第3話 日曜日の過ごし方
私も、もっと仲のいい友人が欲しいなあ
魔法を習い始めてから俺の生活は、かなり変わった。
その翌日から、日曜日以外の日は、日が昇ってから正午までは父の農業を手伝い、正午から夕食までは座学を中心に学んだ。
座学は、国語と算数、社会、魔法と魔術、魔物学である。
その日のノルマである座学が終わると、魔法と魔術の実技を始める。
実技は楽しいが座学はやる気があまり出なかった。座学も、中央魔法学園に入学するために必要だが、国語と社会の勉強は前世での知識が却って邪魔してしまい難しかった。
「うーん、国語が難しい」
「歴史も向こうの知識と混ざってしまう」
前世で英語が大の苦手だった俺にとって国語は、あまりに苦しく、歴史も前世では得意だっただけにできないことが悔しくて仕方ない。こんなことなら世界史を選択するんじゃなかったとそんなことをつい考えてしまう。
「はぁ...辞めたい」
そんなことをつい、ため息交じりに口走ってしまう。
元々諦め癖がついている俺は、途中で軽く諦めそうになったが前世の記憶が蘇る。
向こうでの俺は、勉強が嫌になりその時の学力で簡単に入学できる高校と大学に行ってしまったことを思い出した。
適当な大学に入ったせいで欲しかったのに取れなかった資格や興味があったが学べなかったプログラミングなどの小さな後悔が今になっても湧き出てくる。
恐らく今後もこの後悔は消えない。再び死ぬときにこんな小さな後悔でも思い出してしまうのだろう。
だが、そんな後悔を今生ではしたくない。幸いにも現時点では未だに後悔はない。ならば、今後も作らないためにも今頑張ろう。
そう考え直して、気合を入れる。
「よしっ...頑張ろう!」
こうして再開した俺はかなりゆっくりとしたペースだが、着実に学んでいく。
そうして今日を終えた。
その翌日である、今日は日曜日である。日曜日は、大人も子ども休みの日である。
大人たちは、集まって酒盛りをしたり街へ買い物に行ったりする。
子どもたちは鬼ごっこだったりで遊ぶ。
俺はというと前世と足して28歳にもなるので子ども達の輪に入れずに、なんてことは無く一緒に遊んでいた。
「ハンス、今誰が鬼か分かる?」
「ひゅっ!!」
「な、何だアリナか」
「びっくりした」
「ハハハ!驚きすぎだよ」
岩に隠れて前方しか警戒していなかったため、音を消しながら近づいてきたアリナに気づけず、情けない声が出てしまった。
完全に油断していたのにタッチしなかったアリナは鬼ではないのだろうと考え気が緩まる。
アリナは隣家に住んでいて俺と同い年の幼馴染だ。彼女の髪は赤く現在はお団子にしている。現在は可愛らしいが、将来かなりの美人になるのだろう。そんな顔立ちだ。
「うーん、エレーナかアルかもな」
「アルが鬼になることなんてほとんどないじゃない、それに鬼になっても直ぐに捕まえてくるし」
「ほら、あいつ力とかのフィジカルは強いけど馬鹿だから隠れてたら気づけないだろ」
「フフッ、何それ鬼ごっこが終わったらアルバートに言ってやろ」
「それにアルバートもそんなに馬鹿じゃないでしょ」
そんな冗談をいいながら談笑していると突如として影が差した。
「フッフッフッ、見つけたぞ!ハンスにアリナ」
「あっ」
そんな驚きと諦めが混ざったような声を二人同時に上げた。
幸いなことにさっきの発言は聞かれてなかったようだ。
アルバートは、同じフィッツ村に住む幼馴染で少し馬鹿な所はあるがいいやつだ。そしてかなり運動神経がいい。髪は短くアリナよりもくすんだような赤色で、顔立ちは、やんちゃ坊主な感じだ。
この三人が同い年の友人でいつも固まって遊んでいる。
「はぁ、まさか聞かれていたとは」
あの後アルバートはアリナを逃がしてから、最初に言い出した俺を捕まえた。
「誰かいないかな?」
そんなことを呟きながら決められたエリアの中をしらみつぶしに探していく。
ここにもいないのかと諦めて歩き始めたとき背後の草の中で石が当たったような音がした。
振り返り
「ははーん、誰かいるな」
そう呟くと、草の中から小柄な女の子が飛び出し逃げようと走っていく。
しかし、足は俺の方が早いのですぐに追いつき捕まえる。
「捕まえたぞエレーナ」
「も~速いよハンス」
「さすがに2年近く早く生まれているからな」
隠れていたのはエレーナだった。
エレーナは一つ年下の女の子で珍しい白い髪色をしている。髪型はショートカットで少し癖がある。顔立ちは、可愛らしい。アリナが特にエレーナを気に入っておりいつもべったりだ。
エレーナは早生まれで同学年の子よりも身体も小さく身体能力も高くない。
この後も鬼ごっこだったりをして遊び続けた。楽しかった遊びの時間も終わり家へと帰り今日を終えた。
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