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迷宮管理人のゆま  作者: 応龍
第一章 プロローグは、一章が終わるまでがプロローグです。
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んあー

諸事情により内容とサブタイトルを修正しています。

「んあー。」


 初めて使う基本機能、<魔神の吐息(デモンサイン)>を発動した途端、私の口が人間の骨格には実現不可能なほど大きく開かれた。

 口内に超高温の塊が生まれ、そこから放たれる極細の閃光が、悪魔の軍隊を舐めるようして薙ぐ。


 謎の閃光に触れられた悪魔たちは、痛みも何もなく一瞬不思議そうな顔をしたが、その直後、緋色に発光する塊と成り、その身と命を火種とする爆炎に変わった。

 私を誰何していた見張り役の二人は、少し離れた場所にいる本陣の仲間たちが次々と炎の柱へ変わりゆく様子を、声もなく瞠目していた。



「うは…思ったより凄かった…」


 私は独りごちたあと、敵の被害を<解析(アナライズ)>の機能を使い、分析する。

 驚愕するほどの一撃であったとはいえ、全滅するほどの被害ではない。

 五分の一を倒した程度であろう、手前にいる相手にしか当てられなかった。

 まあ反撃の狼煙としては上出来だろう。

 次は空を飛んで、少し上の方から8の字状に閃光を放とうか。


 そんな事を考えていると、敵の本陣から届いた熱風が、私の髪を揺らす。

 その風を受けて、横の悪魔さんたちは我に返る。


「て、敵襲!敵襲ー!」


 叫びながら、私の横にいる悪魔さん二人が槍を構えて突撃してくる。

 それを<魔力障壁(フォースフィールド)>で往なした後に、バックステップで距離を取り、<魔法の矢>を唱える。


 見張り役の悪魔さんたちは、それぞれ12本の矢で沈んだ。

 これは下級悪魔じゃないな、中級くらいかもしれない。


 見張り役がこれなら、本陣の連中も下級悪魔などではないだろう。

 テオドーラの所に居た人たちは、殆どがスケルトンだった。

 その軍勢と戦うために、質の高い悪魔を500人も集める必要があるだろうか?


 まだ手合わせしたことはないけれど、テオドーラはたぶん強い。

 しかし、流石に数が多すぎる。合点がいかない。

 『第九階層守護者の座をかけて戦う』と言うのは、未だ敵が来ない階層同士の暇潰し、ただの余興にすぎない。そう私は思っていた。

 事実、テオドーラの部屋に突撃してきた先発隊の行動は、正にその象徴のようだったではないか。

 でも、しかし。もしかして伯爵さんは…。


「はあぁぁぁッ!」


 私は魂の中にある、<魔導機関>に力を込めて、魔力を急速に回復させる。


 <魔神の吐息(デモンサイン)>は結構な魔力を消費する。

 一発使用しただけで、私の貯蓄する総魔力の半分くらいを奪っていった。

 ゲームで言えばMAX-MPの50%だ、連射は出来ない。

 普通ならMPが自動回復するまで待つしか無いのだ。


 しかし私は違う、私は生きる特異点。<定命あらざる者(イモータル)>だ。

 在るべきはずの場所を離れ、居るはずのない場所に存在するがために生まれた、異能の力を持っている。それが私の<魔導機関>。


 なんて、カッコよく話したが、<魔導機関>とは、早い話が魔力の手回し充電器みたいなものだ。

 この世界の住人の中で、魔に才のあるものは体に魔力を蓄えることができる。

 そして魔法や奇跡を使うことで消費した魔力は、時間とともに回復する。

 逆にいうと、時間を待つしか回復方法がない。これは神ですら同様だ。


 だけど私は違う。

 この世界に干渉する“意思“を示すことで、自分の魂から魔力を発生させることが出来る。

 気力が続く限り、滾々と魔力を生成することが出来るのだ。


 魔力が全開まで回復し、体内に保有できる臨界を超え、魔力が外に溢れ出すと、私の体が淡く光りだす。


 <高速飛翔>を起動し、静かに宙に浮かぶと悪魔の軍勢の全体像が見えた。

 手前側に居る悪魔たちは、私に気づいて攻撃を仕掛けようと身構えている。

 後方に居る悪魔たちは、どうして爆発が起きたのかの情報収集に追われている者ばかりだ。あれは悪魔の上官たちだろう。



「んあー。」


 私は後方に固まっている連中に狙いを定め、再び<魔神の吐息(デモンサイン)>を放った。

 しかし<魔神の吐息(デモンサイン)>の発動時に出る、この間抜けな変声は、何とかならないものだろうか…。







------------------






 ──悪魔伯爵グナエウスは、己が第八階層守護者であることに対し、言い知れぬ不満を抱えていた。


 歳を経れば竜神にすら匹敵すると言われる紅玉龍が、自分の召喚主の居住区前を守護していることは、まだ納得ができる。

 だがその次席である第九階層の守護者の座に、何故あのような小娘がいるのだろう。

 悪魔伯爵である自分こそが、あの場所に相応しいはずだ。


 そう考え、この500年の間に幾度と無く戦いを挑み、そして敗れた。

 最初はスケルトンなどいくら集めた所で、我ら悪魔に敵うまいと思っていた。

 しかし違った。あの小娘一人に、悪魔100人が為す術もなく敗れ去った。


 あの娘は人の命を喰らう。悪魔の命すらも喰らう。

 俺の召喚した配下たちの命をたった一人で、魔法も使わずに奪い去ったのだ。


 いつしか俺はあの小娘が、確かに<死霊の王>と呼ばれるに相応しい存在なのだと認めるようになった。


 しかし負けるわけには行かない。俺は悪魔の伯爵なのだ。

 前回は300もの手勢を率いて戦った。

 あの時も結果は敗北だったが、光明は見えた。


 7割ほどの配下を失った辺りから、あの娘が命を喰らうのを止めたのだ。

 その後もあの娘は、傷を負いながらも決して命を喰らうことはしなかった。

 察するに、あの娘が一度に命を喰らう量には限界があり、それ以上の命は喰らうことが出来ない。


 ならばそれ以上の数で攻め込めば良い。


 それから俺は長い年月をかけて、500もの配下をこの地に召喚した。


 多くの悪魔を呼び出す内に、やけに目立ちたがりな悪魔将軍とその部下を呼び出してしまった。

 だが奴らには一番槍の栄誉を与えた。適材適所だ。

 適当に雑魚を散らした後は、あの娘の餌食になって貰えばいい。


 そろそろ頃合いだ。


 長かった戦いに、決着をつけに行くとしようか。

 俺は勝利の前祝いをする幹部たちに向け、高らかに宣言する。


「皆の者!今宵こそ、新たな第九階層守護者が誕生する時だ。さあ参ろう。勝利をこの手に掴むのだ!」


「「「イエス・マイロード!」」」


 意気が上がった矢先に、司令部として構える部屋に伝令が走ってきた。


「たっ、大変です!坊ちゃま!」


「坊ちゃまは止めろ、ヘルメス卿」


「悪魔が!光る悪魔が現れました!」


「貴公は何を言っているのだ…悪魔は我々のほうだろう」


 何を慌てているのか。詳細は不明だが、まあ大体の想像はつく。

 テオドーラが先兵隊を倒し、返す刀で単身乗り込んで来たのだろう。

 奴は光るはずもないが、あのライトアップされるのが大好きな悪魔将軍の残存兵でも引きずって、ここへ現れたのだ。


「ここは危険です!一旦撤退しましょう!」


「いや、必要ない。ここで決着をつけよう」


 本来ならば、あの第九階層守護者の部屋で雌雄を決したかった。

 だがあの神聖なる部屋を<死霊の王>の血で染めるのも忍びない。

 些か残念だが、この部屋の先にある通路を決戦の場所としよう。


「ヘルメス卿は後ろに控えていろ。では皆の者!決戦の時だ!」


「「「イエス・マイロード!」」」






「あっ。こんにちは、悪魔伯爵さん。いやもう、こんばんは、かな?」


 扉を開け、意気揚々と戦場へ赴くと、そこには目の前に変な女が立っていた。





飲酒しながらの予約投稿は危険と知りました。

お酒の飲み過ぎには注意しましょう。

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