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第十話 捜索-Una búsqueda-

「何で前回俺の出番無かったんだよぉ!!」

Lank.4の身体能力上昇(フィジカルレイズ)にして、暗部組織『アビリティ』の構成員―――――榊原恭也


「声だけの出演だったけれど、あったでしょ?よく読み返してみなさいよ」

Lank.7の未来視(ヴィジョン)にして、暗部組織『アビリティ』の構成員―――――四百苅(しおかり)(あい)

-四月二十七日 AM10:46-


榊原は、とある通りにいた。


「そこのお前!もう逃げられると思うなよ!!コレでチェックメイトだッッ!!」


榊原は一匹の猫へと大声で言う。榊原が大声を上げると、猫はビクッ!!と震え、逃げる為の体勢を作る。


「榊原!!そっちに行くわよ!捕まえて!!」


何故、榊原と四百苅がとある一匹猫を追っているのか。その理由を知る為には、多少時間を遡らなければならない。






-四月二十七日 AM8:24-


俺は、土曜の朝からコーヒーを飲んでハードボイルドを決め込んでいた。とりあえず、俺の過去との決別以来、暗部にも行っていない。というより行けていない。

よく考えてみれば、俺は暗部組織『アビリティ』が何処にあるかも知らないし、連絡をとる方法も分からないのだ。


よって、ここ10日間ほどはほのぼのとした学園生活を送っていたのだ。過去と決別し、他人と関わるようになると、意外と学校も面白いものだと感じるようになった。


まぁそんなこんなで、学校に行く必要が無い本日土曜日は、妹と家にいる訳だ。


「あ、お兄ちゃんおはよぉ~」


「おぅ、おはよう美優(みゆ)


美優は()()女子だが、親がいなくなってからというもの、家事は殆ど兄である俺がやっていたため、美優の家庭スキルはほぼゼロと言っても過言ではない。

そういう事情もあって、俺が休日だというのに早起きして朝飯を(美優の分も)準備しているのだ。

美優は、起きてからすぐに台所に来て、椅子に座り、テーブルにぐで~と倒れている。


ただの居候がこんなことをしていたら全力で張り倒すところなのだが、生憎とこれは俺の実の妹である。

それに、朝からふにゃふにゃしていて、長い髪の所々が跳ねている美優を見ると、そういう気も起きない。


決してシスコンなんかじゃないぞ?大体、実の妹を異性として好きになる奴なんていない。


「ふぇ~。今日の朝食はベーコンエッグかぁ~」


「おぅ。食器片付けるから早く食えよ」


我ながら母親的なことを言っていると思った。


ふぁ~いという美優の返事を聞きつつテレビを見ていると、不意に携帯がブルルと震えた。携帯をポケットから取り出す。

ディスプレイに表示されているのは知らない番号だ。


「(誰だ・・・?)」


番号に疑問を浮かべつつ、俺は通話ボタンを押して携帯を耳へと近づける。


「もしもし?」


『よっほー。榊原か?お前の()()について分かったことがあったからさ、とりあえず暗部まで来てくれYO!』


・・・・・。


「ハァ~。最近はこれだからなぁ。進歩した科学技術を利用して相手の苗字を調べて巧妙な詐欺をするなんて・・・」


『ちょっと待て!俺だよ!!博士ことみんなのアイドr』


ピッ


妙な単語が聞こえそうになった瞬間、俺はほとんど反射的に携帯の電話を切っていた。博士とか言っていた気がするが、博士があんなキャラなワケがない。

全く最近の詐欺はどこまで進歩しているのだろうか。


そんな思考をしていると、またもや携帯が震えた。今度は電話ではなくメールだ。


『勝手に電話切ってんじゃねぇYO!とりあえず学校の裏門に暗部行きの車を用意してるからさっさと来い!あと勝手に詐欺扱いしてんじゃねぇよ!!ヾ(*`Д´*)ノ from.博士』


「(マジかよ。さっきの声どっかで聞いたことあると思ったけどまさか本当に博士なんて・・・。)」


博士のキャラの変容ぶりに、悪いものでも食ったのだろうかと思いつつ、俺は携帯をポケットへしまう。さて、何か持っていくものは・・・無いか。あとは美優に出かけることを伝えるくらいか。


「美優~、俺ちょっと出かけてくるわ。いつ帰ってくるか分からないけど、今日中には帰ってくるから。昼までに戻らなかったら出前かなんかとってくれ」


俺はそれだけ言うと学校へ向かおうとして、そこで立ち止まった。学校に向かおうとする俺の服の端を、美優が掴んでいることに気付いたからだ。


「?どうした、美優?」


「・・・・・って・・よね」


「何?」


美優は俯いていて、何を言っているのか聞き取れない。


「帰って・・・来るよね?」


美優の言いたい事は単純な事だった。唯一同棲している家族である俺が、何かに足を突っ込んでいることを直感したのだろう。それに、美優だって四月八日の事件で間接的にとはいえ暗部と関わってしまった。

俺は美優の今までとは違う雰囲気を感じ取った。だから


「何言ってんだ。戻るに決まってるだろ?だから待っていてくれ」


よくこんなに恥ずかしい台詞(セリフ)をいえたものだなと思う。でも俺は守りたいものは傷つけないと決めた。だからこそ絶対に戻ってくる。


そして俺は学校の裏門へと向かった。






-四月二十七日 AM8:54-


何時もの如く、暗部『アビリティ』の総司令室に俺と博士はいた。


「つーか博士、聞きたいことが幾つかあるんだけど」


「ん、何だ?」


「何であんな妙なテンションだったんだよ」


「だって・・・・・だって!!」


突然博士の口調が子供っぽくなる。これは危ない。


「俺の出番五話くらい無かったじゃないか!だからキャラ作りしてたんだよ!!」


「お、落ち着け博士!六話に出てただろ!!」


「あんな少しだけの台詞で登場したなんて言えるかアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!!!」


登場人物達がメタ発言をして暴走している。そんな収集のつかない状況になっている総司令室の無機質で、巨大なドアが何の前触れも無く開く。


そして、四百苅(しおかり)と見知らぬ女性が入ってくる。コッチは四百苅とは違い、日本刀なんて所持しておらず、何処からどう見ても女子女子してる女性だ。(変なテンションで言語機能が崩壊している)


瑠璃垣(るりがき)唯愛(ゆいあ)って言います☆」


四百苅の後に総司令室に入ってきた唯愛(ゆいあ)と名乗った見た目17歳くらいの女の子は、可愛らしくお辞儀をした後に自己紹介を続ける。


「命令の伝達係をしています♪今回は『アビリティ』に()()されまっしたぁ!」


「派遣?暗部にはそんな会社みたいな仕組みが出来てんのか?」


俺が質問する。それに四百苅が答える。


「今は正規軍と革命軍の抗争が激化している時期なのよ。暗部も人員不足になってるの。だから、暗部組織から暗部組織へ人員を派遣なんて最近は珍しくないのよ」


俺はへぇ~と言いつつ、暴れている博士を(なだ)める。


「で、命令伝達係って事は、何か任務があるって事だろ?何なんだ?」


「はぁい。今回、『アビリティ』の皆さんには猫捜しをして頂きまぁーす☆」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「「「・・・・・は?」」」


四百苅も事前に知らされていなかったのか、その表情が驚きに満ちている。博士も任務を投げ出して逃走しようとしている始末だ。


「四百苅ィ!!暗部組織は人員不足じゃなかったのか!!こんな事に暗部なんて物騒な組織出動させるんじゃねぇよ!!」


俺は四百苅にほとんど叫ぶ状態で言う。だが、四百苅だって現在進行形で呆けている。


「ぇ・・・えぇと、何で?」


こんな反応である。すると、無機質なドアから一人の男が入ってくる。見た目25、 6くらいの男だ。


「実は私の猫が居なくなってしまったんだ。そこで、信用の足るアンタらに任せようというワケだ」


この男、何様のつもりなのだろうか。しかし、コイツどこかで見たことがあるような・・・・・?

四百苅の方は、『こ、この方は・・・・・!!』的な表情をしている。


「この方は、現在の日本国家頭首にして、軍事統帥を同時に(にな)っている歴代唯一のお方、真風(まことかぜ)鐸耶(たくや)様です」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!」


「そーゆーワケだ。家のメグ(真風鐸耶が飼っているマンチカンの愛称)を探し出してくれ」


「(ダ、ダメだこの人・・・!)」


目の前に立つ身長180cm程の男に対して、率直にそんな感想を抱いた俺だったが、ここは口に出さないでおいた。相手は国家頭首+軍事統帥である。


「はい。絶対に見つけ出して見せます」


四百苅は真風鐸耶(コイツ)に忠誠でも誓っているのだろうか。


「マ、マジか・・・」






-四月二十七日 PM3:12-


そんなこんなで、現在に至る。真風が飼っているという猫の写真から、聞き込みしたり、四百苅の未来視(ヴィジョン)、そして俺の身体能力上昇フィジカルレイズで追いかけていた。(最初の方の描写では捕まえることができなかった為、再び探していると、いつのまにか午後3時を過ぎていた)


「よし!!コレで終わりだッッ!!」


俺の手が目的の猫まであと数十cmと迫ったそのときだった。俺の視界から猫が消える。

いや、消えたのではない。目の前の男によって持ち上げられたのだ。


「あぁ、悪い。ありがとう」


俺は勘違いしていた。目の前の優しそうな男が拾ってくれたのだと勘違いしていたのだ。


「いえいえ、コチラは目的のものを()()しただけですので」


男がそう言い終わると同時に、消える。視界からではない。この空間から、という意味だ。

おそらく空間移動者(テレポーター)なのだろう。


「クソ!!どうなってる!!何で猫が誘拐された!?」


この一連の光景を、四百苅もただ呆然と眺めていた。






-四月二十七日 PM3:16-


目的のものが届いたことを確認すると、一人の男は動き出す。


「さぁて、国家規模のテロの始まりだぜ。楽しみだねェ」


そういうと、男は口端を奇妙に吊り上げ、不気味な笑いを浮かべた。

テロですねw


感想何でもいいので下さい

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