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記憶を食む地下都市で、声なき地図師は恋をする 副題(カッパドキア4126、追放医師と奪われた歌の真実)  作者: 百花繚乱


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第16話 守り手

階段の下から、振動が続いていた。


低い。


重い。


まるで地面の奥で、巨大な心臓が打っているようだった。


ミオの手が震える。


耳の奥に、その振動がはっきり届いている。


「……来る」


エミルが振り向く。


「何が?」


ミオは階段の闇を指さす。


「……下」


振動は、ゆっくり近づいていた。


ドン。


ドン。


都市の骨格を揺らすほど重い音。


エミルが低く言う。


「足音か」


ミオは頷く。


「……大きい」


少女の声が軽く言った。


「守り手だよ」


エミルが眉を寄せる。


「守り手?」


少女は少し楽しそうだった。


「この都市を守ってる人」


エミルは小さく呟く。


「人……?」


ミオは首を振る。


「……違う」


振動が強くなる。


その重さは、人間のものではない。


ミオの耳には、もうはっきり聞こえていた。


巨大な質量。


石。


共鳴。


まるで――


都市の一部が歩いている。


ミオの声が震える。


「……石」


エミルの顔が険しくなる。


「石の巨人か」


少女が言う。


「そんな感じ」


ミオの背筋に冷たいものが走る。


階段の闇が、ゆっくり揺れた。


ドン。


ドン。


振動はさらに近い。


エミルがミオの肩を掴む。


「下がれ」


ミオは首を振る。


「……見える」


エミルが驚く。


「何?」


ミオは目を閉じた。


音が形になる。


巨大な影。


柱のような腕。


岩の脚。


高さは――


「……十五メートル」


エミルが息を呑む。


「冗談だろ」


少女は軽く言った。


「冗談じゃないよ」


振動が、階段の途中まで届いた。


闇の奥で、何かが動く。


石が擦れる音。


ミオの胸が締め付けられる。


守り手。


この都市を守る存在。


つまり――


侵入者を排除する存在。


エミルが低く言う。


「戦う手段は?」


ミオは首を振る。


「……ない」


エミルは歯を噛む。


「くそ」


そのとき。


階段の奥で、影が揺れた。


巨大な影。


ゆっくりと動く。


石の巨人。


エミルがミオの前に立つ。


「下がれ」


ミオは首を振る。


「……だめ」


エミルが振り向く。


「何?」


ミオは耳を澄ませる。


守り手の振動。


ただの足音ではない。


共鳴。


都市の振動と、同じ周期。


ミオの目が見開く。


「……都市」


エミルが言う。


「何だ?」


ミオは呟く。


「……都市と、同じ」


少女が言った。


「気づいた?」


ミオの心臓が強く打つ。


守り手の振動。


都市の共鳴。


同じ。


つまり――


「……装置」


少女が笑った。


「そう」


「守り手は、都市の装置」


エミルが呟く。


「防衛システムか」


ミオは円盤を思い出す。


都市の心臓。


共鳴装置。


もし守り手がそれと同じなら――


ミオの喉が震える。


「……歌」


エミルが振り向く。


「何?」


ミオは小さく声を出す。


「……あ」


その瞬間。


守り手の振動が止まった。


エミルの目が見開く。


「止まった?」


ミオも驚いていた。


守り手の足音が、完全に止まっている。


少女が楽しそうに言った。


「やっぱり」


ミオの胸が早くなる。


「……どうして」


少女は言った。


「だって守り手も」


「都市の一部だから」


ミオの声が、

都市の共鳴を変えた。


つまり。


守り手にも届いた。


エミルが呟く。


「音で制御されてるのか」


ミオは震える。


自分の声が、

都市を動かす。


守り手さえ。


そのときだった。


闇の奥で、石が軋んだ。


ゴン


守り手が、もう一歩動く。


ミオの顔が青くなる。


少女が言った。


「あーあ」


エミルが叫ぶ。


「まだ来るぞ!」


少女が苦笑する。


「完全に起きちゃった」


そして。


階段の闇から、

巨大な石の腕が現れた。


都市の守り手が、

ゆっくりと姿を現し始めた。

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