占いと風車と一握りの勇気と
よし告白しようっ!!
そう決めたのは目の前の教師の説教がピークに達した時だった。
「うお座の貴方、金運、仕事運、友情運、全部駄目駄目下手したら今日死んじゃうかもっ!!でも安心して、恋愛運は絶好調1000年に一度10回人生やり直してめぐりあえるかどうかの大恋愛デー。ラッキーアイテムは風車、アンラッキーアイテムはいたずら好きのお友達。」
今朝みてたニュースでそういってたのだ!!
まぁ普段ならその程度で、告白なんて思いきった事はしないのだが。
今朝、通学中、今月のバイト代全部入った財布を落とすわ、電車の定期も一緒におとして学校に遅れるわ、最低な目にあった。
ようするに当たったのだ、しかもその程度の事じゃない、なにしろこの学校にはあるのだ!!
この、学校を象徴するが如く巨大な風車が。
しかも、その風車の下で告白したカップルは幸せになれるとかいう伝説付き!!
すべて(お金)を失った俺にもう失う物などない、行くしかないのだ!!
とまぁ、遅刻で説教されてやけになった思考でともかく決めたのだ、告白すると!!
「とまぁ、遅刻も程々にしろっ、今日のところはこれくらいにしといてやるから、とっとと教室に帰れ」
とハゲ頭の体育教師に職員室を追い出されたところで我に返る。
「どうやって、呼び出すかな、手紙・・・いや直接・・・」
「よう、おつとめご苦労さん」
廊下でぶつぶつ言っていると、気軽に話しかけてくるイケメン。
「よう、アンラッキーアイテム。今日はお前にかかわりたくないんだ、じゃあな。」
そう、こいつこそが、僕のアンラッキーアイテム、いたずら好きな友人、まぁ、俗に言う悪友って奴。
「ん?なんか機嫌わるそうだな。2現目体育だぜ、この前言ってた覗きスポットいこうぜ」
屈託の無い笑顔で話しかけてくる彼は、悪い奴じゃないし、嫌いじゃないんだが、今日は僕の敵なのである。
「職員室前でする話題じゃないだろ馬鹿、とりあえず今日はパス、分けありなんだ察してくれ。」
「どうしたー、とうとう愛しいの凛香ちゃんに告白するのか?」
「ばばばばばばっ・・・・馬鹿、なに言ってんだ!!別にその・・・あの・・・」
「なるほど、なるほど。OKそういう事なら了解してやる。振られた時の慰め会は俺にまかせとけ」
愉快そうに去って行くあいつを後ろ姿を見送って一息ついた。
「妙に簡単になっとくして引き下がったなぁあいつ。」
そして、放課後、結局匿名の手紙で呼び出した。
風車小屋の前にきてください。
僕は、下駄箱から風車小屋に向かって歩き出す。
「おい」
その道をとざす者がいた、出たな、ハゲ体育教師。
「あ、先生なんでしょう?」
「風車小屋は立ち入り禁止だ。とっととまっすぐ帰れ」
「何でですかっ、ちょっとまってください」
は?なに言ってるんだこのハゲは・・・。
「すまねぇ・・・」
ハゲの後ろから顔をだした悪友。
「こいつがな、花火もちこんでてな・・・他に危険物があるかもしれんからしばらく立ち入り禁止だ、まさかと思うがお前も関わってんじゃないだろうな?」
ナニヲイッテルンダ?
「いやいや、俺一人っすよ、こいつには内緒で・・・」
「まぁ、だろうな。花火をもってる様子もねぇしな。」
まってくれよ、俺の決心というかラッキースポットが!!
「おい、どういう事だよ!!ふざけんなよ」
なにがなんだか分からないが、久しぶりに悪友にイラダチを覚え、胸倉に掴みかかる。
瞬間、俺の背中に手を回して耳元でささやかれる。
「本当にすまねぇ、殴りたきゃ後で殴られてやる、彼女には、屋上でまっとくよう伝えといた。急げ。」
「あーーーー、屋上?俺のっ」
俺のラッキースポットはっ・・・。
「お前なら、占いとかラッキーとか関係なくいける、行け」
ちっ、これだからイケメンは、無茶苦茶言ってても様になるっ。
「ちょっ、お前っ」
僕は駆けた、いや賭けたのかそれとも思考が欠けたのか?
ハゲが後ろで何か言ってるけどしらない。
考えたら負けた、考えたら、告白なんてできなくなる。
そうだ、占いなんてきっかけにすぎないんだから。
階段を上る。
カタカタカタカタカタカタカタカタ
人にぶつかりそうなのをよけて尚駆ける。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
風車の音が聞こえる。
屋上の扉を開ける。
「はぁ・・・・はぁ・・・はぁっ」
息があがる、膝に手をついて、いきを鳴らす、視線をわずかに上げる、太陽の逆光の中、彼女の姿をみつける。
笑っていた、笑顔がいつもどおり可愛くて、眩しくて。
「いや・・・その・・・いい天気だね。」
だから、一瞬で・・・振られる恐怖が大きくなる、好きだから大きくなる。
やめよう、適当に言い訳して帰ろう、風車の下じゃない時点でいろいろ失敗だ。
だからっ――――カタカタカタカタカタカタッ
風が吹いた、風車の音がする、風車はここから遠いはずなのに。
「どうしたの?・・・それ」
カタカタカタタカタカタ・・・
彼女が指差す僕を・・・いや、正確には、僕の背中・・・。
カタカタカタカタッ
風車、いや、『かざぐるま』が僕の背中にはっつけてあった、折り紙で出来た羽にストローを刺しただけの粗末なそれが。
いつ?
『お前なら、占いとかラッキーとか関係なくいける、行け』
あの時か、俺の背中に手をあてたのはあの時あいつだけ。
そこまで言われて・・・、風車もあって・・・
背中の風車をはずし、片手で握り締めて。
逃げるわけには行かない。
「あのさ、ずっと前から好きでした、付き合ってください。」
言えたっ、言った・・・思ったより・・・心地いい。
生徒指導室
「で、なんでお前はあんな所で花火をしようとしたんだ?」
あーあ、しくじった、告白成功した暁に花火で祝ってやろうと思ったとかいえねぇよな。
「おっ、あいつこの調子だと、うまくいったみたいだなぁ。」
指導室の窓からあいつが、あの子と帰る姿を確認する。
「おい、余所見をするな、答えんか。」
さて、ぼちぼち質問にこたえてやっかなぁ。
「俺も魚座だったってだけかな。」
読みきり短編です。
友人から、風車と占いというお題をいただいたのでつくってみました。
シリアス風味多目の作品ですが、スピード感とパワーを意識して書いてみました。
よろしかったら感想の程お願いします。




