第十四話 各々-Cada uno-
「あれ・・・俺の出番が無くなってきてない・・・・・?」
七人補完計画唯一の被験者にして、この物語の主人公―――――榊原恭也
「いやいやいや、別にキャラがパッとしないとかそういう事は全然ないデスカラーwwあっ、あと最後に重大発表があるから見てね~」
『Ability』の作者―――――神萄零弩
-四月二十七日 PM6:02-
辺りが暗くなってきている第24区には、ジェット音と戦闘音だけが響いていた。
現在、『真実の希望』のリーダーでLank.10の辻嵐碧梨と博士、四百苅藍と空間移動者である(らしい)咲峪結誠が交戦中である。
時には水が弾け飛んだり、時には何も無い空間に突然物が現れたりと派手な戦いを繰り広げているのだが、
「俺だけ置いてけぼりかよ・・・」
この物語の主人公であるはずの榊原恭也は、移動手段と攻撃手段として使った天空狩人の中に居た。つまらなさそうにシートにあぐらをかきながら。
「仕方ないですよ。恭也さんは、前回の任務でその特殊な能力によって幹部クラスには昇進したものの、能力的にはLank.4なんですから。Lank.10や8や7が居る所では影が薄れてしまうでしょう」
天空狩人を操作している操縦席の方から声が飛んでくる。解釈の仕方によっては使い物にならないとも聞こえるその言葉に、しかし榊原は怒りという感情を覚えることは無かった。
「まぁそれもその通りなんだがな。折角出撃しておいて何もせずに帰ってきましたなんてバカみてぇだろ?」
この運転席に座る男だって、榊原達を運ぶという任務をこなしたのだ。直接戦闘には加わっていないものの、それも重要な事だ。それに比べ、恭也は今のところ何もしていない。
「表立って何かをすることは出来なくとも、裏方でも何か出来ることはあるというものです。貴方だって、何か出来ることはあるでしょう」
「何かしら・・・ねぇ・・・・・」
ヘリの飛ぶ音とジェット音が響くヘリの中で、運転席の男に聞こえないように恭也は言った。だが、こんな状況で出来ることといったら戦いに参戦することぐらいだろう。
『何だ貴様、そんなに戦いたいのか?』
不意に声が聞こえた。いや、『聞こえた』と表現するのは語弊を生むかもしれない。聞こえたというよりは、体の中から響いてきたような感じだ。それでも恭也は問わざるを得ない。『耳を通して』という方法以外に声が聞こえるなんて信じられないのだから。
「なぁパイロットさん。何か言ったか?」
「いえ、何も言っていませんが。どうかしましたか?」
予想通りの返答だった。それに、ジェット音やヘリの飛ぶ音が五月蝿くて、今だって断片的に聞こえた単語を拾ってようやく文として理解できたのだ。それに比べ、さっきのは随分とクリアというか、ハッキリと聞こえた。
『戦いたいのか?あいつらに貢献したいのか?』
また聞こえた。この状況では明らかに不自然な声。理解できない現象。説明できない現象。だが、それらを無視して榊原は言う。
「あぁ、俺も戦いたいさ。誰かに押し付けるなんて事はしたくない。本当なら自分ひとりで全部背負いたいくらいだよ」
そうか、という榊原以外に聞こえない声が響いた。
「ん?何か言いましたか榊原さん?」
パイロットは言いながら榊原のいる方を振り返ったが、そこには誰もいない空間が広がっていただけだった。
-四月二十七日 PM5:17-
「ハハッ。なんだよそりゃ」
蒼杜優貴は混乱していた。目の前で起きている事態が理解できない。ただ分かっていることは、今がイレギュラーな事態だということだけだ。目の前の不知火緒方が不思議な能力で浮遊し、喋り方が変になっている。それしか分からない。
「ウィングテンカイ」
不知火が聞き取れないほど早口に、抑揚の無い声でそう言った直後、不知火の背中に翼が出来た。
いや、それは翼を形どってこそいるが、それを形成する物質が妙だ。それを構成していたのは、正方形2つと長方形4つを組み合わせた直方体に、正方形部分2つに四角錐を取り付けた形のクリスタルのようなものだ。それが幾つも連なって、翼という一つの形状を作っている。その全長5m程の翼が不知火の背中に6枚3対ある。
おそらくこの翼は飛ぶ為のものではないだろう。浮遊していたのは翼を出す前だし、飛ぶ為と考えない方が自然だ。
となると、考えられる用途としては
「攻撃かッッ!!」
蒼杜が言った直後、ズァ!!という風を切る音と共に翼の先端が蒼杜の方を向く。金属とは思えない、本来不知火が操れる部類のものではないが、そんな事を思考している暇は蒼杜にはない。
凄まじい速度で襲ってきたクリスタルの塊を、蒼杜は脚力を強化して避ける。だが、尚も続く第二波を避けることは出来なかった。クリスタルの塊が蒼杜の左肩付近に激突し、そしてクリスタルは蒼杜の皮膚を抉る。
「ぐっ・・・あああアアアアぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
蒼杜の左腕は不自然にブラブラとし、もはや脳からの命令も届かなくなっている。
(ハッ、チクショウが。だが逃げ切れば何とかなる!!幸いコイツは移動速度はそれほどでもないようだしな)
さっきから不知火は遠距離の攻撃をするばかりで、自分から近づいて攻撃するということはしていない。それはつまり、近づいてもまた距離をとるのに時間を食う、などといった理由だろう。
(隙を探って此処から脱出するッッ!!不知火を殺せないのは残念だが、当初の目的は果たしたしな)
行動指針を定め、蒼杜が倉庫内からの脱出を図ろうとしたそのときだった。不知火がゆらゆらを右手を空中に浮いている綿ごみを掴もうとするような動作をした後、その右手を蜂を払いのけるような勢いで右へと振ったのだ。
バッキィンッ!!という声が響いた。辺りを見回せば、あらゆる物の表面に金属が張ってある。地面も、コンテナも、鉄パイプも。
「何だよそりゃ。意味も無く超能力を使いやがって!!」
そう言いながら蒼杜が逃げようとした瞬間だった。蒼杜は気付いた。『アシ』が無い事に。『アシ』といっても、移動手段が無いわけではない。むしろ、移動手段ならナノマシンで脚力を強化して走って逃げるという最上にして最も身近な方法がある。だが、そういう問題ではない。
見れば、蒼杜の『足』がくるぶし辺りまで金属で固められ、地面と接着するようになっていた。
「何だ・・・そーゆー事かよ。いいぜ、逃げられないなら殺すしかねぇモンなァ!!」
不知火は金属を作り出す能力者だが、それは現実に在って現実には無い金属だ。つまり、元は何も無い空間に不知火は無理に金属を作り出すわけだから、不知火の制御を失った金属は消える、という事だ。端的に言えば、全身金属漬けにされようが、死ぬ前に殺してしまえば元通りというわけだ。
蒼杜は能力を全力行使した。ナノマシンのオーバーヒートなんて知らない。今後の人生なんて知らない。ただ蒼杜の頭の中にあるのは、『この場を切り抜ける事』だっけだった。
蒼杜は自らの能力効果範囲、自分を中心とした半径150mの範囲のあらゆる物を操った。自動車、電柱、そして小さな家。それらを蒼杜は自分がいる座標の上に配置し、まるでこれからショーでも行うかのように指揮者のような動作で倉庫の天井を能力で吹き飛ばした。
「コレを受けても生き延びることが出来たってんなら、テメェを本物と認めてやるよ!!」
その数、ざっと200ほど。まず先陣を切るように、50台ほどの自動車が飛んでくる。それらには重量数tという大型トラックも含まれている。蒼杜の能力によって音速を軽く超えたそれらは、空気摩擦によって日を纏い、不知火から1mもない距離で全て爆発した。が、それで蒼杜が止まる訳がなかった。70本ほど電柱を斜め下の不知火がいる場所に叩き落し、電柱を埋め、それから残る電柱を全て回転させながら
不知火がいる方向へ落とす。ガガガァン!!という音が響く。蒼杜はその後若干冷静になり、浮かせていた家を元の場所に戻す。
体の中からシュ~、という音が聞こえる。おそらくナノマシンがオーバーヒートを起こしたのだろう。もう能力は使えないだろうが、良い。爆発の煙やら電柱が地面に突き刺さったときに出来た土煙でよく見えないが、あれで生きている訳が無い。蒼杜は確信した。自分の勝利を疑わなかった。
―――――煙の中に人影を見つけるまでは―――――
(ハ・・・・・?)
蒼杜の志向は一瞬停止した。あの攻撃を何をどう使ったら防げるのか、理解できない。見れば、足元の金属が消えていなかった。
(って事は・・・)
徐々に煙が晴れていく。そこに居たのは、居てほしくない不知火緒方だった。
「フはッあぎゃはハはッヒヒひふフははハへへ」
蒼杜から奇妙な笑いが毀れる。
「成る程ねェ。そーゆー事か。俺は噛ませ犬だったって訳か」
蒼杜が何かに気付いたのか、独り言のように何かをブツブツと言い始める。
「これも計画の一端ってワケかよ。面白ェよ。やってみr―――――」
蒼杜がやれるものならやってみろと言わんばかりに両手を大きく開きながら言った言葉は、途中で虚空へと消えた。理由は単純明快だ。蒼杜という存在がこの世界から消えたからだ。
不知火がした攻撃は簡単なものだった。ただ、精製した金属を鞭のように不知火から見て右上から左下、左上から右下、上から下の順番で蒼杜居た場所へと叩き付けただけだ。
だが、それらの攻撃が0.01秒以内で行われたとしたらどうだろうか。
ただし、それらの攻撃が本来この世には存在しない、どんな兵器だろうと傷一つ付けられない金属によって行われたとしたらどうだろうか。
答えは倉庫内に広がっていた。蒼杜は肉片一つ残らずに蒸発し、倉庫はその攻撃だけで見るも無惨な光景という言葉がピッタリの惨状になっていた。
そして、不知火緒方は蒼杜優貴に勝利した―――――
-四月二十七日 PM5:32-
日本帝国第32区のとある動物園に、宵板彪駕と名乗った男と正規軍の最高幹部、龍神焔羅は対峙していた。
「宵板彪駕って言ったか。テメェ、いや、テメェらの目的は何だ」
「もう名前をお覚えてくれたのか。まぁいい。我らの目的は先ほども言ったとおりだ。騒乱の火種を潰しに来ただけだ。」
騒乱の火種?と焔羅が聞き返す前に、それは来た。圧倒的な、立つ事さえもままならないほどの重圧。おそらくそれが彪駕という男の能力なのだろう。
焔羅は思わず膝をつきそうになるが、ギリギリのところで耐え、中腰のような体勢になったまま微弱に震えている。
「ほぅ。我がLank.9の重力支配を耐えるか。見た目の割には中々根性があるんだな。だが次はどうなるか分からないぞッッ!!」
彪駕がそう言うと同時、さっきまでとは比べ物にならないほどの重力が焔羅を襲った。焔羅はチラッと目を横にやる。そこには焔羅を心配そうな目で見つめる、沙紀という名の一人の少女がいる。様子を見る限り、沙紀が居る場所は能力の範囲外らしい。
焔羅の注意が自分の方へ向いていないことが、自分はどうでもいいのかと解釈をしたしたのか、彪駕は激昂する。
「余所見をするなッッ!!上を見てみろ!!」
異常な重力下で、焔羅は上を見てみる。
そこには、数多くの動物園の檻や自動車が浮いていた。
「これで痛いと感じるまもなく殺してやる」
彪駕がそう言った直後、焔羅の下へ地球の重力の20倍ほどの引力で引き寄せられた凶器が落下した。
彪駕は勝利を確信した。土煙で見えないが、あの攻撃で生きていられるわけが無い。だが、その確信は簡単に裏切られる事となる。
「ふぅ~。ようやく体が温まってきたぜ。ん?ナニびっくりしましたってツラ貼り付けてんだ?」
土煙の中から聞こえてきたその声は、紛れも無く焔羅のものだった。沙紀は目にいっぱいの涙を浮かべ、叫んだ。
「焔羅ぁ!!」
「だぁ~うっせぇな。聞こえてるよ。それとも俺が死ぬとでも思ったのか?」
「バ・・・カな。あれはまともに受けたらLank.10だって死にかねない攻撃だったんだぞ。どうやって避けたんだ?」
「テメェ、Lank.10ナメてんだろ。あんな貧弱な攻撃効かねぇっつぅの。俺が誰だか分かってんのか?俺はLank.8とLank.9の能力を併せ持つ暫定Lank.10の男、龍神焔羅だぜ?」
焔羅はそう言って口端を吊り上げる。この勝負はこれからが本番なのだ。
後は焔羅サーンと恭也サーンを残すのみですねw
さて、【超能力大ボシュウウゥゥゥゥ!!!!!!】
突然ですが、焔羅さんのLank.8の方の能力を募集したいと思います!重力操作以外で^^
そして出来る限り派手で強力なものをお願いします!!
焔羅さんは重要人物なので、これからも皆さんが考えた超能力で大暴れしますよw
これは3/21の昼12時で締め切ります(早ぇwww)
無ければ、自分が今考えているものでいくか、締め切りを延長したいと思っています。