表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の席の人  作者: 亜実香
7/16

なな

月曜日。朝、家を出て美桜とゆーちゃんと待ち合わせしている場所に向かう。


いつもの通学路。

でも何かおかしい。

さっきから同じ学校の生徒と何人かすれ違ったが、ちらちらと見られている気がする。

でも、私がそちらを見るとすぐに目を反らされるし、話しかけて来る人もいない。


・・・気のせいかなっ!

考えても仕方ないので気にしないことにした。

そうこうしているうちに美桜とゆーちゃんが見えてきた。



「2人共おはよう!」


「おっはよー!!」

「おはよう、彩花。」

2人が返してくれる。

でも、顔がニヤニヤしている。

なんかちょっと怖い。


「ど、どしたの?ニヤニヤして・・・」


「何言ってるの!昨日どうだったの?!」


「そーだよ、彩花。昨日の夜、電話もメールもしてくれなかったじゃん!」


そういえば、忘れてた。

昨日はすぐ寝ちゃったから。


「とにかく学校に行くまでの間に詳しく聞かせて貰いますからねっ!」

ゆーちゃんが楽しそうに歩き出した。




学校までの道のりを私は美桜とゆーちゃんに挟まれながら、昨日のことを話した。

2人はキャーキャー言いながら私の話を聞いていた。

いつもの道のはずなのに、いつもの倍くらい長く感じた。

朝からちょっと疲れちゃったよ・・・。







学校に着いて、教室に向かう。

でも、なんかすれ違う人達からちらちらと視線を感じる。

朝もそうだったけど、何なんだろう。

美桜やゆーちゃんも気づいたみたいで、


「なんか感じ悪っ!」


「ほんと。気にしないほうがいいわよ。」


と、言ってくれる。


「そうだね!気にしないでおくよ。」


私はそう答えたけど、内心気になっていた。







教室に入って席に向かう。

教室に入った時も一瞬ザワッとしたけど、あからさまな視線を向けてくる人はいなかった。


よかった。

このクラスの人はみんな優しいから。

教室でまであんな感じだったらどうしようかと思ったよ。


あ、天野君もう来てる・・・。

天野君は席に座っている。

私に気づいたみたいで、視線をこちらに向けて、

「おはよう。」

と、言ってくれた。


「あ、おはよう。」

私は慌てて返した。


びっくりした。

天野君から挨拶してくれるの初めてだもん。

私は気恥ずかしくて天野君の方をなるべく見ないようにして自分の椅子に座った。





「おはよう。」


いきなり声をかけられて、びっくりして声のしたほうを向く。

声の持ち主は谷原奏汰君だった。

天野君の机に手を突いて立ったままこっちを見ている。


谷原君は天野君とは違ったタイプのイケメン。

天野君はクールな感じだけど、谷原君は明るいというか一緒にいると楽しくなりそうな感じ。

そして、何故か天野君と仲良し。

パッと見気が合いそうには思わないんだけど、お互い惹かれる所があったのかな?

どちらにしても、2人共イケメンさんなので、2人で廊下を歩く度女の子の熱い視線を受けてる。



「えっと、おはよう。」


それにしても気付かなかった。

天野君に挨拶されて動揺してたのかな、私。

チラッと天野君の方を見る。

天野君はいつも通り無表情で頬杖をついている。


「広樹が女子に挨拶なんて珍しいね。何?何かあるの?」

谷原君が爽やかな笑顔で聞いてくる。


「えっ?!あ、えっと、何でもないよっ!!」

手をブンブン振って否定する。

谷原君の意味深な質問に顔が赤くなるのを感じた。


恥ずかしいよぅ・・・

こんなの何かあったってバレバレかも・・・


「えー。その反応で何もないはないでしょ?何があったの?」


やっぱり、谷原君は聞いてくる。


「奏汰、止めとけ。佐伯さん困ってる。」


天野君が助け舟を出してくれた。

よかった。助かった。

ほっと胸をなで下ろす。


「なんだよ。どうせ広樹は聞いたって答えないしさ。佐伯さんに聞くしかないじゃん?」


ニヤニヤしながら谷原君が答える。

谷原君は何があったか聞きたいっていうよりも、この状況を楽しんでるみたいに見える。


「で、どうなの?佐伯さん?」

えっと、どーしよう。


私が困ってしまったその時、


「こら、奏汰!彩花になにしてんのよ!」


ゆーちゃんが席を立ち谷原君の方に近づいていった。

これで本当に助かった。



ゆーちゃんと谷原君は幼なじみらしい。

私達から見ると仲良しなんだけど、ゆーちゃんは「腐れ縁よ。」って言ってた。

 

「何って別に俺何にもしてないけど?」

さらっと爽やかな笑顔で言う谷原君。


「ちゃんと聞こえてたのよ?彩花困らせてたでしょ?!」

反論するゆーちゃん。


「何、柚月?聞いてたの?そんなに俺のこと気になるー?」

にこにこしながらゆーちゃんに顔を近づける谷原君。


「そ、そんなわけないでしょ!!」

動揺しながら谷原君を押し返すゆーちゃん。





やっぱり仲良いと思うんだけどな。

普段落ち着いてるゆーちゃんが慌ててるの可愛いし。

あんな顔谷原君の前でしか見せないんだろうな。







「あの、バカップルは置いといて、彩花。」


「うわっ!?」


じーっとゆーちゃん達の方を見ていたから、目の前に美桜が来てたことに気付かなかった。


「何びっくりしてんの?まーいいや、宿題見せて!!」

目の前で両手を合わせて拝んでくる美桜。


「もー。たまには自分でやらないと。」

そういいながら、自分の宿題のノートを探す。


「あった!何ページだっけ?」


「たしか、52ページからだったよー」


えーと、52ページ、52ページ・・・・あれっ?


サーッと血の気が引いていく。


「彩花?どしたの?」

固まってしまった私に美桜が声をかけてくる。


「・・・やってなかった。」

昨日のことでいっぱいいっぱいで忘れてたーー。

 


「フッ」

隣を見ると天野君が口元を抑えて、肩を震わせてる。

笑われてる!!!


さっき引いていった血の気が頬に集まってくる。

なんだか悔しくなって、


「笑わないでよ、天野君・・・」

と、ちっちゃい声で言ってみた。


天野君は笑いが収まって、いつもの無表情に戻ってから


「悪い。」

と、呟いた。


なんか悔しいし恥ずかしい。






「ちょっと彩花!和んでる場合じゃないよ!宿題!」


あっ!そうだった!


「ゆーちゃんに見せてもらおう!」

美桜にそう言って、まだ谷原君と言い争ってるゆーちゃんに近づく。




「柚月様!宿題見せて下さい!」

「お願いしますっ!」


私と美桜はゆーちゃんに向かってお願いのポーズをした。



ゆーちゃんは谷原君と言い争うのをやめて、


「もー、ちゃんと自分でやってきなさい。」

はい、返す言葉もございません。


でも、自分の机からノートを取って来てくれるゆーちゃんは優しい。

私の机を3人で囲んで、ゆーちゃんのノートを写す。




「あ、俺もやってなかった!柚月見せて?」

谷原君が柚月にお願いする。


「残念ながら見ての通り彩花と美桜で手一杯よ。他を当たって?」


すみません・・・。


「えー、じゃあ広樹見せて?」

柚月に断られた谷原君は天野君にお願いする。


「ああ、いいよ。」

天野君はそう言って自分のノートを机の上に出す。


「サンキュー、広樹。」


天野君、昨日遊びに行ったのに、ちゃんとやってたんだ。

凄いなぁ。





「ちょっと彩花、何ぼーっとしてるの?時間無いわよ?」

あっ、そうだ!今はそれどころじゃない!

私は写す作業を再開した。



「あー、柚月のノートは大変だよ!」

美桜が手を止めずに喋る。


「どうして?」

ゆーちゃんが聞いた。


「だって彩花のならそのまんま写してもバレないけど、柚月のは正解し過ぎでバレるじゃん?だから、ちょっとずつ間違えなきゃだし。」

また美桜が手を止めずに喋る。


「失礼な!そんなこと言うと、もう見せてあげないよ!」

私も余裕が無いので手を止めずに喋る。


「ごめんって!冗談じゃん?!」

慌てて美桜が謝ってくる。

もちろん手は動かしたまま。


「こらっ、2人共!つまらないこと言ってないで、先生来ないうちに速く写したほうがいいわよ?」

ゆーちゃんに怒られてしまった。


「「はーい」」

素直に返事をして、黙々と写す作業に集中していった。








こうして楽しい時間はあっという間に終わっていった。

このとき、あまりに楽しくて私は朝の出来事をすっかり忘れていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ