短編「狂気のキモデブおじさん」
つまりですね、ガキは殴るしかないんですよ。
いや、これにはれっきとした理由があるので、一旦聞いてください。
あなたの子供の頃のトラウマとか、そういう話はいいんです。関係ないんです。これはミクロではなく、マクロな社会の話なので、一旦そのマチェーテをしまってください。
良かった。話が終わるところでした。
ええ、結論として、僕らにできるのは、彼らに拳を振り上げ、殴る蹴るの暴行を加えることしかないんです。
なぜそんなことをするのか?
そんなの決まっています。
彼らへの教訓であり、教育であり――みたいな大層な理由はありません。
ただ、気持ちがいいからなんです。
見てください、私。
白いタンクトップに白ブリーフのハゲデブおじさんですよ?
これが裸足で公園にいて、追いかけてくるんです。
逃げないほうがおかしいでしょう?
ですから私は、子供を追いかけて捕まえたら、片手で80kg超えの握力で握りしめ、鍛え上げたこの足と腕で、死なない程度にコテンパンにしてやるんですよ。
待って、待って。
ククリを持ち出さないでください。
なんなんですかあなた。銃刀法とか知らないんですか?
しまっておきますから貸してください。
ありがとうございます。
私はこれが生きがいなんです。
ライフワークと言ってもいい。
ガキが少しでも長くトラウマを引きずるように、クッサい息を作るため、歯磨きは18の頃からしていませんし、風呂にも入らないようにしています。
もう悪臭がひどいので、体を鍛えるために通いたかったジムにも何度も出禁を食らいました。
仕方ないので、近所の公園の鉄棒をフル活用して、ここまで鍛えましたよ。
仕事も、15:00〜17:00の間に長めの休憩を取れるフレックス制度のあるリモートワークに対応するため、法律関係の資格を中心に取りました。
警察に見つからないよう、必ず出張先の公園でしか事を起こしませんでしたし、性的虐待なんかは絶対にしません。
ただ殴る蹴るの軽度暴行罪にとどめています。
なんですか、それは。
ガチモンのブーメランを取り出さないでください。
なんなんですかあなた。民俗学者か何かですか?
しまいます。しまいますから貸してください。
振り上げないでって。
全くもう。
まぁ、結局はですね。
彼らのトラウマそのものになりたいわけですよ。
彼らの記憶に残るということは、つまり、彼らという実在を通して、私という存在の片鱗が未来へと受け継がれていくということです。
それは、創作や芸術作品と変わらないのではないかと思うんですよ。
だから私は、少しでもキモいオッサンになれるよう努力しました。
体重増加はもちろん、整形もしましたし、逆ワキガ手術もしました。
彼らの悪夢に定期的に出て、テレビや広告なんかでおじさんのキャラクターが出るたび、吐き気やパニックを起こしてほしいですね。
私は長年の無理が祟って内臓がボロボロになってしまい、もう昔のように100mを8秒台で走るのは無理です。
2kmにわたって自転車で走る男子学生を追走するなんてことも、もうできません。
それでも、少しでも多くの子供たちの悪夢の象徴として、君臨してやりたいと思っていますよ。
ええ、だからそのマサカリはしまってください。
待って、待って待って待ってって




