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第11話 幹部二人にあだ名をつけたエメラルド

「早速、あなた方に仕事ができましたわよ。ほら、そこのタヌキとキツネ達にはパン粉を作るために、固くなったパンをすりおろす名誉を与えます! 厨房へレッツゴーですわ!」


「タヌキとはなんですか? キツネって?」




 ジョーセフとウィルが不思議そうに首を傾げた。この世界にタヌキとキツネがいないことを、すっかり忘れていた。




 だったら、ちょうどいいわね。覚えやすいし、あだ名にしましょう。




「たった今から、エリアス商会の会長だったジョーセフはタヌキ。副会長だったウィルはキツネよ。これは私がつけたあだ名です。タヌキもキツネも清廉潔白な英雄の名前で、これは私が昔読んだ異国の小説の主人公達ですわ」




 キツネが俯いて涙を流している。作り話だとバレたのかしら? 日本での狐のイメージはずる賢くて、英雄とはかけ離れているものね。きっと悔し涙だわ。ところが全くその逆だった。




「こんな悪いことばかりした私達に、そんな立派なあだ名をつけてくださるなんて・・・・・・私は今日から心を入れ替えて、エメラルド奥様のお役にたちます!!」


 私の手をいきなり握りしめ、ブンブンと腕を振るキツネ。目に浮かんでいるのは嬉し涙のようだ。キツネはすぐに感動する性格らしく、案外単純なことに驚いた。




「じゃぁ、皆ついて来てくださいな。お昼を一緒にいただきましょう。厨房に行ってアーバンを手伝うのよ」


「「「はぁーーい!!」」」




 弾んだ声で元気よくお返事をする幹部のおじさん達を後ろに従えて、いざトンカツを作りに厨房に向かう私なのだった。




 はぁ、お腹が空いた。


 


「アーバン! トンカツを作るのを手伝いに来たわよ。固くなったパンがあったらちょうだい。お肉は何人分あるのかしら? 10人分? じゃぁ、ここにいる皆で食べられるわね」




 この異世界にも、おろし金はある。食材は前世の世界とほぼ同じだけれど、このゲームクリエイターは西洋かぶれのようで、醤油や味噌はない設定だが、ソースやケチャップはある。とりあえずはトンカツが作れる環境下にいることはラッキーだった。




「よぉーーい! はじめ!」




 一列に並んだおじさん達にパンの固まりを渡す。その中にはもちろん旦那様と料理長アーバン、さらにメイド長兼侍女長のマリッサも飛び入りで参加していた。




「そこのお肉にまぶせるくらいのパンをすりおろしてくださいね」


 私の言葉に頷きながら、必死になって手を動かすタヌキとキツネ。キツネは指を怪我しないように用心深く、タヌキはしゃかりき手を動かし指まですりおろす勢いだ。あんなすり方だと、絶対に・・・・・・




「いたぁーー!」


 ほらね? 私は絆創膏をメイドのサンディに持って来させて貼ってあげた。


「痛いの、痛いの、飛んでけーー。全くあなたは子供ですか? 普通は手まですりおろさないように、気をつけるものでしょう?」


 タヌキが頬を染めて恥ずかしげに頷いた。それを見て旦那様までが力任せにパンをすり下ろし、血がでた手を私に当然のように差しだした。




「全く当主ともあろう方が、部下のさきほどの教訓もいかせないとは! もしかしてわざとですか? なにを考えていらっしゃるのです!」


 私が呆れると、旦那様はショボンとうな垂れた。


「私もエメラルドに手当をしてもらいたかった」


 小さな声でぽつりとつぶやいた。私は嫌われているはずなのに、おかしなことを言う人だ。メイドのサンディに旦那様の手当を丸投げすると、私は再び大事なトンカツの調理にとりかかったのだった。



数多くの小説の中から拙作をお読みいただきありがとうございます。

少しでもおもしろかったよ、と思っていただけたら、是非ブクマや☆彡 ★彡☆彡 ★彡☆彡 ☆彡 で応援いただけると、執筆の励みになります<(_ _)>

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「私もエメラルドに手当をしてもらいたかった」 何を今更、気持ち悪いこと言うなと、言ってあげればいいのに。
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