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隣の席の人  作者: 亜実香
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日曜日。昨日泊まっていった美桜とゆーちゃんがセットしてくれて、準備はばっちりだ。



美桜とゆーちゃんと一緒に外に出る。

外は寒いけど、晴れていてすごくいい天気だ。

天気予報でも、降水確率0%って言ってたし。



「彩花。もし天野君が先に待ち合わせ場所にいたら、ごめんねって可愛く謝るのよ?彩花のほうが先だったら、全然待ってないよって言うんだからね?」

玄関の前でゆーちゃんに念を押された。


「他にも昨日言ったこと忘れないよーにね?」

美桜にも念を押された。


二人とも心配し過ぎだよ。

ふと時計を見ると、9時50分。

ここから歩いて駅まで5分。

今から出るとちょうど5分前には到着出来るだろう。


「じゃあ、私そろそろ行くね。二人ともありがとう!!」



「行ってらっしゃい。」


「月曜日にまた教えてねー。」


美桜とゆーちゃんに手を振って、駅に向かって歩き出した。





駅に着いて、辺りをきょろきょろと見回した。

天野君どこだろう?まだ来てないのかな?


「佐伯さん。」

後ろから声が聞こえた。

いきなりだったので体がビクッとしてしまった。


後ろを振り返ると私服の天野君が立っていた。


学校で見る制服の天野君もカッコいいけど、私服の天野君はよりかっこよさが際立っている。



じっと天野君を見つめていたら天野君はいつもの無表情のまま顔を逸らして、


「行こう。」


と言って駅へは入らず歩き出した。



私は慌てて天野君の隣を歩く。

駅で待ち合わせだったから、てっきり電車でどこかに行くのかと思っていたが、違うみたいだ。



あっ!忘れてた!


「天野君、遅れてごめんね?」


私は背の高い天野君を横から覗くようにして見上げた。

ゆーちゃんにあれだけ念を押されたから言っておかないと。



そしたらまたふいっと、顔を逸らされた。



もしかして怒った?じろじろ見てたのが気を悪くしたかな?

天野君を見ても、表情が見えず、怒っているのかどうか分からない。

でも、心なしか耳が赤い。

寒さのせいだろうか?





しばらく歩いて天野君は映画館の前で止まった。


あっ!そうか!


「天野君映画館でバイトしてるの?」


と、私が聞いたら天野君は不思議そうな顔をした。

こんな顔もするんだ。

笑顔に加えて天野君の表情2つ目だ。


それにしても、これでバイトを代わって欲しいっていう線は消えた。

じゃあ、お礼って何なんだろう?



天野君が映画館に入って行くので後ろをついて行く。

映画館の中を見回すと、上映中の映画のポスターが貼ってある。

今、こんなのが上映してるんだなぁ。


あっ!

ある一点で目が止まった。

某アニメ映画のポスターだ。

これ、見たかったんだけど、美桜やゆーちゃんを誘っても、興味ないからって断られた。

一人で見に来る勇気もないしなぁ。



そんなことを考えていると、


「それ、見たいの?」


と、隣から天野君が聞いてきた。


「えっ!う、うん・・・」


アニメ映画見たいなんて子供っぽく思われたかな?



天野君は気にした様子もなく、


「ふーん。」


と言って、チケット売り場の方へ歩いて行ってしまった。

さっきの話何だったの?

というか、普通に映画をみるみたいだ。



しばらくして、天野君が戻ってくるとチケットを渡された。


「これ・・・」


それは、さっき見ていたアニメ映画のチケットだった。


もしかして、

「気使わせた?」


私が見たそうにしていたから、気を使ってくれたのかもしれない。

それだったら申し訳ない。


「や、俺も見たかったから。」

天野君が否定してくれる。


ってことは

「天野君もこのアニメ好きなの?」


こくんっと頷く天野君。

その仕草が可愛くて、ちょっとドキッとしてしまう。


でも今回はそこじゃなくて、天野君もこのアニメが好きってことのほうが重要だ。

私の周りにはそういう人が少ないので、すごく嬉しい。

しかも、共通の話題が出来た。



私は映画が始まるまでの間、天野君に、このアニメのどこが好きだとかをひたすら喋っていた。

天野君は私の話に相づちを打つだけで、私が話すばっかりだったけど、すごく楽しかった。



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