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近未来に超能力で暗部エンジョイライフ  作者: 神萄 零弩
第一章 騒乱の火種 【Premonition_of_a_battle】
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第二話 介入-Intervención-

-四月八日 PM8:48-


榊原はとある施設にいた。いや、施設というよりは基地といったほうがいいかもしれない。その『基地』のとある一室には、巨大なモニターに最先端のパソコン、アサルトライフルやらサバイバルナイフが置いてあり、そして目の前には白肌の美人がいる。


本来ならイヤッホーイレベルのハイテンションになるべきなのだろうが、状況が状況だし、何よりその美人さんの格好が酷い。こういうと語弊があるかもしれないが、服装が可笑しいというものではない。ただ、右肩から左の腰にかけて、長さ1mほどの日本刀を差しているのである。しかも、その美人改め危険人物からよろしくされ今握手を求められているといった状況である。


(何でこんな事に...)


それもこれも、何だかんだで榊原にもよく分からないので若干回想してみることにする――――――






━━━━━回想━━━━━






-四月八日 PM5:24-


春なのに分厚いコートを着た男は県立鉄高校に佇んでいた。


「なるほど。民間人から注目を集めないために爆音妨害ロールディスターバンスを設置してあるのか。尤も、ろくでもない人間に任せたせいで機材も台無しだがな」


フッ、と男は嘲笑気味に笑っている。爆発妨害(ロールディスターバンス)とは、本来工事現場などで使われる立方体の機材だ。夜に工事音が五月蝿くて眠れないという苦情から開発されたのだが、一辺3mという巨大なサイズのお陰でほとんど使われなくなり、代わりに音が発生しづらい工事用具を開発することで解決したのだ。

とはいえ、一般人にはそう簡単に手に入れられるものではない。おそらく一般人に出来るだけ気付かせない為に、爆発音を無くそうと盗んだのだろう。


「そんな事よりさ、彼女はいいのかい?見たところ君の親友か何かに見えるけれど」


そこで榊原は思い出した。沙紀は爆弾魔に抱えているところに腕をこの男の謎の攻撃によって切り落とされたのだ。1m超ほどの高さから受身も取らずに落下すれば、怪我は間逃れられないだろう。


「沙紀!!」


「大丈夫だよ。Lank.8の僕の能力、水流操作(ハイドロハンド)で一時的に浮かせてるからね。」


見ると、ウォーターベッドに体を預けるように沙紀が浮いていた。

怪我は無いか。あれ?水流操作(ハイドロハンド)?禁書?


「余計なことは考えないようにね?」


「はっ、ハイ!!」


考えを読まれた!!どうも自覚はあるらしい。


「それにしても『革命軍』が学校を狙うなんてね...まぁ送ってきた刺客から察するに本腰を入れてたわけじゃないと思うけど、後続が来ると面倒なんで一旦この場を離れるとするか」


とりあえず悲惨な爆破現場を離れようとした瞬間だった。そこで異様な雰囲気に気付く。

静か過ぎる――――――


爆破やら絶叫やらで、大勢の生徒や教師の野次馬が集まっていたというのに、誰一人として口を開こうとしない。普通ならザワザワくらいしていた方が自然なのに。


「私の催眠(ヒュプノシス)で操られているだけですよ」


まただ。また変なおじs――――――基、白髪の少し背の低い初老の男がいた。


「貴方達は一般人に手を出すことはできないでしょう?そこをついて一般人で攻撃しようというわけです。」


確かに誘拐されかけた少女を助けた人間が一般人を構わず殺すわけがない。故に抵抗できない。反撃できない。


「『殺れ』」


初老の男がそう言った瞬間、大勢の人間が一斉に襲い掛かってくる。一人一人相手であれば勝てるかもしれないが、数十人の高校生と大人を一斉に相手にしては、榊原の身体能力上昇(フィジカルレイズ)では勝てない。隣に居るコート男なら勝てるかもしれないが、おそらく相手は無事では済まないだろう。


「ここはひとまず逃げるぞ!!」


コートの男が言う。この状況では仕方ないだろう。コート男が能力を行使したのか、水が壁のような形になり、その形を保ったまま水の中で強い流れが起きていることで追跡を防いでいる。これならば大きな怪我の心配も無いだろう。

校門を出ると一台の車があった。最近ニュースでやっていたロケットランチャーが降ってきても大破しないとかいう、大統領や首相専用に作られた何処からどう見てもワゴン車―――――この時代にはワゴン車なんて無いのだが――――――に見える車だ。


「乗れ!!」


言われるがまま榊原は黒い車に乗る。ドアを閉めたときに、窓を通して見た景色が黒いなことに気付く。どうも中のガラスからは外は見えない仕様らしい。榊原がドアを閉めると同時に、車は氷の上をすべるように静かに、スムーズに動き出す。状況に追いつけないで呆けている榊原をよそに、コート男は勝手に話を進める。


「奴らが君の情報を持っていたということは、君の自宅も危ないだろう。ひとまず『俺達』の本部に来てもらう」


学校が襲撃されのだから、被害者の家も特定されているという危険があるというのは分かる。だが榊原にはもっと大切なものがある。


「美優は!?俺の妹はどうすんだよ!?」


榊原には唯一同棲している家族、美優という名前の妹がいる。妹は狙った対象ではないだろうが、だからといって安全だということは決して無いだろう。


「その辺は大丈夫だ。今頃下部組織の連中が保護している頃だろう」


知らない人間に肉親の命を預けるのは榊原にとって心許ない限りだが、自分よりは頼れるだろうと無理矢理自分に言い聞かせる。


「んで?あんた達の本部ってのは何処なんだ?」


「それは教えられない。興味本位の質問に対して教えていたら僕達の仕事に差し支えるからね。君も一緒に戦ってくれるというなら話は別だけど」


「お断りだ。『正規軍』なんて政府の犬はごめんだね」


「そうか」


コート男は短く返すと、それ以上は何も言ってこなかった。






-四月八日 PM5:48-


ある施設に着いた。山の中に堂々と立っているその施設は、どこからどう見ても病院である。


「・・・・・は?」


病院が正規軍の総本山なワケがない。という事は・・・?車の中には怪我人もいなかったはずだ


「おぃおぃ。何で病院なんだ?怪我人は見たところその車には乗ってなかったし、病院なんて正規軍の根城じゃねぇだろ?」


「ん、あぁそうそう。一応言っておくけど、僕が入っている組織は『正規軍』じゃないからね」


「・・・・・は?」


あれ?なんかデジャヴ?いやそんな事はどうでもいい。正規軍じゃなければコイツは何なんだ。どうやって革命軍の動向を掴んだのか、何をする組織に入っているのか。疑問が次々とわいてくる。


「こっちこっち」


付いていけない榊原を他所(よそ)に、コート男は病院の自動ドアを通り中へと入っていく。


「しっかし誰もいないんだな。まるで廃病院だ」


建物自体はそこまで古くは無いが、今入ってきた榊原達以外に誰一人としていない。それなのに電気はしっかりついている。


「ここは正真正銘廃病院だよ。正確に言えば本部をカモフラージュするためだけに作られた病院だから、病院としては機能してないだけなんだけどね」


「へぇ~」


カモフラージュのためだけに病院を作るとはとんでもなく大規模だが、そこはあえて突っ込まないようにする。そんな資金があるなら募金でもしてろなんて言わない。言いませんとも。


コート男は今入ってきた手術室の壁に設置された指紋認証や網膜認証の付いたドアを開ける。


「コッチだよ」


ドアの向こうは階段が広がっていた。その階段を降り、通路を突き当りまで進むと、無機質なドアがあり、自動で開く。


「あっ、博士おかえり~」


そこにいたのは白肌でオシャレ美女というこの世のものとは思えない(良い意味で)人間がいたが、日本刀を背中に差している。正気の沙汰とは思えない。イメージが白肌美女から危険人物に絶賛降下中である。


「あなたが榊原恭也君ね?」


「は、はぁ・・・」


榊原としては知っていてもらえて嬉しいような不安なような微妙な心情だ。


「そう。じゃあ、よろしく」


そして突然意味不明なよろしくをされたわけだ。




少し回想が長くなったかもしれないが、これで現在に至るというわけである。






-四月八日 PM8:48-


「じゃあ、よろしく」


そんなこんなでいきなり美人によろしくされた。だがこの美人のイメージが危険人物へと成り下がってしまった俺としては、何をどうお願いされても微塵も嬉しくない。


「ちなみに貴方に拒否権はないわよ?」


「何のだよ・・・」


拒否権がないって・・・あなたに人権なんてものはありませんよ発言されたみたいでとてつもなく怖い。何それこわい。


「あれ?博士、説明してなかったの」


「・・・・・」


博士と呼ばれたコート男は榊原たちがいる一室に入ってくるなりPCと睨めっこして日本刀美女をガン無視している。三秒四秒と沈黙が流れ、やっとコート男が反応する。


「あぁ忘れてたよ。僕忙しいから、四百苅(しおかり)が説明してやってくれ」


仕方が無いなぁもぅ、と言いつつ説明を始める。その言い方が若干可愛いと思ってしまったなんて在りえない。現実ではない。決してだッッ!!


「貴方がいる此処は暗部、通称『アビリティ』の本部よ。ちなみにこの存在は正規軍にも革命軍にも知られていない。いわば非公式の組織ね。」


「ほぉ~」


四百苅(しおかり)と呼ばれた美女は、右手を額にあててはぁ~、とため息をつくと、説明をはじめる。


「いまいち現状を理解してないようだけど、貴方は日本で最高機密級(トップシーックレットレベル)そのものの真っ只中にいるのよ?」


「へぇ~、で?」


「それほどの秘密を知っておいて、簡単に返すと思う?」


ま、まさか・・・


「今思ったとおり、貴方には暗部『アビリティ』に参入して、任務に参戦してもらうわ」


予想はしてたけど、マ、マジですか・・・・・。




こうして、榊原恭也は暗部組織という革命軍にも正規軍にも知られていない組織に入ることになった。その事実さえも操られた結果だとは知らずに。

爆音妨害(ロールディスターバンス)

一定以上の大きい音を自動で感知し、その音の周波に相反する周波の音をぶつけて完全に中和する箱型の機械。

便利だが、巨大で持ち運びが不便な点と、音を最小限に抑える工事機械が発明されたことでほとんど使われなくなった。設置されれば半径1km程をカバー出来る。


催眠(ヒュプノシス)

触れた人間の精神に干渉し、幻覚を見せたり幻聴を聴かせられる。人格の完全な支配も可能。ただし、服の上からではなく肌に直接触れなければならない。

操る人間が少なければ少ないほど、能力の精度が上がる。(操る人数が少ないほうが運動能力を本来の状態のまま保てるなど。逆に多ければ、操られている人間の動きは鈍くなっていく。)


コート男

通称:『博士』

今のところいろいろ謎。能力はLank.8の水流操作(ハイドロハンド)。能力名はぶっちゃければ禁書のパクりだが、作者のネーミングセンスが皆無だったので仕方が無かった。

金髪爆弾魔の左腕を切断した攻撃は知っている人も多いかもしれないが、強力な水圧で物体を切断するウォーターカッター。


『アビリティ』にいた白肌日本刀美女

能力は謎(っていうか決まってないw)。ちなみに本名は四百苅(しおかり)(あい)

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