1話 転生
異世界、私も行ってみたいなぁ
今日は3月31日、世間ではなんてことないただの一日だが、俺にとっては特別な誕生日だ。そして、今日特別の意味が増えるのだろう。尤も命日という最悪の意味でだが。
「ああ、畜生、まだ死にたくねえなあ」
「まだ、やり残した、こと...いっぱい...あった、のに......」
恐怖と痛みから息も絶え絶えに呟く
最早痛みも感じなくなり、周囲の音が遠くなっていく、力が入らない、寒い、寒い、さむい、さむ、い、さ、む...
ここはどこだ。俺はなぜ泣いている。いや、助かったのか!?あの状態から?状況を確認したいのに目が見えない。いや、違う光は感じ取れるけどよく見えない。音は?聞こえる。喋っているのも分かるが、言語が違う?聞き覚えがない。一体何なんだ!?
俺が酒の飲みすぎと浮かれ、誰も誕生日を祝ってくれない悲しみから前方不注意で車にひかれてから1ヶ月ほどが経ち、目が見えるようになり周囲が把握できるようになってきた。
分かったことは、恐らく異世界転生的なものというより、それそのものをしたこと。言語が違うこと、時代は中世程度でありながら、何故か衛生をはじめ衣食住が整備されていることだろう。それと俺の名前が恐らく、ハンスであること。
死んでしまったことは仕方ないから切り替えていこう...とは思っているが前の人生がようやく順調になり始めてきてやり残したことが多い分いまだに引きずってしまう。
死に方もかなりきつかったし。
「====ハンス=」
この人は俺の母でかなり美人だ。名前は恐らくナタリア。いつも旦那だと思う人から、ナタリアと呼ばれていることから間違いないだろう。美人で若く見えることを差し引いても、かなり若く恐らく俺と同年代の20歳くらいだろう。
鐘の音が2度鳴り響いた。この音は正午を知らせるものなのだろう。
母さんの家事もひと段落ついたようで俺の世話をしにくる。
「==========ハンス?」
「====」
言葉は分からずとも以前までの経験でなんとなく伝えたいことは分かる。
おおかた、お腹がすいていないのか?だとか、おしめを変えようね。だろう。
嫌だとか恥ずかしいだとか思っていても、赤ちゃんの俺は自分の世話も自分で出来ない。だが、生きるためには仕方がない。
前世では、後悔の多い人生だった。今度こそ後悔のない人生を送るためにも我慢しよう。
暫く時間がたちそろそろ父が帰宅してくるころだろう。
「====ナタリア、ハンス」
「====ヴァシル」
この人は俺の父で身体が大きい。名前は恐らくヴァシル。身長が高いのはもちろんのことだが、筋肉もかなりついていて、手や服に土がついていることから、恐らく農家だろう。年齢は、俺よりも年上で恐らくだが、25から30歳だろう。
そんな両親に囲まれた俺の一日は、ほとんどベッドに横になっているだけで終わる。ここまでまったりとできるのは久々で心安らぐが、それよりも暇で死にそうである。動けるようになったら、最初に言葉を覚えよう。
日頃の努力もあり半年ほどでハイハイが出来るようになった。
ここまでかなり時間がかかったが、これでこの家が探索出来る!!今日という日をどれほど楽しみにしてきたことか。
先ずは何処へ行こう。とりあえず台所を観てみるか。
そこには母がおり、台所で火を起こすところだった。
ん?今、火を起こしたのか?道具を何も持っていないように見えたけど?
もしかして、異世界の定番の魔法では!?
もしやあるのではと考えていたが、本当にあるのか!!言葉を覚えたら次は魔法を覚えよう!!これからがワクワクしてくるな。
将来への希望が湧き出てくる。
「ハンス======」
うおっ!!抱っこされた。この方向はベッドじゃない?
あーなるほど洗濯か。家の探索をしたかったけど仕方ない。次の機会に回すか。
「====」
なっ!これは、魔法!魔法で水を出して洗濯している!凄いなあ。いつか俺も教えてもらおう。
俺がはしゃいでいると母さんが微笑んだ。
ここから6年たち、俺は言葉を覚えたがまだ、魔法は学べずにいる。農業と読み書きを覚えるので手一杯なのだ。しかし、今日!ようやく魔法を教えてくれると母が約束したのだ!
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