よん
服で悩みました。センスがなくてすみません。
現在、私の部屋にいる。
机を挟んだ向こう側には美桜とゆーちゃんがいる。
二人ともずごくキラキラした目でこちらを見てくる。
居心地が悪いよぅ・・・
昨日、天野君と別れた後、パニックは落ち着いたもののどうしていいか悩んでしまい、ゆーちゃんに電話したのだ。
そしたら、ゆーちゃんは、
「その話ゆっくり聞かせて!明日美桜も呼んで、彩花の家ね!」
そう言って、電話を切ってしまった。
そして今、昨日の出来事を二人に話した直後である。
「そんなことがあったんだー。」
ゆーちゃんがニヤニヤしながら言ってくる。
「やっぱりアレしかないっしょ!」
「やっぱりそうよねー。」
美桜とゆーちゃんがニヤニヤしながら顔を見合わせる。
二人とも怖いよ・・・
「なんなの?」
私は恐る恐る聞いてみた。
美桜が机に身を乗り出して、
「それはデートだって!!」
と、告げてくる。
デート?!
聞き慣れない単語に動揺してしまう。
「彩花にもついにこの時がきたのかー。」
「ほんと。男っ気がなくて心配してたけど、よかったわ。」
「あたしらは寂しくなるかもねー。」
「でもやっと来た彩花の春よ!しかも相手はあの天野君。応援してあげなきゃ。」
楽しそうに二人は話している。
私は完全に蚊帳の外だ。
「ちょっと待ってよ、二人とも!ほんとにただの用事かもしれないじゃん?バイト代わってほしいとかさ。」
思わず反論する。
「んなわけないでしょ!デートよ、デート!!」
ゆーちゃんに怒られた。
美人が怒ると怖いと聞くが、今思い知った。
「そんなことより彩花。明日、何着ていくか決めてんの?」
美桜が聞いてきた。
「ううん。決めてないけど・・・」
「じゃあ、今決めよーよ!あたしと柚月も手伝うからさっ!ね、柚月!」
「そうね。彩花、服見せてね。」
二人によるコーディネートが始まった。
数分後。目の前で二人が言い争っている。
「絶対ミニに生足だって!!男はそーゆーのに弱いもんなの!」
こちらは美桜の言い分。手には茶色の小花柄のミニスカートを持っている。
そのミニスカートを履くときにはいつも下にレギンスかタイツを履くんだけどな。
「初デートは清楚系の方がいいわよ!こっちのほうが彩花には似合うの!」
対するゆーちゃんの言い分。手には薄いピンクのシフォンワンピースを持っている。
それはお母さんが買ってきたものだ。
可愛いのだけれども、可愛らしすぎて、着るのが恥ずかしく、まだ一度も袖を通したことがない。
どちらにしてもいつもとは違う自分になりそうだ。
私からすればいつも通りのラフな服装でいいと思うのだが。
何をするのか分からない訳だし。
「あの、いつもの・・「「彩花は黙ってて。」」
二人に私の言葉はかき消された。
こうなっては黙っているしかない。
私は大人しく着せ替え人形にされていた。
「できた!」
二人が満足そうにこちらをみてくる。
「ほら、彩花!どう?」
ゆーちゃんが私を鏡の前まで連れて行ってくれた。
鏡の中にいつもとは違う自分が映っていた。
さっきの戦いはゆーちゃんが勝ったようだ。
ピンクのシフォンワンピースの上には、首回りにファーがついたベージュのコート。
髪はくるくるに巻かれ、右側にリボンの形をしたバレッタが付けられている。
薄くメイクも施してあり、いつもより大人っぽく見える。
髪の毛とメイクは美桜がしてくれた。
「可愛い…」
思わず呟いた。
「でしょ!やっぱりワンピースよねー」
ゆーちゃんが嬉しそうに言う。
「ミニスカじゃないのは納得いかないけど、かわいく出来てるじゃん!」
美桜も頷きながら言ってくれる。
「二人ともありがとう!!」
自分がこんなに可愛くなるとは思わなかった。
素直に感謝の気持ちを伝える。
「彩花の初デートだよ?頑張るに決まってんじゃん!ねー!」
「当たり前よ!」
二人がニコニコと頷き合う。
ちょっと待って。まだデートって決まった訳じゃ・・・
それに、
「この格好だと体動かす仕事出来ないよ・・・」
もしバイトだったらお礼にならなくなる。
「だから、バイトの線は棄てなさい。明日はその格好で行くのよ?」
ゆーちゃんの言葉は静かなんだけど、威圧感があった。
「はい・・・」
素直に返事をしたら、ゆーちゃんがいいこいいこしてくれた。
逆らうことは出来ないようだ。
「あー、でも彩花自分でそれ出来る?」
美桜が私の髪の毛を指差して言った。
自慢じゃないけど、私は不器用だ。美桜のように綺麗に巻いたり出来ないだろう。
「出来ません・・・」
「だよねー」
どうやら出来ないことは予想されていたようだ。
「あたしらまた明日彩花んち来るよ!」
美桜はそう言ってくれるけど、わざわざ来てもらうのは悪い気がする。
「じゃあ、二人共今日は泊まっていかない?そのほうが心強いし!」
我ながらいい考えだ。
夜一人だったら緊張してしまう可能性もあるしね。
「そうね。お言葉に甘えて泊めてもらおうかしら。」
「そーしよっか!」
やった!これでお泊まり会決定だ。
その夜、寝る前に美桜とゆーちゃんから、デートでの振る舞い方を叩き込まれた。
デートじゃないのに・・・