僕には少し甘すぎる青春
一話 入学式で
●青桐紅羽(16)
何かと暴走しがちな青年だが相手の為に怒れる優しい一面も。帰宅部。
●吐月るる(とげつるる)(16)
長くてサラサラの黒髪が特徴の可愛い男の子。
女子に間違えられることもしばしば。
空っと明るい性格。帰宅部。
●塩津隆人(16)
紅羽の他校の友人。言いたいことははっきりと言える性格。男前で女子に人気がある。野球部。
●篠崎さん(17)
隆人の恋人。一つ歳上の先輩。高二。吹奏楽部。
●白夜透(16)
吐月の恋人。他校の生徒。
高校の入学式。
俺の目の前に妖精が現れた。
サラサラの長い髪にくりっとした瞳、すらっと手足の長いモデルみたいなコだ。
「あの!」
そのコが振り返り、首を傾げる。
「一目惚れしました!好きです!!」
「僕、男だよ?」
「え?声低っ・・・ま、まさかほんとに?」
いや、よく見たら喉仏あるじゃん!!
「嘘だあー!」
俺は叫んで走って逃げた。
すぐに別の高校の友達をファミレスに呼び出した。
「あんなの詐欺だ!」
俺はハンバーガーを泣きながら食べていた。
今や女の子もパンツスタイルの子が増えた。
だから全然気が付かなかったのだ。
「お前、最低だわ」
他校の友人である隆人にピシャリと言い放たれた俺は動きが止まる。
「え、何でだよ!」
「相手は紅羽を騙そうとしたわけじゃない。
お前が勝手に勘違いして勝手に告白して一方的に逃げてむしろその子が可哀想だ。
心が女の子かもしれないし、そうじゃなかったとしてもだ。」
「う、俺って最低な奴?」
「ああ」
再びピシャリと言われる。
「そ、だよな・・・俺自分のことばっかり・・・」
「ま、反省できるのも紅羽の良さだがな」
「俺!明日謝ってくる!!」
「がんばれ」
次の日。
「あのさ・・・昨日はごめん!その・・・酷いこと言った。」
「いいよー、僕慣れてるから!」
「慣れないで」
「え?」
「俺に対してはそういうの慣れないで欲しいって言うか・・・ちゃんと言って欲しい。」
「・・・うん、分かった。あのさ、僕、正直傷付いてなかったよ。」
「え?そ、そうなの?」
「うん。だって僕、心は男だし恋人もいるし。」
「そう、なんだ・・・。」
何ショック受けてんだろ。
はは、なんか分かんないけど振られた気分。
どこまで身勝手なんだ俺って。
「というか、自己紹介もまだだったよね。僕、吐月るる。君の名前は?」
「俺は青桐紅羽。」
「紅羽君か〜、いいなーカッコいい名前で!」
「るる君だって可愛い・・・ごめん、嫌だったよね。」
「ううん、可愛いって言われるのは悪い気しない。」
「そっか・・・なら良かった。じゃあ、昨日は本当にごめんね。俺行くね。」
「うん。またね!」
去っていく紅羽の背中を見るとるるは誰にも聞こえないくらい小さく呟いた。
「アイツも紅羽君みたいに優しかったらな。
って、僕には少し甘すぎるか。」
二話 恋人に振られた君
ある日の下校時間。
校門で何やらるる君と男の人が揉めていた。
他校の生徒だ。
何を話してるかまでは聞こえない。
白夜透「別れてくれ」
「なんで・・・」
「俺、やっぱり女の子じゃないとダメっぽい」
「そんなの分かってたじゃん、透のばかっ!!」
やがて、るる君の叫び声が聞こえ、相手の男は去っていく。
るる君は泣いていた。
すぐに駆け寄る。
「る、るる君、大丈夫?」
「あー、変なとこ見られちゃったな。少し付き合ってくれる?」
「え、う、うん。」
公園のベンチに座り、るる君から話を聞く。
「さっきの彼氏だった人。」
「え!?・・・えーと、なるほど?」
「顔が好みで付き合っだけどやっぱり女の子がいいって言われた。」
「はー!?」
ガタンとベンチから立ち上がる。
「何だよそれ!男って分かってて付き合ったのに酷くない!?
いや、俺人のこと言えないよな・・・なんかごめん。」
座り直してショボンとする俺をるる君が慰さめてくれた。
「ううん。嬉しかった。君が僕よりずっと怒ってくれたから。」
「そ、そう?」
「紅羽君って優しいんだね。」
ニコッと笑うるる君に一瞬ドキッとした。
三話 美味しいもの
「もうさ!こうなったら美味しいもの食べに行こうよ!奢るし!」
「うん、いいよ。僕、スイーツ好きだから甘いものがあるとこがいい。」
二人で◯ックのシェイクとポテトを注文した。
「レストランじゃないんだね。」
「だってお金ないから。ごめん、奢るなんて大きなこと言っといて◯ックで。」
「ううん。僕も同じ高校生だから分かるよ。
バイトしようかなー。」
「なんの?」
「この間チラシで見た可愛いコスプレできる喫茶店のかな」
「え、男だってバレたらヤバくない?」
「あー、大丈夫、女装喫茶だから。」
この国の未来に一抹の不安を感じるな。
四話 普通って?
「好きなのか?」
開口一番、隆人に聞かれた。
「え?誰を?」
「その吐月って奴のこと」
「まさか!男だよ?」
「だから?」
「普通ないって」
「なに、お前普通になりたいの?」
「いや、そういうんじゃないけど・・・あれ、隆人バッグにそんなん付けてたっけ?」
隆人のバッグにミニーちゃんのストラップが付いていた。
「彼女とお揃いなんだ。」
「え!隆人彼女できたの!?言ってよそういうことは早く!」
「いや、タイミングが同じだったからさ。
付き合ったのつい最近だし。紅羽の話が終わったら言おうと思ってたし。」
「相手どんな人?」
「一個上の先輩。篠崎さんって言うんだ。」
「先輩かよ!写真ねーの?」
「ある。」
二人で写っている写真はなんだか熟年カップルのような
、そんな雰囲気が漂っていた。
「クールビューティーだな!!頼りになる先輩って感じだ。」
「ん、綺麗な人だよ。」
「告ったのどっちから?」
「俺」
「先輩だろ?言いづらくなかったのか?」
「好きだから言った。そんだけ。」
「でも、それは女だからだろ?」
「男を好きになったことないから推測でしか言えないが
、好きなら告白してたと思う。」
「まじか・・・。」
「好きになると後先とか周りとか気にならなくなるんだよ。
とにかく好きって伝えるのに必死でさ。
先輩を誰かに取られるなんて嫌だったから。」
「お前がモテるのなんか分かるわ。」
五話 二度目の告白
それから少ししてるる君と話す機会がきた。
たまたま帰りが一緒になった日のこと。
「それでね、駅前にできたケーキ屋さんが凄く美味しくて・・・。」
「え、好き。」
「え?」
「あ、ごめん・・・。るる君を見てたらつい・・・。
好きだって思って。」
「気の迷いだよきっと。紅羽君は女の子が好きなんでしょ?だったらちゃんと女の子と付き合った方がいいよ。」
そのあとは何話したっけ。
覚えてないや。
別れてから一人で帰ってた。
心ここにあらずで歩いていた帰り道。
階段から足踏み外すした俺は二ヶ月入院することになってしまった。
六話 入院中に
「あの、紅羽君どこにいますか!?」
受け付けにいたるるに隆人が気付き、声を掛ける。
「あんた、ひょっとして吐月るる?」
「どうしてそれを・・・。」
「俺、紅羽の友人。」
「あ!」
「塩津隆人、よろしく。」
「よろしく・・・あの!紅羽君は・・・。」
一瞬、隆人はるるの顔をじっと見る。
「紅羽、ボーっとして歩いてたらしくてな。
何があったんだか。階段から落ちて、そのショックで記憶喪失だってさ。」
「え」
とぼとぼとるるが紅羽の病室の扉を開けて中へ入って来た。
「あ、るるく・・・。」
「忘れちゃ嫌だよ紅羽君、思い出してよ。」
「うん?」
なんだ?るる君なんか勘違いしてる?
「るる君、大丈夫だよ?」
「え?あれ・・・だってさっきの人、紅羽君が記憶喪失だって言って・・・。」
「誰に言われたの?」
「塩津隆人って人。」
「変だな・・・アイツそんな嘘付く奴じゃないのに。」
「隆人って人、僕を試したな。」
るるが腕を組んで両頬を膨らませた。
「試す?何を?」
「何でもない!」
何だ、なんでるる君怒ってんだ?
てゆーか拗ねてる?
結局、その後は、るる君一言も喋らなかった。
七話 退院後
帰り道。
河原へ寄ってから帰ろうと提案したのは、他ならぬるる君だった。
坂の上の方に座る二人。
「怪我大丈夫?」
「うん、後右足だけだから。」
「それ、僕のせいだよね?」
「え?いや、違うよ。確かにボーっとしてたけど俺の不注意。るる君のせいじゃない。」
「でも・・・やっぱりごめん。」
「ううん。るる君が病院まで来てくれて嬉しかったからいいよ。」
可愛い泣き顔も見れたし。
「僕、学校で紅羽君が記憶喪失って先生から聞いて、
頭の中が紅羽君でいっぱいだった。
周りのことなんて気にならないくらい。」
「それって・・・好きってこと?」
「うん、好きみたい。」
う、その顔はずるくないか?
二人は見つめ合うとキスをした。
風がなびいて温かい風を運んできて心地良かった。
たんぽぽの綿毛がパッと飛び立っていく。
黄色から透き通る白へ、そしてどこか遠くへ。
新たな旅の始まりがそこにはあった。
「はー・・・可愛い、好き。」
紅羽がるるを座ったまま思いっきりハグする。
「あはは、紅羽君って意外と甘々?」
「分かんない。」
「可愛い。」
「るる君の方が百倍可愛い。」
僕はやっぱり恋もスイーツも甘い方が好き。




