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隣の席の人  作者: 亜実香
1/16

いち

初めての連載です。見切り発車なのでどこまで続くか分かりません。短くなる可能性もあります。また1話1話が短めです。文が拙いのはご容赦ください。

やっちゃった・・・



ある金曜日の昼下がり。

私、佐伯彩花は絶賛困っています。


休み時間も残り後5分。今日最後の授業の準備をしようと机の中をみると、教科書がない。

焦って鞄の中やロッカーの中も探したけど、ない。

ひとしきり探してから時計を見ると、授業が始まる3分前。

今から他のクラスの友達に借りにいくのは無理っぽい。



どうしよう。もっと早く準備すればよかった。


まあ、今更言っても仕方ない。

どうにかこの場を切り抜けなきゃ。



運の悪いことに次の授業は私の苦手教科である、数学。

ただでさえ授業について行けないのに教科書なしで授業を受けるのは無理だろう。

・・・隣の人に見せてもらうしかないかな?

私の席は窓際の一番後ろ。

隣の人は右側の天野広樹君しかいない。



正直、天野君苦手なんだよね。


天野君は俗に言うイケメンだ。

何人もの女の子に告白されているらしい。

実際私も天野君が女の子に呼び出されているのを何度か見かけた。

確かに整った顔をしてる。

しかも、身長180cmもあるらしくスタイルがいい。

身長152cmの私とはえらい違い。

けど、笑った顔は見たことなく、いつも無表情で何を考えてるのか分からない。


だから私は天野君が苦手だ。

当然話したこともない。


話しかけづらいなぁ。

でも教科書ないと困るし・・・



そのとき、授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。

遅れているのか、まだ先生は来てない。

けれど、もう躊躇している時間はなさそうだ。

私は思い切って声をかけた。


「あ、あの、天野君。教科書忘れたから、その、見せて欲しいんだけど・・・」


すると、天野君は教科書を私の方へ差し出してきた。

どういうつもりだろう。

同じ授業を受けるんだ。

教科書を私に渡してしまったら天野君が困ってしまう。


私が戸惑って受け取らないでいると、天野君は私に教科書を押し付けてきた。


「ちょっ、天野君っ!!」


慌てて返そうとした瞬間、先生が入ってきた。

私が先生に気をとられた一瞬の隙をついて、天野君は自分の机に伏せってしまった。



「じゃあ、授業始めるぞー。」

先生の言葉で授業が始まった。



「天野君っ、天野君っ」

隣で伏せっている天野君に小声で呼びかけた。

反応はなし。

聞こえてはいると思うけど、ぴくりともしない。

もしかしてこの短時間で寝ちゃった?

使っちゃっていいのかな?


しばらく悩んでいたけど、天野君は伏せったままで反応もなく、どうしようもないので、有り難く使わせてもらうことにしよう。



一番後ろということもあって、先生は天野君が寝ていることに気づいてないようだ。

内容はどんどん進んでいた。

これ以上遅れると大変なので、私は授業に集中した。






練習問題に苦戦していて気づかなかったが、いつの間にか先生が机の横に立っていた。

先生は私に背を向け、天野君を見下ろしている。

天野君は伏せったままだ。



「おい、天野、起きろ」

先生がドスの効いた声で天野君を呼ぶ。


天野君はゆっくりと起き上がった。

先生越しに天野君の顔を見たが、相変わらずの無表情で感情が読み取れない。


「何で寝ているんだ。教科書は?」

先生の質問にも無表情で黙ったままだ。


それが先生の癪に障ったらしい。


「教科書も持たずに寝ているなんてやる気がないのか!!後で職員室に来いっ!!」


先生の怒号が教室に響いた。

言い終わると先生は大股で教壇へと戻って行った。



私のせいだ。私が教科書を借りてしまったから。


私は先生に事情を説明するべく、立ち上がって教壇に向かおうとした。


しかし、立ち上がる瞬間に目の前に手が現れ、止められた。

天野君の手だ。


私は困惑して、天野君の方を見た。

「天野く、」


えっ・・・!

私は途中で声を失った。


天野君が笑ってる。

すごく綺麗。

いつも無表情な分、余計にそう思った。

思わず見惚れてしまう。


チャイムが鳴った。

その音で私は正気に戻った。



「天野、職員室行くぞ」

そう天野君に声をかけてから、先生は教室から出て行くところだった。


駄目っ!

説明しにいかないとっ!

急いで走り出そうとすると、またもや天野君に止められた。


「天野君、何で!?説明しにいかないと!私のせいなのに!!」

思わずそう言うと、天野君はいつもの無表情で


「いいから。」

と、それだけ呟いて教室から出て行った。



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