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近未来に超能力で暗部エンジョイライフ  作者: 神萄 零弩
第一章 騒乱の火種 【Premonition_of_a_battle】
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第一話 思惑-Expectativas-

一応内容は濃いものにしようと努力しています...ハイ...

話が急展開すぎますが、そこは温かく見守ってやってくださいw

-四月八日 PM5:18-


授業を終えた教室には誰もいない。はずなのだが、榊原がいた。

夕暮れの教室で、榊原恭也は机に覆いかぶさるような形で両手を枕にして安眠中だ。

そんなときに、ふと誰かの声が聞こえた。



『...か.....ら..ぇ』



誰かの声が脳が情報を整理できないせいか、途切れ途切れに聞こえる。



『きょ..ゃ...たら』



どうやら起こされてるっぽいので、榊原は眠たい目をこすりながらも頭を上げる。


「おはよう♪」


「お前かよ...」


ソコにいたのは予想通り沙紀だった。まぁ、榊原には沙紀以外、生徒はおろか教師すら話しかけては来ないのだが。


「『お前かよ』とはご挨拶だねぇ」


「いや、別にそーゆー意味じゃねぇし。お前以外にいないだろ」


俺は周りを見回してみるが、俺と沙紀以外は誰一人としていなかった。どうも教室で担任の先生が長い話をしている間にいつの間にか眠ってしまったらしい。


「ねぇ、一緒に帰ろう?」


榊原と沙紀の家の方角はほぼ同じだ。沙紀としては、榊原以外に一緒に帰る人がいないので、榊原が起きるまで待っていたという事だろう。

だが、榊原は帰るため準備が整っていない。まぁ大したことでは無いのだが。


「悪い。先に昇降口に行っててくれないか?後で行くから」


「うんっ!じゃあ先に行ってるね♪」


沙紀は可愛らしくトテトテと教室の出口の方へと向かっていく。


「はぁ~」


疲れが溜まっているのか、榊原は深いため息をつきつつ、適当に鞄の中に教材を放り込んで教室をあとにする。


(トイレ行ってから帰るか)


そして鞄を片手にトイレに進行方向を定めた正にその時だった。


下の階から、ズゴォッッ!!という今まで聞いたことのない爆発音と振動が伝わってきた。三年の教室は二階なため、おそらく爆発は一階だろう。


「何だ?」


普通なら先生の放送を待って、それから避難するべきなのだろうが、榊原はそういう訳にもいかない。好奇心ではなく、たった今沙紀が一回に行ったばかりなのだ。爆発に巻き込まれたって何ら不思議じゃない。


「クソッ!!」


榊原はトイレに向かっていた足を下の階に行く為の階段へと向け、超能力を使って文字通り疾走する。


(爆発の規模は分かんねぇけど、アイツは大丈夫だよな!?)






-四月八日 PM5:19-


現場はイメージ通りの惨状だった。誰かによって引き起こされた爆発によって、コンクリートでできた校舎は粉々に破壊され、窓は爆風によってその全てが割れている。


「沙紀!!」


榊原は思わず叫んだが、沙紀の返事は無い。代わりに飄々(ひょうひょう)とした男の声が返ってきた。


「あらら?心配するヤツはいないから派手にやっていいって言われてたんだけどねぇ」


誰だ!!と榊原は言おうとしたが、喉まで出掛かっていたその声は出なかった。爆発を引き起こしたと思われる男が、気絶している沙紀をお姫様だっこをするように抱えていたからだ。

榊原にとって唯一無二の親友で、恩人でもある沙紀。その沙紀が不審者によって抱きかかえられているのだ。それを知った瞬間、榊原は咆哮しながら不審者の下へ拳を握り締めながら向かっていた。


「離しやがれえええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」


榊原が全力で超能力を行使すると、100m6秒程の速度が出た。そのままの勢いで殴られれば、目の前の金髪に耳にピアスを付けた不審者もタダでは済まないだろう。喰らえば昏倒は避けられない拳を前に、しかし爆弾魔は余裕だった。


「おやおや怖いなぁ全くもう。別にコッチは危害を加えるつもりは無いんだからね?」


小馬鹿にしたような声が返ってくるが、榊原はそんなものは気にせず全力疾走する。爆弾魔まであと15m。


「メンド~だな」


男はそう言いつつ、転がっている瓦礫を拾い、それを道端に捨てるような動作で榊原の方に投げる。全力で投げてダメージを負わせるというなら分かるが、今の榊原はそんなもの簡単に避けることが出来る。


榊原は余裕で瓦礫を避けるが、そこで一つの事実を思い出す。そもそも、この惨状を作り出したのは誰なのか。爆発を引き起こしたのは目の前の男じゃないのか。だったら、爆発が超能力によって引き起こされていてもおかしくはないのではないか。むしろその方が自然じゃないのか?正規軍の捜査にもかからない、原形をとどめない超能力。


「ッッ!!」


榊原は相手の意図を知り、必死に身をよじって瓦礫から少しでも距離をとろうとする。だが、もう遅い。爆弾魔によって投げられたその瓦礫は、榊原と3mと距離が無いところで小爆発を起こした。


「ぐッ・・・ああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


小爆発とはいえ、爆発の衝撃を近距離でうけたのだ。爆発を近距離で受けた榊原は全身をコンクリートの地面に叩きつけられ、細かな破片も突き刺さっている。


「おとなしくさえしててくれれば危害を加えるつもりは無かったんだけどな~。ちなみに俺の能力はLank.6の物質爆発サブストブラスターつって、一度触れた物質を自由に爆発させることが出来るんだよ。爆発の規模も任意だな。お前のLank.4の身体能力上昇フィジカルレイズで勝てるとでも思ったのかにゃ~?」


またもや馬鹿にしたような声が昇降口に響き渡る。そこで、榊原はフラフラと立ち上がりながら目の前の男が言った言葉を思い出し、一つの疑問を浮かべる。


(何でコイツ俺の能力を知ってるんだ・・・・・?)


他人の超能力なんて、個人情報と同じで簡単に知ることは出来ない。まして、一度もあった事の無い人間の超能力が何かなんて、分かるわけもない。

だが、そんな疑問は一人の男の声によって掻き消された。


「ほぅ、さすが革命軍だな。中々高位能力者がいるらしいが、しかし『戦闘』においてここまで素人の雑魚を寄越してくるとは思わなかったぞ」


その時、榊原は確かにその声を聞いた。春なのにも拘らず、分厚いコートを着た『異常』な男。


「革命軍がこの学校を襲撃すると聞いて、初めは革命軍が一般人に手を出す訳ないと思っていたんだが・・・まぁそんな事はどうでもいい。『戦闘』においては必要の無い話だ。一般人に手を出したからには、自分がどんな運命を辿るかなんて、問わなくとも分かっているだろう?」


その直後、そのコート男から殺意が増幅した。いや、今まで他人の殺意というものを榊原は感じたことなど無いが、そんな感じがした。まるで、背筋をゆっくり指で撫でられるような不快な感覚。ゾクリと体の芯のようなものが突き刺される感覚だ。


「だっ・・・誰だテメェ!!」


爆弾魔にとってもイレギュラーな事態なのか、男は初めて焦ったような声を出す。


だがそれに分厚いコートの男は答えず、ただ右手をコートのポケットから出し、下から上へとあげた。たったそれだけの動作な筈なのに、榊原の真横をある程度切れ味のあるものが一瞬通り、直後一人の絶叫が響いた。


「うっ、ぐッああアアぁぁァァ!!!!」


それに呼応するかのようにブシューという生々しい液体が吹き出る音が聞こえる。その直後、ボトリというある程度重みがあり、柔らかい物が落ちる音が聞こえた。




爆弾魔は、左腕をきれいに切断されていた。




片腕を失ったことで、バランス感覚を失ったのか、爆弾魔は受け身もとらずに床に腰から無様に倒れる。爆弾魔は無意味と分かっていながらも自分の左腕を探している。


(あの...コッチに左腕あるんですけど...)


急展開についていけない榊原を無視して、コート男はゆっくりと爆弾魔へと近づく。


「...ぅっく..ちょ、ちょっと待ってくれよ。俺は『上』から命令されてやっただけで...そっ、そうだっっ!!報酬がヤバかったんだよ!!高校生を誘拐するってだけで2500万だぞ!?やらない人間が何処にいるんだよ!!」


呼吸困難になっているのか、嗚咽が混じりつつも必死に言い訳する姿はまさしく小悪人である。


「2500万?そりゃ問題だな...」


「だっ、だろ?」


「あぁ、何時から人の命ってのはそんなに軽くなったんだろうな」


え?という顔をする子悪人の顔面を、分厚いコートを着た男は踏みつけ、そのまま全力で力を入れて後頭部をコンクリートに叩きつけ、容赦なく爆弾魔の意識を奪った。


「怪我はないか、少年」


それは、榊原恭也という一人の男が戦いに巻き込まれる予兆だった。

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