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第8話 オーク戦

命のやり取りって凄く怖いんだろうな

オークは豚の顔をしているが可愛らしさはなく、醜く醜悪で、でっぷりとした腹をしている。身長は成人男性よりも高く二メートルを優に超えている。その手には錆びつき少しだけ血の付いた斧を持っている。

壁を破ったその膂力からも分かるように駆け出し冒険者ではまず勝てないとされている、ランクCに分類され、下級冒険者であってもパーティーを組まなければ勝てない。

そんなオークに対して俺は駆け出し冒険者と同党と言われているDランクの魔物でも父の補助ありで勝てる状況であり、勝てないだろう。






無駄だと分かり切っているが、紙の魔術を杖を使い発動させる。

形成された岩は普段の杖だけのものよりも圧倒的に速く飛んでいく。

これが、魔力切れを起こさずに現時点で出せる最大級の威力の攻撃だ。以前試してみたときは木に岩の中腹まで刺さっていた。



「これなら!」

これなら当たればただでは済まないだろう。



淡い期待を抱いてしまったのも仕方がないだろう。

オークはその手にある斧で岩を叩き軌道をそらした。

今までの魔物相手ならば過剰とも言える火力であるため、これを防がれた事にショックを受けてしまう。

オークはただの獲物が反抗してきたことに怒りを覚えたのだろう。

「ブモオオォオォォーーーッ!!!」

低く野太い声で吠えている。

最大威力の攻撃が防がれた事にショックは受けていたが別に予想していなかったわけではない。



「ウォーターボール」

普段は、魔力切れを起こすために使用していた、水の球を生み出すだけの魔法を使用する。生み出す位置はオークの頭にだが。

如何に強い魔物でも肺呼吸であれば息が吸えなければ窒息して死ぬ。

オークはその見た目の通り肺呼吸だろう。だが、水の球は現れない。

魔法が発動しない。教わったことはないが感覚で理解できた。

オークの周囲にオークの持つ魔力が漏れ出し、膜のようなものを形成しているのだ。

俺もその膜が張っており恐らくこの範囲内には他者の魔法は生成できないのだろう。だが、より多くの魔力を使えば水の球を出現させることができるかもしれないが、賭けの要素が強すぎる。



そうしているとオークが近づいてきて斧を振り上げる。

すぐさま地べたを這いながらその斧を躱す。

先ほどまでいた場所は拉げ、当たっていれば命はなかったであろうことを俺に伝えてくる。

今の攻撃は、溜めの動作があるからどうにか避けられたが、何度も避けられるようなものではない。



再び死のイメージが俺の心臓を掴む。

どこからかカチカチと音がする。呼吸が上がり、膝が笑い、視界がにじむ。カチカチとした音は、歯の根が合わず俺の口からなっていたことにようやく気付く。涙をぬぐい敵を見る。

オークは俺が万策尽きたことに気づいたのだろう先ほどまでの怒りに満ちたような表情も雰囲気もなくニタニタと気色の悪い笑みを浮かべている。

「うぉおおぉおおーーー!!」

先ほどのオークと同じように雄叫びを上げる。だが俺の叫びは怒りによるものではなく恐怖を抑えるためのものだ。

恐怖は消えなかったが戦える程度には治まった。



気合を入れる意味もあり再び魔術を放つがやはり防がれる。

当たってはいないが防ぐのだ、それは当たればただでは済まないからではないのか、そう思いいたりどうにか当てる方法を考えていく。

水で足元を滑らせる?駄目だ、水があったくらいで絶対に滑るわけではない。ならば、氷なら?以前から練習をしているが成功率が低くイメージしている間に攻撃されてしまうだろう。

カウンターなら?可能性はある。さっきと同じ振りかぶって一撃を叩きこむのならあの腹に一撃を叩きこめるだろう。



カウンターを狙うのならば振りかぶる攻撃を誘発させる必要がある。

そのために俺は端に片付けられている机と机の間に逃げ込む。

素直に攻撃するのなら振りかぶって叩きつけるように俺の頭から切り裂こうとすることだろう。

不思議な事に恐怖はなかった。あるのは多幸感。頭は冴えている。



オークはニタニタと笑いながら近づいてくる。

俺はその行動を願いながら見逃さないように一挙手一投足を監視する。

オークはそのまま大きく振りかぶる。

その行動が俺の狙い通りの行動だとも気づかずに。

父が以前、『俺の描いた魔法陣なら、ハンスが全力で撃ったところで壊れねぇよ』と言っていたことを思い出す。

最初も二度目も魔法陣がオーバーヒートしないように、全力で魔力を注ぎ込んではいなかった。

今度は全力で魔力を注ぎ込む。最初よりも二度目よりも圧倒的に速く岩が飛ぶ。そしてオークの油断しきった腹に深々と突き刺さった。

オークが仰向けに倒れる。致命傷になる一撃だ!



だが、オークの生命力は凄まじくそのまま立ち上がる。

「なん、でだよ」

「もう直ぐに死ぬような怪我だろ!!」

オークはもう叫ぶような元気もないのだろう。だが、その眼は血走り、俺のことを真っ直ぐに見つめてくる。

そして再び俺に向かって片手で斧を振りかぶる。

斧とは反対の手は腹の前にあり、再び魔術を放ったところで手で防がれて終わりだろうそれに加えて、魔力切れも近くあと数発の魔術か魔法で魔力切れを起こすだろう。

避けようとも逃げ道は自ら入り込んだ机の壁のせいで潰してしまっている。



だが、まだ一つだけ進める道がある。正面だ。俺はオークに向かって走る。

オークも想定外のことなのだろうどことなく驚いているように見える。だが、そのまま斧を振り下ろしてくる。

このままいけば叩き切られるが、二つ魔術を放つ。

一つは、魔法陣を使い、斧を握っている手に対してだ。

当たりはした。

しかし、オークは手を離さずそのまま振り下ろし続ける。この少し緩まった速度でも俺は叩き切られる。だが、狙いはもう一つあり、一瞬でも攻撃の手を遅らせることだ。

もう一つの魔術は杖を使い放った。狙いはオークの股の下だ。

形成された瞬間に岩を杖と反対の手でつかむ。そして、射出された岩は、俺を引っ張りながらオークのまたの下を通り背後へ俺と飛んでいった。

俺は股を通る瞬間に一発の魔術をオークの方に放った。当たったかは分からない。

俺が振り返るとそこには背中に一本の岩を生やしたオークが息絶えていた。

致命傷をくらい、命の消えかかっていたオークには十二分な一撃だったのだろう。

俺は魔力切れもあり、大の字に倒れる。

そうしていると直ぐにオークから俺の身体に魔素が流れ込んでくる感覚がする。

久々のレベルアップに加えて強敵との戦闘だったからだろう達成感が俺の内を占めていく。

心地が良かった。

「ああ、なるほどこうして嵌まっていくんだな」

ひとり呟きながら笑みがこぼれる。






一人大の字で寝ていると足音が聞こえてきた。

「ハンスッ!!」

「無事だったか、良かった」

「良かった、本当に良かった」

泣きながら父が抱きしめてくる。

心地が良く意識を手放したくなるが、父に抱きしめられながら前を向くとアリナが泣きながら座り込んでいた。

「ヒグッ、死ん、じゃったら...」

「どう、しよう、って...」

「わたし...わたしぃっ...」

父の抱擁から抜け出してアリナに近づくが何と声をかければいいのか分からなかった。

「アリナ、俺は無事だから気にしないで」

「それよりも、アリナが無事でよかった」

「約束守れたみたいだね」

ただ思ったことを口に出してみたがどうやら、これでよかったようで、泣き止んでくれた。

俺は案外子どもの扱いが上手いんじゃないかと一人思った。

「ごめん、お父さん魔力切れで眠る」

ほぼ言い終わると同時に俺は意識を手放した。






後から聞いた話だが、魔物のスタンピードは父と母の功績が大きく死者を出すことなく終わったそうだ。

俺の功績も認められ俺の家はこのフィッツ村が開拓のためにされている減税が終わった後も、一年は他の村人が負担して減税してくれるそうだ。






次に目を覚ました時は家のベッドの中だったが、起きたことに気づいた母が泣きながら抱きしめてくれた。

この時に何か言っていたが嗚咽で聞き取れなかった。

抱きしめ終わると俺にオークの魔石を渡してくれた。

オークの魔石はスライムの魔石よりも一回りほど大きくなんとなくだがオークの魔力を感じる。どうやら、この魔石も何かしらの装備品にするようだ。

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