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次元の鼓動  作者: ごまざわ
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邂逅

6章 邂逅

2019年3月27日水曜日

9AM

アルバイト初日だ。LINEで教えられた住所に行く。学校は春休みだ。

「え、嘘だろ?」

雅樹が見上げているのは東京都内にある八本木ヒルズだ。

「こんな場所に住んでるなんてお嬢様だな。VTuberが余程儲かるのか」

エレベーターで何十階も上がり、インターホンを押す。

「はーい」

「マネージャーの伊藤雅樹です」

ドアが開く。そこに立っていたのはピンクのパジャマを着た女性だった。明らかに中学生には見えない。髪も黒いロングだ。

「君が、稲垣米、なのか?」

「そうだよー。さ、入って」

家の中はとても広い。俺の家の3倍くらいはありそうだ。アイランドキッチン、ロフトと吹き抜け、シャンデリアまである。

ある部屋に案内された。そこには俺の背丈より大きい巨大な金庫があった。

「ここでいつも配信を?」

「うん。防音設備がないからここが便利なの」

金庫を開けると中には机と椅子、デスクトップやら人の耳がついたマイク、ASMR用のマイクが所狭しと置かれている。この金庫どうやって運んできたんだと思っていると、急に米が抱きついてきた。

「うわっ!」

「マサキに米の秘密、教えてあげるね」

「でも絶対に誰かに言わないでね?約束だよ?」

「わかった」

「実は米、中学生じゃなくて25歳なの。大学も相応大学卒業してその時はニートだったの。今も実質同じようなものだけど」

「10歳もサバ読んでたのか」

「それと米の本名、桜みすとっていうの。どっちでも好きな方で呼んでね」

「じゃあみすと。一つ聞きたいことがあるんだが」

「いいよ、何でも答えてあげる」

「去年の7月1日、あれは誰と話してたんだ」

みすとの目が丸くなった。

「あー、切り忘れ配信のこと?ただの友達だよ」

「本当のことを言ってくれ」

「バレちゃった?じゃあ本当のこと言うね。あの人は友達でもあってスタッフでもあってマネージャーでもあるんだよ」

「やっぱりそうか。今そいつは何してるんだ」

「詳しいことは分かんないけど、あの人もアルバイトで来てたから就職したんじゃない?同じ相応大だしいい仕事に就いてると思うよ」

「なるほど」

「これからよろしくね、マサキ」

「おう」

今日はこれで帰ることにした。

「マサキ、来月の27日なんだけど、みすとニコニコ超会議に出るの。一緒に行かない?」

「土日なら空いてるから平気だ」

「やった!なら朝7時にここ集合ね?」

「早!そんな早くに起きれないぞ」

「ならみすとが電話で起こしてあげる」

「モーニングコールか、ありがたい」

「じゃあこれで決まり!」

これがあんな出来事になるとは予想もしなかった。


2019年4月27日土曜日

7AM

「マサキおはよー」

「おはよう」

「行こ!」

みすとはツインテールだ。米に合わせてるようだ。

「なんかいい香りするな」

「香水つけてきたんだ」

「ロクシタンだな」

「当たり!」

会場の最寄り駅についた。

「ね、ちょっとお茶していかない?喉乾いちゃった」

「まだ時間もあるしそうするか」

俺達はスターフロントというカフェに寄った。みすとはチャイティーラテを頼んだ。俺はアイスコーヒー。


9AM

会場に到着した。

「みすとは何時からなんだ?」

「10時からだよ」

「なら準備もあるだろうし行って来い」

「そだね、食べ物いろいろ買おうと思ったけど後でいいや。また連絡するね」


みすとと別れた俺はいろいろ見て回ることにした。会場は東京ドーム2個分くらいある。ぶらぶらと歩いていたその時、向こうから悲鳴が聞こえた。俺は悲鳴のする方へ走った。そこには血を流して倒れている何人かの一般人と4メートルほどの白い化け物、天使が3体、その周りに2メートルほどの天使が5体いた。次元で言うとデカいのが10、普通のが5くらいか。流石に数が多い。戦うべきか迷ったがこれ以上被害を増やしたくない。俺は神切丸を取り出した。俺の存在に気づいた普通の天使のうち3体がこちらに走ってくる。俺はジャンプし、神切丸を振り下ろした。1体に当たり縦に真っ二つになった。さらに神切丸を横に振った。2体とも横に真っ二つになった。

残りは5体。俺は勇気を振り絞り、天使たちに向かっていく。神切丸を振り下ろした。しかしデカい天使がそれを両腕で受け止めた。真剣白刃取りだ。俺があっけにとられていると右脇腹に激痛が走る。5メートルくらい吹っ飛ばされた。起き上がろうとするが痛みが続いて起きれない。何かがこみ上げてきた。手で口を押さえる。

「ゲホッゲホッ!ゴボッ!!」

掌が真っ赤に染まっている。あばら骨がやられたか。目の前に天使が集まってきた。

「こりゃ、本格的に、やべぇかも、な」

目の前が暗くなっていく。父さん、母さん、美玖、みすと、ごめん。薄れゆく意識の中で最後に見たのは、袈裟姿の男と白い龍だった。


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