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第24話 味噌職人4人衆の誕生

もっさり男達を従えて屋敷に戻ると、メルラが青ざめた顔で男達を見て慌てて逃げようとした。




「おい! カビロ、お前話が違うじゃねーか! この奥様は化け物並みに強いぞ! なにが簡単にさらえて金儲けできるだよ! こんな熊みたいな女・・・・・・ぐっはっ!!」




 レディに対して言葉の使い方が間違っている、もっさり4人衆のボス格の男を腰投げ(合気道の技のひとつ)してあげた。無作法者はきっちり教育しないとね。




「ところで、カビロってメルラのことよねぇ? 本名はメルラじゃなくてカビロなのね?だったら紹介状の名前とは別人じゃない? ちょっとそのあたり詳しく聞きたいわね。さぁ、もっさり男達め! 速やかに白状しないと治安守備隊に引き渡すわよ」




「それだけは勘弁してください。全国紙に似顔絵が掲載されるなんてまっぴらです。カビロはスラム街で一緒に育った幼なじみですぜ。まぁ、そいつが玉の輿に乗りたいって言うんで、貴族の屋敷に奉公に行く紹介状を持った女を狙って襲ったのです」




 やはり治安守備隊の威力は凄いわ。この組織に連行されると、この国全土にその様子が新聞で掲載される。ある意味、犯罪の抑止力にもなっていると、私は思っている。




「まさかその女性に乱暴なことをしたのではないでしょうね?」


「まさか! ちょっと脅して金目のものを拝借して解放しましたよ」


「そう、もしその女性に酷いことをしたのなら、即刻引き渡すところだったわよ。で、カビロに私をどうしろと言われたの?」


「はぁ。侯爵から疎まれている夫人を誘拐すれば感謝されるって言われました。娼館にでも売ればお金持ちになれるとも言われて、つい魔が差しました」




「貴族を誘拐した犯罪者は、捕まれば拷問刑ですよ? しかも私のお父様は元SS級の冒険者のアドリオン男爵です。どのような報復を受けるか想像できますか?」


「ひやぁーー。まさかあの怪物男爵のご令嬢ですか? やばいです。きっと瞬殺されてしまいますっ!」


 見る見る青ざめていく悪党達に、私はにっこりとほほえんだ。




「では、今後は味噌職人として、エリアス侯爵家で10年ぐらいただ働きしなさい! そうすればこのことは黙っていてあげましょう」


「味噌ってなんですか?」


「それはとっても身体に良くて美味しいものですわ」




 前世のクライアントの中には、代々味噌屋を受け継いできた老舗の女将さんもいた。やはり前世で頑張ってきた仕事が、このように異世界においても役立つのは嬉しい。私はその男達に醤油職人5人組を紹介した。




「いいこと。2チームで競って良い商品を作りあげなさい! 毎月皆さんの進捗状況を見て、頑張っているチームにはご褒美をあげます。半年ごとの品質比較品評会では、使用人全員の投票で勝ったほうに特別報奨金をあげますからね! 貴男方は基本ただ働きですけれど、ご褒美はお金できちんと支払いますし、寮に住めて食事は3食賄いがあります。働くときに着る服はこちらで支給します」




 もっさり男4人衆は情けない顔をしているが、醤油職人5人はにこにこと彼らに話しかけていた。




「エリアス侯爵家は、最高の職場ですよ。お昼はエメラルド奥様考案の珍しくも美味しい料理が食べられますし、奥様の指示どおりに真面目に働いていれば、褒めてもらえてご褒美も頂けます。朝からラジオ体操をし、やりがいのある醤油作りに勤しみ、時間があるときは庭園のお掃除もしますが、これはむしろ自主的にしていることなのです。これほど規則正しい健康な生活ができて、おまけにエメラルド奥様は月に2回は、庭園で使用人達のためにお茶会も開いてくれるのです」




 キツネが熱心に、エリアス侯爵家で働く素晴らしさを説明していた。使用人達のための寮も新しく敷地に建てたし、皆で食べる昼食のほかに、朝夕の食事も賄い食を出している。だから、キツネの褒め言葉もまんざらお世辞ばかりではないのよ。でも、このように私のやりたいことができるのは、旦那様のお陰でもある。




「旦那様が私のやりたいようにさせてくださる、広いお心を持っているからできたことですよ。だから、旦那様の功績でもあるのです」




 そのように説明すると、旦那様も嬉しそうに私に微笑みかけた。エリアス侯爵家を立て直すための戦友という絆が、しっかりと結ばれてきた私達夫婦は、信頼感がお互いに芽生えてきていると思う。旦那様の容姿がお父様のようだったら、このままエリアス侯爵家に居着いてしまいそうに居心地が良い。そのように考えているとタヌキの大きな声が聞こえてきた。


 




「特に私と、このキツネは奥様のお気に入りでしてな。なんと、タヌキとキツネという名誉ある英雄の名前を直々に頂いたのですぞ! えっへん!」




 タヌキことジョーセフが自慢気に胸を反らした。ちょっとだけ罪悪感。英雄じゃないんだけど、今更本当のことは言えない。このまま英雄ということにして、この秘密はお墓まで持って行こうと思ったわ。




 こうして、エリアス侯爵家では醤油職人5人衆の他に、味噌職人4人衆が誕生したのだった。




数多くの小説の中から拙作をお読みいただきありがとうございます。

少しでもおもしろかったよ、と思っていただけたら、是非ブクマや☆彡 ★彡☆彡 ★彡☆彡 ☆彡 で応援いただけると、執筆の励みになります。

※誤字報告をいただき、ありがとうございます。

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[気になる点] しょうゆも味噌も蒸かしと最初の麹付けが大変なだけで仕込んだら後はほぼ放置だからそんなに仕事辛くないのでは… 醤油は絞りがあるからそれが大変かな? 大豆潰す作業が大変かもしれない
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