第十七話 変調-Abnormal conditions-
うわぁどんどん変な方向に進んでいくww
-四月二十七日 PM10:51-
「どうなってんだこれは・・・・・」
榊原はげんなりしていた。
というのも、つい先程目が覚め、現在時刻を確認した時「もうちょっとで11時じゃん!!やべー妹どうしよー」とか焦りつつ、自分が寝ていた暗部の病院から総司令室まで来た時だ。
そこには当然、博士や四百苅、それに加えて多くとも向垣内くらいしかいないと思っていたのだが
「はいお茶どうぞ」
「あぁすまないな」
「そんな事よりぃ!いつの間にか事件が解決してたってどういう事よ!!ねぇ~唯愛ちゃん!」
「はぁ~い。私達も混ぜてくれないなんて不公平すぎますよぅ~」
上から順に、四百苅、辻嵐、何か知らない人、瑠璃垣の順番で喋っている。
なんだか女子トークに花が咲いているようだった。というか、瑠璃垣や四百苅は分かるとしても、何故にテロ組織のリーダーや知らない人まで混ざっているんだろう。
げんなりしつつも、若干視線を左に向けてみると、コートを着込んだ博士、筋骨隆々の身長が2m近い向垣内、それに灰色のスーツを着込んだ見覚えのある空間移動者が手で額をおさえ、「はぁ~」という溜め息が聞こえてきそうな表情をしている。
「どうなってんだコレ・・・」
呆けていると、その様子に気付いたのか博士が説明を始める。
「一応『真実の希望』は、暗部や正規軍、それに何故か革命軍の助力もあってほぼ完全に鎮静化出来たんだよ。まぁ殺すというよりは、ほとんどがどこかしらの組織に吸収されたみたいだけどね」
「へぇ~。んじゃ、あの知らない人はダレ?」
知らない人が勝手に入っていい場所だったなんて知らなかったよ、と榊原が間髪入れずに言うと、博士は苦笑した。
「違う違う。あの人は瀬良川槻螺。『アビリティ』のリーダーなんだよ」
「・・・・・・・ぇ?」
何ですって?アノ、いかにも自分お酒飲んでますオーラ全開のお姉さんが『アビリティ』のリーダー?
「じゃあ何で今まで出てこなかったんだよ」
ほとんどは家にいたとはいえ、榊原だって暗部に何週間か属している。それなのにリーダーと今まで対面してこなかったなんて可笑しな話だ。
「あの人はLank.10の能力者だからね。色んな場所から要請が入るんだよ。来てくれってね」
「ほぉ~。っつか、それはいいとしても酒飲んでるのはおかしいだろ」
榊原が苦笑しながら言う。四百苅と辻嵐は呑んでいなさそうだが、肩を組みながら楽しそうに頬を赤らめている瀬良川というリーダーさんと、明らかにあなた未成年ですよねという瑠璃垣は絶対呑んでる。間違いなく呑んでる。
「あぁ、あの人たちが飲んでるのはココアだよ。君も飲むかい?」
「何でココアで飲み会みてぇな雰囲気になってんだよッッ!!」
思わずツッコんでしまってから、榊原は後悔する。博士や向垣内、それに唯誠まで榊原の方を見ながら笑っている。
何だか恥ずかしいという感情を表に出さないようにしつつ、榊原は疑問を口に出す。
「そういえば、ココアって誰が淹れてるんだ?」
「「お待たせ~」」
榊原の質問に答えるかのように、二人の女子の声が聞こえた。博士が「あの二人だよ」と声のした方を指で指す。
その指と声のした方を辿っていくと、その先にいたのは沙紀と美優だった。
「なっ・・・・・!!お前ら何やってるんだよ・・・!!」
「何って、皆さんにココアを淹れてるんだよ」
「だよっ♪お兄ちゃん」
沙紀に続いて言う美優。まぁ、何となく沙紀は碧梨達を倒した後に会ったような記憶があるのだが、美優が何故こんな所にいるのか分からない。というか、来てほしくなかった。
「美優、お前どうやって此処まで来たんだ?」
「うん・・・実はあの後、心配になって追ってきちゃったんだよ・・・。そこの病院に着いた時、お兄ちゃんが中に入っていくのが見えて・・・表のほうで止められちゃったけど、そこのコートの男の人が出てきて、恭也の妹ですって質問したら中に入れてくれたんだよ」
美優は弱弱しく言いながら、博士の方を指差す。
「なるほどな。でも、博士何でそんなに簡単に入れてくれたんだ?巻き込ませまいと退けるのが普通じゃないのか?」
俺の問いに対し、博士は迷う事無く言った。
「お前の妹相手じゃ、無礼な振る舞いをする事は出来ないだろ。」
そういう事か。でも、それでも博士が易々と暗部の中に入れてくれたのが何故なのか分からない。むしろ、裏があるように感じてしまう。
「そう。正しい判断ね。ここらはもうじき戦争になるし」
不意に、本当に不意に少女の声が聞こえた。気配を微塵も感じなかった。それに気付いてか、博士は戦う体勢を整え、四百苅は日本刀に手をかけ、辻嵐は手を少女の方へ向け、瀬良川はキッと少女の方を鋭い目で睨んだ。
美優や沙紀、瑠璃垣なんかは既に向垣内や咲峪がジリジリと少女から距離をとり、その背中へ避難させていた。
俺でも分かる。コイツは普通じゃない。
「そんな怖い目で見ないでよ。今回はちょっとした真実を伝えに来たんだから」
そう言うと、見た目15歳くらいの少女は、今までとは明らかに違い、厳かに口を開いた。
「貴方、榊原恭也さん」
「え? 俺!?」
いきなり指を差され、驚く榊原。自分に何か洋画あるのだろうかと思いつつも、少女は話を続ける。
「貴方達はね、選ばれた存在なの」
それは、さらなる巨大な戦いに巻き込まれる合図でもあった。
-四月二十七日 PM10:57-
「フフフ。こんな夜中にパソコンなんて。目が悪くなるわよ?」
「うるせぇ。高性能のナノマシンを有する人間の目が悪くなるかよ」
正規軍の総本山の内部、『休憩室』にて、二人はいた。焔羅と、見た目15歳くらいの少女。ワンピースを着た少女。
「突然だけれど、貴方に伝えたいことがあるの」
「あぁ?後にしろ。つぅかテメェ、どうやって此処まで入ってきやがった。少ないとは言えない数の警備員がいたはずだぞ」
「そんなモノ。私の能力の前じゃ何の役にも立たないわよ」
「あっそ。でもなぁ、俺は暫定とはいえLank.10なんだよ」
パソコンを弄りつつ腰掛けていたソファから殺気を放ちながら立つ焔羅。その手は簡単に脅すかのよう二ボキボキと鳴らされている。
「いえ、私は戦いに来たのでは無いのよ」
「はァ?」
「日本が何十年か前、諸外国と何か悪い企みをしていたのは知ってる?」
更なる大きな戦い。紛争よりも大規模。それが意味するものは―――――
-四月二十七日 PM11:03-
革命軍の医療室にて。
「その昔ね、諸外国と日本が連携して非公式の実験を行ったのよ」
「勝手に話を進めんじゃねぇ。つか、だから何なんだよ」
不知火緒方は一人の少女と会話していた。見た目15歳くらいの少女。ワンピースを着た可愛らしい少女。だがそのワンピースは、真紅の血で真っ赤に染められていた。更に、その右手にはサバイバルナイフが握られていた。
「話は最後まで聞くものよ。貴方達はね、選ばれたの。つまり、その非公式の実験の数少ないいまだ生存している被験者なのよ」
その少女の登場は、平和を求める人間に新たな破滅を与え、絶望させるものだった。
そしてその少女は、一つの物語の鍵となる重要な情報を有しているのだった。
三時間くらいで適当に書いてしまったので誤字とかあったら教えてください(´・ω・`)