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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

空想小説 壱

作者: 白檀

トイレで読んでもらうことを想定とした短いお話です。

どうぞ、ご賞味くださいませ。





20XX年、国会により、とある法律が施行された。2021年に発足されたデジタル庁と裁判所の立法案により可決された法令は「人工現実上における死刑執行法」。

その名の通り、死刑執行を死刑囚が装着するVRにおける仮想現実の中で行うという法案だ。しかし、それが可決されるまでには大きな期間を要した。

それもそのはずだ。死刑執行は今まで絞首で行われたきた。そのため死刑執行の報道はニュースでちらりと耳にする程度の事だった。

それが大きく変わったのが今回の法令である。国の目論見は、【死刑執行の瞬間を国民に見せ、再発を防ぐ】ことだった。犯罪者が死にゆく姿を国民に報道し、恐怖心を煽る事。国民は勿論、諸外国からも大きく反発される要因となった理由だった。当初

この議案は否決されるものだとほとんどの国民が思っていた。そこに待ったをかけたのは、大切な人の命を理不尽に奪われた被害者遺族の声だった。

紆余曲折を経て可決されたこの法令は中々に効果を発揮するものとなり、今では死刑執行の瞬間をテレビで国民が視聴するという、あまりにも異様な光景が日常となった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



また殺人事件か、相変わらず物騒な世の中だなぁ。

仕事が終わり、自宅でテレビをつけた俺は思わずそう呟いた。

今回の事件は無差別殺人みたいだ。戸建てに侵入し、家族の団欒を狙って子供と母親が殺害されたらしい。

こういった事件は絶えないものだ。

テレビの中では、犯人の生い立ちから動機までがこと細かく報道されている。

まったく、普通の人間だったんだなぁ。まるっきり俺と同じなのに。どこで道を踏み違えたんだか。



カチ、とどこかで音が鳴った。


はて、なにか外れてしまったのだろうか。

階段を上がり、2階を見渡すも何も異常は無かった。

気のせいだろう、1階に戻ってテレビを見なければ。そろそろ犯人の死刑執行が近づいている。

1階のリビングに入り、ふと思った。


あまりにも、広すぎる気がする。


そう思った瞬間、異常な違和感を覚え始めた。こんなにもこの部屋は散らかっていただろうか。こんなにも、ソファは大きかっただろうか。俺1人しか居ないはずの家に、誰かしらの気配を感じる。

テレビでは今まさに、死刑囚がVRの機械をつけて白い空間に取り残されていた。被害者と同じ光景を見て、同じ殺され方をする。実際は事前に服薬している薬によって死ぬ訳だが。


しかし、なんだか目が離せない。離してはいけないような気すらしている。じわり、脂汗が垂れた。

数分、数秒と時が流れる。


急に、画面が消えた。


「あああああああ!!!!!!」

突如として女の叫び声が聞こえる。どこから、なぜ、パニックになる俺の後ろに髪を振り乱した女が立っているのが暗くなったテレビ越しに見えた。手には刃渡り15センチ程の包丁を握っている。命の危険を感じて慌てて後ろを向くがそこには誰もいない。


なんなんだ、イタズラにしては手が混みすぎていないか。

ホッと息をついた瞬間、背中に激痛が走った。

「殺してやる!ころしてやるぅ!!!」

あの女が俺の心臓に刃を突き立てていた。血飛沫が散り、自分の顔に降りかかる。

やめろ、そんな目で俺を見るな。


あの時と同じ顔で。


薄れゆく視界の中で、子供の泣き叫ぶ声が聞こえた気がした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「本日、○○さん宅に侵入し、母娘を殺害した犯人の死刑が執り行われました。犯人は、2階の窓から侵入ししたとみられており、刃渡り15センチの包丁で母親の--さんと、長女の--ちゃんの胸部を刺し、殺害した模様です…………

次の執行日には、入院患者の点滴に消毒液を混ぜ、5人を殺害した元看護師の死刑執行が行われます………









まったく、物騒な世の中よねぇ……。

さぁ、今日も仕事に行かないと、312号室の○○さん、そろそろ楽にしてあげようかしらね…。






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