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隣の席の人  作者: 亜実香
3/16

さん

もうすぐ部活も終わる時間だ。

私は校門で天野君を待つことにした。

校門だとすれ違う可能性もないしね。



校門に立っていると、しばらくして人がたくさん出てきた。

ちょうど今部活が終わったようだ。

人混みの中に天野君の姿を探すが、いない。

サッカー部はまだなのかな?


人の波が途絶えてきた。

遅いなぁ。見過ごしちゃったかなぁ?

時刻ももう6時過ぎ。

だんだんと薄暗くなってきた。


と、その時サッカー部らしき集団が校門に向かって歩いて来るのが見えた。

その中に天野君の姿も見える。


天野君に借りた教科書を鞄から取り出す。

準備OKだ。

サッカー部の集団がこちらに近づいてくる。


「天野君!!」

声をかけると天野君はこちらをちらっと見た。


「えっ?何告白??こんな可愛い子、広樹もやるじゃん!」

天野君の近くにいたサッカー部員がからかってくる。


私が急いで否定するより先に、天野君が


「うるさい。お前ら、先帰れ。」

と、言ってサッカー部の人たちを帰してしまう。


サッカー部の人たちがみんな帰ってしまって、校門の前には私と天野君のふたりだけになってしまった。

さっきあんなことを言われたからか、少し緊張してきた。


「で、何?」


天野君の言葉に弾かれたように、私は両手を突き出す。

もちろん、天野君の教科書を持って。


「あのね、教科書ありがとう!!おかげで助かった!でも、私のせいで天野君が怒られちゃってごめんね。お礼に掃除当番変わるとか、宿題やってくるとか、何でもするから何でも言って!!」


よし、言いたいこと全部言い切った。

これで天野君に逃げられる心配はない。


「うん。」

天野君はそう言って教科書を受け取った。


何の「うん。」なのかは分からないが、ちゃんと伝わったようだ。


「家、どこ?」

いきなり天野君が聞いてくる。


よく分からないが、

「駅の近くだよ。」

と答えておく。


すると天野君は駅の方向に向かって歩きだした。


「天野君の家も駅のほうなの?」

と、聞いてみたが返事はない。

相変わらずの無表情で感情も読めない。


仕方がないのでそのままついていくことにした。



天野君と歩いている間、会話はなかった。

ただ交差点があるごとに、

「どっち?」

と、聞いてくる。


たぶん家の場所を聞かれているのだろう。

そう思って私が

「あっちだよ。」

と、答えると、天野君は黙ってその方向に向かって歩いていく。

その繰り返しであっという間に家に着いてしまった。


暗くなったから送ってくれたのかな?

「送ってくれて、ありがとう」


「日曜、10時に駅前。」


何のことだろう。

ありがとう、の返事ではない。


わからない、という気持ちを視線に込めて天野君を見上げる。


「礼。」

短い返事が返ってきて、天野君はスタスタと歩いて行ってしまった。


そっか、お礼のことか!

って、えーーーっ?!

掃除とか宿題じゃないの??


お礼って何させられるんだろう?


思いもよらない返事に私はパニック状態だ。

とりあえず、落ち着け私!!



ようやく落ち着いた頃に、天野君が歩いて行った方向をみると、もう天野君の後ろ姿は見えなくなっていた。




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