命は脳と心臓と 転々
管理人さんの死体を見つけてすぐに、僕は電話をした。
「あの、人が死んでます……。場所は唐国遊園地で、そこの入場口の受付です。はい……はい。そうです、すぐにお願いします」
『了解。ちょっと待ってて』という言葉を最後に電話は切れた。
…………。
「さようなら……湯木おじさん」
僕は手を合わせてしばらく祈り、そして逃げるようにその場を去った。
扉を開けて廊下、出口の前には待ち構えるように心が仁王立ちしている。
僕は走って、そして心に抱きついた。
「なになに!? ナニコレどうした学!?」
「あ……こ、心…」
歯がガチガチと震えているし、心臓が破裂しそうだ。
心がいてよかった、何にもすがれなかったなら僕は発狂しただろう。
「どうした? 事情を話してくれ。君がこれだけ動揺するなんて……」
心は僕の背をさすりながら冷静に周りを見渡していた。
「それにこの臭い……もしかして、血?」
「そう……なんだ……おじさんが、殺されて……殺されて、いた」
「なっ……そんな馬鹿な」
心は驚いたようで、少し胸の鼓動が早くなったが依然彼女は冷静だった。
「いや、君がそんな嘘をつくわけないか。警察には連絡したかい?」
「した」
「そう、じゃあ外で待っていようか」
扉をガチャりと開けて、外に出る。
少し歩いてベンチに座る。
「そうか……おじさん死んだんだね」
「……うん」
「学も災難だね。これで死体を見つけるのは……これで四回目か」
「……そうだよ」
だけど、知り合いが死んでるのは今までになかったことだ。
「どうしたんだい。この前なんてあっけらかんとしてたじゃないか」
「……僕は怖いんだ」
「君が殺されやしないかって? 大丈夫、ボクがいるしそれに勇おじさんだって……」
「違う」
僕は心の言葉を遮った。
「僕が怖いのは、僕以外の、心なんかが死ぬことだ。それが僕はなによりも恐ろしい」
「……はっはっはっは!」
心は僕の言葉を聞いて、笑った。
「なに、ボクが君を残して死ぬだって? あり得ないよ。ボクは君と生きて死ぬ。忘れたのかい?」
「それは……」
昔々の話だ。
君と僕が二人じゃなかった頃のおふざけだ。
けれど、その言葉は二度目じゃない。
「……そうだね。君は僕が、僕は君が、おたがいを守っていく。だっけか」
「そう。死ぬ気はない、ってこと」
だからボクを気兼ねなく頼ってくれていいよ、と僕の親友はそう言った。