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第14話 やっぱりトンカツを食べたかったカール / 転生者かもしれないメルラ

「それでは、メルラは我慢してちょうだい。3時のおやつは使用人達全員に行き届くように用意しますわね。そうしたら特別扱いではないわ」


 私はメイドや侍女達を見ながら、にっこりした。




「わぁーー!! 嬉しいです」


「おやつが食べられるなんて夢みたい」


「エメラルド奥様は優しくて綺麗で、最高の女性ですわ」




 使用人達が嬉しそうに感謝の言葉を口にするなかで、メルラだけが不平不満をつぶやいた。




「ひどぉ~~い。ここに余ったトンカツがあって、お腹をすかせた私がいるのですから、需要と供給がちょうどバランス良く整ったってことでしょう? それを我慢しろ、なんて酷すぎます!」




「うるさいなぁ! 新入りのメイドのくせにエメラルド奥様に口答えなんて身の程知らずだよ」




 料理長アーバンがトンカツを食べる手をいったん止めて、渋い顔をしながらメルラにお説教を始めた。




「そんなにその余ったトンカツが、争いのタネになるのなら私がいただきますよ。朝食用にとっておきます。朝はがっつり食べる主義ですからね」




 カールがあっという間に料理を持って、いそいそと奥へ消えた。やっぱり食べたかったのね? わかるわ、その気持ち。全く素直じゃないのだから。




「カール! トンカツは冷めてもパンのあいだに挟んだら美味しく食べられますからね。キャベツもそこに入れるとまた格別ですよ」


「了解です」




 廊下からカールの弾む声が聞こえる。トンカツを楽しみにしているのがわかって、こちらも嬉しくなり思わず笑みが漏れた。




「私もお代わりがしたかったのに・・・・・・」




 旦那様はしょんぼりと肩を落とした。なんだか子供みたいだわ。




「しまった! つば、つけとけば良かったなぁ」




 料理長アーバンもぼやく。それはやらなくて良かったと思うわ。だってマナー違反だし、料理長がそれをしたらエリアス侯爵家の恥になるものね。




「トンカツはまたいつでも作ることができますわ。もう少し食べたいぐらいがちょうど良いのです。ほら、旦那様には私のトンカツを一切れ差し上げます」


「いや、エメラルドが食べなさい。君が美味しそうに食べている方が私は嬉しい」




 旦那様は案外、優しいところがあるみたい。ただ、やはり美形すぎて私の好みではない。




「ちょっとぉ~~、なんのよぉ~~。なんで皆、メルラじゃなくてトンカツに夢中なのよぉ~~」




 トンカツという単語を当たり前のように言ったメルラ。この娘も、もしかしたら転生者なのかもしれない。




数多くの小説の中から拙作をお読みいただきありがとうございます。

少しでもおもしろかったよ、と思っていただけたら、是非ブクマや☆彡 ★彡☆彡 ★彡☆彡 ☆彡 で応援いただけると、執筆の励みになります。

※誤字報告をいただき、ありがとうございます。

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