たんぽぽ(掌編・旧作)
ある日。
ぼくの目の前にふわんって。
一枚の羽根が落ちてた。
ぼくはすごく綺麗で。
それをずっと見てたんだ。
でも止まる事が出来ない風さんがそれを持っていってしまった。
ぼくはすごく悲しくなって。
涙がぽつんっと落ちた。
気が付くとあたりは真っ暗で。
ぽつぽつ涙を浮かべながら。
その日は首を落として眠った。
朝。
ぼくは目を覚まして伸びをした。
おひさまがおはようを言ってくれるから。
ぼくもおはようを言った。
ぽとり、と。
昨日の涙が落ちたけど。
ぼくはもうあんまり悲しくなかった。
周りはいつもどおり緑色の原っぱ。
風さんがそよそよと吹いている。
ぼくも風さんに揺らされてゆらゆらと揺れた。
午後になって。
ふわっと、空から一枚の白い羽根が落ちてきた。
また、ぼくの目の前に。
ぼくは嬉しくなって、踊りだしたくなった。
でも。
風さんはやっぱり止まれないから。
すぐにその白いぼくの宝物を飛ばした。
ぼくは思わず、「あっ」て思って。
背を伸ばして、追っかけようと。
そしたら。
ふわって、身体が浮いた。
下をむくと、ぼくのおかあさんと、ぼくの兄弟がいた。
ぼくは白い羽根に追いつきそうなのが嬉くて。
ゆらゆら風さんに身を任せてた。
たぶん、この先、どこかの地面に落ちるはず。
その時も、白い羽根が、側にいてくれたら、いいな。
童話っぽいっすねぇ。