屋がある。リビングダイニングには大きめのテレビとソファ、それと4人掛けのテーブルがある。それを見渡せるようなキッチンが右側にある。料理道具は俺がちょっとずつ集めていて、今や素人には用途がわからないような物まである。あると便利なんだがな。
L字のソファに茜と夏希が並んで座っている。昼の情報番組『オヒルナノデス』の絶品グルメツアーを見ている。パンケーキを求めて行列になっている店の紹介だ。俺にはパンケーキとホットケーキの差もわからない。そんなことを考えながら昼食の用意を進める。トマトたっぷりのサラダとピーマンたっぷりの炒め物にしてやる。
~数分後~
「おーい、できたぞー」
テーブルに並べた昼食を見て茜と夏希は露骨に嫌そうな顔をした。それもそのはず、茜の嫌いなトマトと夏希の嫌いなピーマンがたっぷりのメニュー。さっき大声をあげた罰だ。
「ちょっと、兄ちゃん!ピーマン多くない?!こんないらなくない?!」
「そ、そうだよ!トマトもせめて1つでいいでしょ?!」
2人は文句を言うだろうと思って、用意した物がある。
「別に残してもいいんだぞ?ただ完食したらさっきテレビでやっていた作り方で作ったパンケーキを食わせてやろうと思ったが…」
キッチンにはパンケーキをふんわりさせるため、別に用意されたメレンゲとその他の材料が置いてある。それを見た2人は苦そうな顔をしながら席に着いた。
食後のパンケーキは我ながら上手く出来たと思う。ふわっふわで美味しかった。2人も満足げな表情で食べていた。今後も飴と鞭システムで使えそうだ。
その後は、茜は家族と出かけるからと言って帰って行った。夏希も『私たちも出かけようよ~』と駄々をこねたが俺は新学期早々出された宿題を消化したいという理由で断った。第一、夏希も受験生だろ、勉強したらどうだ。そう思いながら自室に行き、学校のカバンを開く。数枚のプリントが宿題だったはず、どこに入れたっけな………。ん…?ないぞ?
まさかと思い、プリントが配られた時を思い返す………。机にしまったな、プリント。
面倒だが、取りに行くか。幸い学校は徒歩圏内だし。
「夏希―。兄ちゃんちょっと忘れ物したから学校行ってくるなー」
階段を降りてリビングには顔を出さず、ドア越しに声をかけると夏希から返事が返ってきた。
「ついでにアイス買ってきて~。ハーゲン〇ッツね~」
あのアイス高いんだよな、しょうがない。ゴリゴリ君は買ってきてやろう。そう思って玄関を出た。
この後起こる事を知っていたらゴリゴリ君なんて買わずに真っすぐ帰っていたのに。俺は不幸なやつだ…。
お久しぶりです。まっそーです。
長らく待たせたのに更新したのが新作。もう一つのほうはどうしたという声が空耳で聞こえます。もうひとつのほう『推理と魔法とビニール傘と』も引き続き書いていきますのでよろしくお願いします。
個人的に『ビニール傘』と略しているんですが、そっちのほうはちょっとづつ書いています。終わってません。この先のストーリーを練っています、もう少し待ってください。ごめんなさい。
さて、新作の『ここはどんな異世界ですか?』は日常ものです。異世界ものでもあります。タイトルはありきたりなセリフ口調で、内容もありきたりな妹と幼馴染が出てきます。他にもキャラは出していく予定なので自分の推しを見つけれるといいですね。
長々とした後書きは終わります。これからはせめて、最低月1でどちらがか更新できればいいなと思っています。可能な限りは月1でどちらも更新します。頑張ります(たぶん無理)今後とも長く応援のほどよろしくお願いいたします。
称賛はもちろん批判文句でもコメントに書いてくれると喜びます。それでは。