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第25話 後悔していた刀夢 因果応報的?な展開なのかな

私の誘拐をそそのかしたメルラことカビロは甘ったるい声で弁解をしていた。


 


「だってぇ~~、エメラルド奥様がいると、オーガスタム様もカール様も振り向いてくれないから~~。だからぁ、どこか遠いところに行ってもらおうとしていただけじゃないぃ~~!」


 メルラは地下牢で閉じ込められ、ふてくされながらそう言った。




「は? この世にメルラしかいなくなっても、お前を選ぶことはないよ」


 旦那様は、吐き捨てるように言い顔をしかめた。




「なんでよぉ~~! 私を見て! こんなに可愛くて綺麗でバストだって大きいです。とても価値があると思いませんか?」




「いいや、思わないよ。エメラルドは中身が面白いのだ! お前とは比較にならん!」


「そうですとも! エメラルド奥様は中身が面白いのです! 無敵です!」


 


 旦那様も料理長アーバンも執事カールも私を面白いとしきりに褒めてくれるけれど、これって喜んでいいのかしら? 実に微妙だわ。






☆彡 ★彡


メルラもといカビロ視点






 とんまな男達は全てを白状して、私はエリアス候爵家の地下牢の中だ。今でこそ使われていないこの牢屋だが、少し血生臭い匂いがするのは、昔の拷問刑の名残かも。




 その昔、貴族は少しでも使用人が逆らえば、ここで虫けらのように殺したという。気持ち悪いし怖くてたまらない。


 エメラルドを誘拐させようとした私の罪はどれだけになる? かなり重い刑になるのは予想がついた・・・・・・なんでもっとよく考えなかったのだろう? いつも欲望に忠実で後から悔やむような人生だ。以前にも、とても後悔したことがあることを、この地下牢のなかで思い出した。それはエメラルド奥様との会話の中で、さらに鮮明に頭のなかで映像化された。




 両脇に咲き誇る桜の花が植えられた大通り。そこに佇むスーツ姿の女性。髪はひとつにまとめ地味に見える顔立ちだが、知性と理性のバランスが素晴らしい、僕の愛おしい妻だ。なのに、僕の手は彼女を突き飛ばし、泣きながら謝っている。




 ミュージシャンの世界に誘われ、それを反対されたことが悔しかった。お金のかかるレッスン費用でも、一躍スターになればすぐに回収できる額なのに。詳しい話も聞いてくれずに却下と言われ、プロダクションの人には「チャンスは今だけですよ」と言われて焦っていた。




 彼女は事故死扱いになり多額の遺産が手に入った。そこから金を積みプロダクションに入ったものの、杏の言う通り金だけとられてデビューもできなかった。終いには脅されるようになり、トラブルに巻き込まれて命を落とした。




 最期の瞬間に願ったのは杏に会いたい。それだけだった。杏に会って謝りたいし、本当に好きだったことを伝えたかった。




 身勝手な犯罪者の僕の愛なんて信じられないとなじられるだろう。謝ったところで許してくれるはずもないけれど、それでも一目会いたくて・・・・・・気づけばこの世界に転生し、誰に会いたいかということはすっかり忘れていた。今回も杏に酷いことをしそうになったことに愕然とする。




「杏ちゃん、ごめんね。本当にごめんなさい。僕が馬鹿だった。全部杏ちゃんの言う通りだった。あれ以来、僕はずっと後悔しかしなかった。なぜ、愛していたはずの杏ちゃんにあんなことをしたのかな。今でも自分が信じられないんだ。罵倒して思いっきり殴ってくれよ。僕を走る馬車の前に突き飛ばしてくれよ。償いたいんだ」


 身勝手な僕の謝罪を黙って聞いてくれた杏は女神様のように優しかった。




「その言葉が聞けただけで充分だよ」


 そう言ったんだ。




 杏、結婚した時の愛は決して嘘じゃなかった。本当に大事にしようと思っていたし、愛していたんだ。殺すつもりで結婚したわけじゃない。ここには杏に謝るためだけに来たことを、やっと思い出したのだった。神様、身勝手な僕を決して許さないでください。




 僕はそれからしばらくして病死することになる。杏に会えて話せたことで、僕の魂は救われたのだった。



数多くの小説の中から拙作をお読みいただきありがとうございます。

少しでもおもしろかったよ、と思っていただけたら、是非ブクマや☆彡 ★彡☆彡 ★彡☆彡 ☆彡 で応援いただけると、執筆の励みになります。

※誤字報告をいただき、ありがとうございます。

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