第5話 初めてのレベル上げ
私は、レベル上げが作業感出てきて好きじゃないんですよね...
俺たちが住んでいるフィッツ村は、西から南側が森に接しており、森の奥まで進めば魔物がいるそうだ。
しかし、俺と父さんはそこまで奥には進まず、表層にはぐれてしまったスライムやゴブリンを狙っていた。
「分かるか?ハンス」
「ここの枝が折れて青いヌルヌルがついているだろう」
そう言われて足元の低木をよく見るとついていたが言われなければ俺は気づけなかった。
「なんで分かったの?」
父は少し自慢げにしながら
「経験が違うからな」
そう伝えてきた。
「ハンスもいつか出来るようになるよ」
「それじゃあ追いかけて弱そうだったら狩るか」
そう言い迷いない足取りでずんずん進んでいく。時折ついてきているか振り返りながら。
「止まれハンス」
「そこからコッソリ観てみろ」
「声は出すなよ」
恐らくスライムを見つけたのだろう。
言われた通りに茂みから顔だけ出して観てみる。
そこにいたのは、青く半透明のベトベトとした液体だった。よく見ると中に石が入っている。
「あの石は何?」
「あの石は、魔石だな」
「売ると金になるし魔術を書く時にも使うことがあるぞ」
「後は、魔術を刻み込んだりだな」
座学の最初で習ったなぁと少し前のことを思い出す。
「それじゃあ、魔術を使って倒してみろ」
コクリと頷くと魔術が描かれた紙を広げて魔力を注ぎ込む。
発動した魔術は、スライムに当たりスライムの身体が弾けた。
「あちゃ~、威力をつけすぎたな」
「スライムの身体は色々使えて売れるんだがな」
「魔石は残ったし十分か」
父がぼやきながら魔石を拾いにいく。
しかし俺はそれどころではなかった。
何かが身体に流れ込んでくる感覚と身体の中が変化するような感覚がする。
少し気持ちが悪い。
感覚が治まり、俺も近づいていくと父が魔石を投げ渡してきた。
「始めて倒して手に入れた魔石だろう」
「自分で大切に持っとけ」
「ありがとう」
「レベルアップ気持ち悪かったか?」
「うん」
「そうか、その内みんな楽しくなったり気持ち良くなるものだから」
「気にするな」
今の感覚が楽しかったり気持ち良くなる日が来るとは到底思えないが期待せずに待っておこう。
「どうだ、まだやれそうか?」
「うん、まだ魔力には余裕があるよ」
「それならゴブリンも狩ってみるか」
そうしてゴブリンを探しに少しだけ森の奥まで進んでいく。
ゴブリンを見つけるまでに話したことは、この魔石でネックレスでも作ってもらえということ、農業が順調で今年はそれなりに儲かりそうなこと、レベルの上限はないことだった。
レベルアップとは魔物を倒すことで一回り強くなることで数値で計るものではないらしい。
ただエルフが、ある時からレベルアップを全くしなくなったとのことで実質的な上限はあるようだ。
そんなことを父から聞きながら俺の心は別のものに支配されていた。
やはりいたのかエルフが。エルフというと森の中に住んでいる設定だったがこの世界でもそうなのだろうか?
「お父さん、エルフってどこに住んでるの?」
「ん?それなら聖樹のある森に住んでることが多いな」
「おい、ハンス」
「いたぞ」
そう声をかけられ内心の興奮は抑えながら、コッソリと姿を確認する。
そこにいたのは6歳の俺と同じくらいの身長で緑色をした皮膚、醜い顔のこれぞゴブリンといった想像通りの姿だった。しかし、そこにいたゴブリンは先ほどのスライムと違い3人で行動していた。
「2匹は俺がやる」
「1匹やれるか?」
そう言われていかに人型の魔物でも動物のようなものであると再認識する。母からもそのように教わっていたがどうしても人型だと無意識下で人のように感じてしまう。
「たぶんやれる」
「そうか」
「なら、やめておくか」
「え?」
予想外の父からの返答に素っ頓狂な声をあげてしまう。
「いいか、魔物と戦う時は命の取り合いだ」
「絶対じゃなくて多分で行動すると死んでしまうだからな」
「逃げてもいい戦いは逃げてしまえ」
「だが逃げてはいけない戦いが出来たら覚悟を決めて戦え」
「学園に行っても覚えておけ」
その後に父は頭をガシガシとなでてその場を離れながら別の獲物を探し始めた。
そこから暫くはスライムを狩り続けた。俺の現在のレベルは分からないがそれでも着実にレベルが上がり強くなっている実感はある。
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